2024年5月1日水曜日

『人獣細工』小林泰三著 感想・レビュー 人と獣の境界線

人獣細工(角川ホラー文庫)


人間の証明とは


❝パッチワークガール。そう。私は継ぎはぎ娘。❞


表題作「人獣細工」の他、「吸血狩り」「本」の3編からなる作品集。


デッドマン・ワンダーランド』の作者さんによる書き下ろしカバーイラストに惹かれて購入。

グロ描写ありのホラー。

想像力豊かな人は注意です(笑)

ブタの臓器を全身に移植された娘の話。

たった一つだけ、自分だと分かる印を残して。


あらすじ


先天性の病気が理由で、生後まもなくからブタの臓器を全身に移植され続けてきた少女・夕霞(ゆか)。

移植を担当していたのは彼女の父だった。

父の死後、膨大な移植記録を見た彼女は、自身の存在に疑問を覚える。

私は父の実験動物だったのだろうか。

ほとんどの器官をブタから移植されていた夕霞は、人間である証明を得るために実験記録を漁る日々。

心配して訪ねてきた友人に罵倒してしまう程おかしくなっていく。

やがて彼女が辿り着いた真実とは。


ネタバレ感想


小林泰三さんの文章は少し読みにくい印象。

メルヘン殺しシリーズは好きなんだけどね。

『玩具修理者』は、グロ描写がきつすぎて吐き気がした。

『人獣細工』は、前者がグロ10レベルだとすると、6ぐらいかな。

3篇目の「本」の方が描写がキツイ。

「人獣細工」と「本」は、専門的用語がたくさん出て来るけど、読み解く力が必要なのは「本」。

全ての臓器がブタならば、何をもって人間と言えるのか。

夕霞への唯一の救いは良い友人を持ったこと。

❝法律はある程度、人間の行動を抑制できるが、完全ではない❞

この言葉はなるほどと思った。

最終的にその人間のモラルに左右されるんだな。

彼女が知った真実は戦慄が走る。

そっちなのかと愕然。

2篇目の「吸血狩り」はライトな感じで読みやすいが不安が残る。

「本」は、まさに狂気の世界。

ピアノ辺りから描写がきつく頭がおかしくなりそうだった。


『人獣細工』私の評価は★2


ストーリー  ★★★☆☆ 3
衝撃度    ★★★★★ 5
キャラの魅力 ★☆☆☆☆ 1
おすすめ   ★★★☆☆ 3








2024年4月29日月曜日

『九度目の十八歳を迎えた君と』浅倉秋成著 感想・レビュー どうでもいいことに一生懸命になれる高校時代


不器用な青春時代

みんな夢を諦めたわけじゃない、今できる最良の跳躍をするんだ。

社会人になった今なら分かることだけど、あの頃気の利いた言葉が全く出てこなかった。

これは、タイムループ作品ではないしファンタジーでもない。


浅倉さんの伏線が光る青春ミステリ作品。


あらすじ

そこそこの印刷会社で営業マンとしてのノルマを熟す間瀬(ませ)は、通勤途中のホームで、同級生の姿を目撃する。

彼女は、僕が高校時代に恋をした二和美咲(にわみさき)だった。

だが、二和は制服に身を包み、見た目もあの頃のまま、未だ十八歳として高校に通っていた。

僕と二和は同い年。

本来ならば30歳目前であるはずだった。

なぜか周囲の人たちは彼女のその姿を違和感なく受け入れる。

僕は、現在の彼女の同級生と協力し、 原因を探っていく。


ネタバレ感想

設定に無理があるし、ん?となる箇所もあるけれど、その辺はさすが浅倉秋成さん、ラストまで読ませる筆力がありました。

間瀬の原因とか、二和さんの返事とかうやむやで終わってしまったが、全体を通して自身の青春時代とリンクさせたりして面白かった。

間瀬が彩雲に入れた夢、一番知りたかったな。

戻って来た彩雲を手に取るシーン、ちょっと泣きそうになった。

彩雲

同級生たちがそれぞれ大人になっていてみんないいやつ。

二和が一番掴みどころない感じ。

『教室が、ひとりになるまで』と違って、キャラが魅力的なのが良い。

真鍋と教頭先生が好き。

『サニー』と呼ぶのが笑っちゃうけど、ほうじ茶と和菓子を持って新聞部に居座る教頭先生がかわいい。

“青春の空回り"うまいこと言うなあと感心。


『九度目の十八歳を迎えた君と』私の評価は★3

ストーリー  ★★★☆☆  3
キャラの魅力 ★★★★☆  4
衝撃度    ★★★☆☆  3
おすすめ   ★★★☆☆  3

『仮面』 伊岡瞬著 感想レビュー 仮面の下の秘密

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