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2024年5月26日日曜日

『ゴールデンタイムの消費期限』斜線堂有紀著 感想・レビュー 才能の枯渇

                      ゴールデンタイムの消費期限(角川文庫)


若き天才のリサイクル計画

これまで斜線堂有紀さんの作品は、『私が大好きな小説家を殺すまで』 『恋に至る病』などの共依存系しか読んだことなかった。(ちなみにどちらの作品も大好きです)

だから何か起きそうって思ったし、クローズドサークルのミステリ作品かなと先入観を持ったけど違ってた。

恋愛要素ほぼなし。

世間から見放されつつある元天才たちが、それぞれ自身を見つめ、必死に努力するキャラたちの交差を描いている瑞々しい作品。

読後感も良い近未来青春ストーリー。


あらすじ


小学生で小説家デビューし、もてはやされた綴喜文彰(つづきふみあき)は、4年も新作を発表出来ていない。

焦燥感に駆られ、将来を悲観し始めた高校三年生の春、綴喜は編集者から『レミントン・プロジェクト』への参加を打診される。

綴喜が連れていかれた山奥の巨大な施設は、国が出資し、若き天才たちを集め交流を図る11日間のプロジェクト。

そこに料理人、ヴァイオリニスト、映画監督、日本画家、棋士の、若き五人の天才たちがいた。

全員、一度は天才だともてはやされたものの、徐々に前線から脱落していった者たちだった。

そして、このプロジェクトとは、人工知能「レミントン」とのセッションを通じた自分たちの「リサイクル計画」だった。


登場人物


綴喜文彰 天才小説家。

真取智之(まとりともゆき)天才料理人。綴喜と同じ「ギフテッドチルドレン」出演者。

秋笠奏子(あきがさかなこ)国内の賞総なめのヴァイオリン奏者。

秒島宗哉(びょうしまそうや)帝都藝大三年。専攻日本画。

御堂将道(みどうまさみち)デビュー戦から二十七戦無敗の最年少棋士。

凪寺エミ(なぎでらえみ) 18歳。映画監督。「世界のナギデラ」の一人娘。



ネタバレ感想


全員、元天才。

飽きられたら終わり。

プレッシャー。

私は凡人なので天才側の気持ちは今まで知る由もなかったけれど、一度結果を出した人間はこんな悩みがあるのかと分かった。

そこで、各分野の元天才を集めたレミントン計画。

❝レミントンは四十六万冊の小説を学習し、ベストセラーになる小説の展開を把握❞

1日1冊小説を読んでいる綴喜にも驚きだが、レミントンはおよそ人間が人生何周したって追いつかないくらいの気が遠くなるような数字の本を簡単に読破してしまう。

レミントンの言うとおりに書けばベストセラー間違いなし。

もう、これは現実に起きているかもしれない。

AIのイラストが普通に出回っているし。

レミントンに反発する人物、すんなり受け入れる人物、悩む人物、それぞれ意見をぶつけながら、11日間で人生を見つめ直していく。

殺人事件が起きたり、好きになり過ぎて苦しいとかそんな展開はないけれど、ラストまで面白く読めた。

それぞれの活躍がもっと見たいし交流も見たい。

私は秒島さんが良かった。

意外だったのが綴喜の従兄弟と秋笠。

凪ちゃんの父親と秋笠の母親には腹が立った。

後者は、私が今まで読んだ斜線堂さんの作品に出て来そうな母親像。



『ゴールデンタイムの消費期限』私の評価は★3


ストーリー   ★★★☆☆  3
キャラの魅力  ★★★★☆  4
衝撃度     ★★★☆☆  3
おすすめ    ★★★☆☆  3








2023年11月26日日曜日

『隣人X』パリュスあや子著 感想・レビュー  惑星難民X

 隣人X

惑星難民Xは害となるのか?

ひとことで言えば、読みやすい。

惑星難民Xに侵略されるという話ではなく、3人の女性の人生が描かれる。

仕事、恋愛など。

時に交差したり。

上野樹里さん、林遣都さん主演で映画公開。

設定など変更されているようなので、そちらは期待。


あらすじ

20xx年、惑星難民xの受け入れがアメリカで宣言される。

どこか他人事だと思っていた日本国内においても「惑星難民受け入れ法案」が可決し、連日そのニュースで持ち切りだった。

「惑星生物x」は、対象物の見た目から考え方まで全てスキャンできる。

20代の平均的な男女をスキャンさせ、「惑星難民x」として、社会に溶け込ませることをついに発表。

新卒派遣として有名企業で働く、土留紗央。

早朝のコンビニと宝くじ売り場をかけもちする柏木良子。

そして、ベトナム人留学生のリエン。

環境や境遇が異なる女性3人が、そんな社会でどう生きているのかを描く。


ネタバレ感想

リエンが一番応援したいかな。

良子も紗央も好きになれない女性像だった。

彼女たちに関わる男性は暴力的で身勝手な人物が多いのだが、良子の父はカッコいいと思った。

惑星生物xが彼女たちにどのように影響するかと思いきや関係あるのは良子だけで、後の2人は特に絡まない。

知らず知らずに人間の中に混ざっているXだが、今まで悪影響もなくさらに自身がXだと気付かない人間もいる。

Xの設定いるんかなと思うくらい何が言いたいのかよく分からないストーリーだった。

スクラッチの答えは知りたかったな。


『隣人X』私の評価は★2

ストーリー  ★★☆☆☆  2

キャラの魅力 ★★☆☆☆  2

衝撃度    ★★☆☆☆  2

おすすめ   ★★☆☆☆  2




2023年6月30日金曜日

『君を愛したひとりの僕へ』乙野四方字 感想・レビュー 二人が出会わない世界線

並行世界にいる彼女が幸せだったらいい


僕が愛したすべての君へ』(僕君)と同時刊行本。

栞イメージ


こちらのストーリーは恋愛色強めだが、ラストはとても切ない。



 あらすじ

並行世界が実証された世界。

両親が離婚し、虚質科学研究所で働く父と暮らす日高暦(ひだかこよみ)。

彼は、父の勤務先で休日を過ごしていると、佐藤栞(さとうしおり)という少女に出会う。

強烈な出会いと、境遇が似ている為、2人で過ごす時間が増えていく。

そんな中、父の再婚話が持ち上がり、相手が栞の母だと知り愕然とする。

兄妹になれば結ばれない、そう思った2人は逃避行を開始する。


ネタバレ感想

2冊とも絶対読んだ方がいい。

栞を愛した暦、和音を愛した暦が描かれる。

最先端の研究所イメージ

「僕君」の方がハッピーエンド。

こちら「君僕」では、「僕君」の謎が解ける形になる。

総じて、暦にとっていなくてはいけない存在は和音だった。

それは暦も途中から分かったみたいだけど、口にはできない。

暦と栞が会わない世界線にも和音はいた。

どうして時間旅行ができるのか、ビールの泡に例えてあったけど難しくて意味が分からなかった。

「君僕」を先に読むのがおすすめかな。


『君を愛したひとりの僕へ』私の評価は★4


ストーリー  ★★★★☆ 4
キャラの魅力 ★★★☆☆ 3
衝撃度    ★★★☆☆ 3
おすすめ   ★★★☆☆ 3




2023年6月15日木曜日

『僕が愛したすべての君へ 』乙野四方字 感想・レビュー 朝食におにぎりを選んだ現実とパンを選んだ世界

 並行世界

人間は日常的に無自覚に意識のみが並行世界に移動する。

その際、時間の移動はない。

この移動を『パラレル・シフト』と呼ぶ。

そして、僕が愛した相手はゼロ世界の彼女なのか…。


あらすじ

研究所イメージ

人間が少しだけ違う並行世界間を移動していると実証され

された世界。

両親が離婚し、母と暮らす高崎暦(たかさきこよみ)は、超進学校に入学し、友達を作ろうと励む。

その目論見は失敗し、彼は未だに友達を作れずぼっちのままだった。

そしてある日、新入生代表で挨拶をした瀧川和音(たきがわかずね)から、突然声をかけられ戸惑う。

彼女は85番目の世界から来たといい、そこで2人は恋人同士だと話し始める。


ネタバレ感想

本当に並行世界があるかのように描かれていて、尚且つストーリーは無理なく進む。

専門用語の羅列はあるが、数学や物理が苦手でも難なく読めた。

ここに置いていたはずの物がないとかいう現象は隣の世界に移動していたからだと説明があり、本当にこの設定あり得るんじゃ…と思ってしまった。

見ず知らずの人間が幸せと聞いて僕も嬉しい、そういう人生を歩めて良かったって言えるって本当素晴らしい。

ラノベっぽいけれど刺さる言葉があった。

愛した相手をサイコロにたとえ、何番目の彼女でも可能性のすべてを愛すって素敵。

待ち合わせ場所に現れた少女と老婦人の正体が謎のまま。

君を愛したひとりの僕へ』を読んだら分かるのかな。


『僕が愛したすべての君へ 』私の評価は★4


ストーリー  ★★★★☆ 4
キャラの魅力 ★★★☆☆ 3
衝撃度    ★★★★☆ 4
おすすめ   ★★★★☆ 4


2023年5月23日火曜日

『この恋が壊れるまで夏が終わらない』杉井光 感想・レビュー バッドエンドは変えられない

終わらない夏を繰り返す


大好きな先輩を助けるために何度もタイムループする主人公。

恋が実らないと分かっていても…。



あらすじ


12時間きっかり、時を遡る力を僕は持っていた。

能力を活用せずに平凡と過ごす僕は、高校で初恋を経験する。

相手は3年生の久米沢純香。

放課後は図書室に入り浸り、彼女が薦める本を読み、気の遠くなるようなルーティン作業を手伝っていた。

そして、彼女に薦められるまま、美術部にも入部する。

だが、夏休み最後の日、先輩は死体となって発見された。


ネタバレ感想


登場人物

柚木啓太(ゆずきけいた)高校一年生

久米沢純香(くめざわすみか)高校三年生。図書委員長。

幾原典明(いくはらのりあき)40代半ば。美術部顧問。

道永(みちなが)高校二年生。美術部幽霊部員。油絵が得意。

燈子(とうこ)啓太の幼馴染。水泳部。


杉井さんの作品は、表現が独特。

綺麗なんだけど想像しにくい。

私の想像力が単純に追い付かなかった。

↓たとえば、こちら電車に乗っているシーン。

❝××の肩口あたりにできた影の向こうで、小さな夜のかたまりを線路沿いの街灯の光が一定のリズムで引っ搔いていた。❞

??

私電車は通勤で毎日利用しますが、どういう状況か分からなかったです。

──心ここにあらずみたいな感じなんかなあ。

でも人物像を本に例えてるのは好き。

❝表紙を見て気に入っただけで、まだ開いてもいないんじゃないのだろうか。❞

──その人の表面だけを気に入っていて中身を全く知らない。


純香先輩は、後半にさしかかるにつれ嫌悪感でいっぱいになる。

主人公がタイムループ(巻き戻し)するたびに、体が悲鳴をあげていく。

どう動いたって先輩が殺されるのを止めることができない。

でも、そこまでして彼女を助ける意味があるのかなと思ってしまった。

ただ、燈子と道永先輩は好感が持てるキャラなので、彼女らと関わる時の主人公は好きだ。

ラストどうなったか、はっきりとは描かれていないため、想像しなくちゃならないんだけど、純香先輩は読めない。

でも、主人公の側にはずっと燈子がいてくれるんだろうな。


『この恋が壊れるまで夏が終わらない』私の評価は★3


ストーリー  ★★★★☆  4
キャラの魅力 ★★☆☆☆  2
衝撃度    ★★★★☆  4
おすすめ   ★★★★☆  4







2023年4月9日日曜日

『スターティング・オーヴァー』三秋縋 感想・レビュー 2周目の人生

三秋縋のデビュー作



「スターティング・オーヴァー」ジョン・レノンの楽曲タイトル、意味は、やり直す。

あり得ない設定から始まりますが、不思議とハマすり、終わり方も綺麗だ。

殺してやろうとか驚く描写が出てくるけど、心情の描き方はすごいなと思うし、共感できるところもある。

僕が語り口の一人称でストーリーは進む。


あらすじ

❝これは、

二十歳の誕生日を迎えた僕が、

十歳まで時を巻き戻されて、

再び二十歳になるまでの話だ。❞

神様が与えてくれたやり直す人生。

だが、どう考えてもやり直したいことがないくらい、一周目の僕は完璧な人生を歩んでいた。

二周目の人生はどこかで歯車が狂い、徐々に落ちぶれていく。


ネタバレ感想

一周目の僕は幸せだった。

二周目も元の人生に準えて同じように進むつもりだったが、つまずく。

そして、一周目で恋人だったツグミにフラれてしまう。

再会したツグミの横にはトキワがいた。

ミニクーパーのイメージ

トキワは一周目の僕。

ドッペルゲンガー現象。

この辺りからめっちゃ面白くなった。

スクールカースト上位だった僕が、下位に転落。

陰キャサイドの僕が描かれる。

親友だったはずの人間に虐められたり、友達がいなくて無意味な時間を過ごしたり。

ウスミズにお金あげるのはちょっと理解できなかったけども(笑)

妹と僕の関係性が微笑ましくて好き。

「おかえりー」のくだりが可愛すぎた。

今の瞬間、頑張れてない人たちへ、エールを送ってくれるストーリー。


『スターティング・オーヴァー』私の評価は★4


ストーリー  ★★★★☆  4
キャラの魅力 ★★★☆☆  3
衝撃度    ★★★☆☆  3
おすすめ   ★★★☆☆  3


2023年4月6日木曜日

『失われた過去と未来の犯罪』小林泰三 感想・レビュー SF思考実験

 10分しか記憶できない

映画『メメント』を彷彿させるようなワクワク設定。

記憶時間が10分なため、堂々巡りの会話が続きます。

そこにイライラしなければ、きっとこの小説はハマる。


あらすじ

女子高生の結城梨乃(ゆうきりの)は、ある日、自分の記憶が10分しかもたないと気付く。

それは梨乃だけの記憶障害ではなく、母もテレビのキャスターも同じ状態だった。

冷静に分析をした梨乃は、SNSに「全ての人間が記憶障害に陥っています。あなたが、人類が生き残るために、以下のことを行ってください」と書き込み拡散する。

人類は、失った長期記憶を補うため、「外部記憶装置」を開発し、その装置と共に難なく生活するようになっていた。


ネタバレ感想

第一幕は記憶障害の混乱状況が描かれている。

梨乃目線と原発で働く父の結城目線。

2人とも冷静。さすが親子って感じ。メモも大事だけど数値も確認しなくちゃってこと。

第二幕は、外部記憶装置が主流となった世界が描かれている。

記憶のスティックの差し違えで人生変わっちゃった人をコミカルに描いたり、余韻を残したり、使い方次第やトラブルで起きる幾多のストーリーが生まれてた。

東野圭吾さんの『秘密』を彷彿させるストーリーは悲しかったなあ。

一卵性双生児のメモリの使い方はそれで合ってるんかなと思ったり。

コミュニティの調査に来た職員のメモリの使い方は楽しそうだった。

自分ならどうする?って考えたり。

梨乃と聡になった彼は何で話せるんだろうって思って、そこはよく分からなかった。

記憶が伴っていれば、外見は変わっていてもその人になれるのか、色々考えさせられた。

答えは出ないけど(笑)


『失われた過去と未来の犯罪』私の評価は★3


ストーリー    ★★★☆☆  3
キャラの魅力   ★★☆☆☆  2
衝撃度      ★★★☆☆  3
おすすめ     ★★★☆☆  3



2023年3月31日金曜日

『名もなき星の哀歌』結城真一郎 感想・レビュー  スワンプマンは誰?

 個人情報で最も大事なのは、記憶──。

結城真一郎さんは、推し作家さんです。

難しいワードも分かりやすく説明してくれるイメージ。

綺麗な文章で読みやすい。

特殊設定ミステリのイメージが強い。

伏線も見事に回収して綺麗にまとまっています。

作家さんの写真を見て、一瞬戸惑ってしまいました。

私、似たような方にフラれたことあります(笑)

でも、そんな個人的な事なんかどうでも良いと思える幻想的で惹かれるSFストーリー。



あらすじ


大学の同級生である良太と健太は、裏稼業として人の記憶を売買する店で働いている。

店のノルマを着々とこなし、調子に乗った彼らは、神出鬼没で話題のシンガーソングライター・星名の素性を調べるという探偵まがいのことを始める。

だが、彼女の素性を洗うにつれ、あり得ない状況や繋がりが浮かび上がり、首を傾げる。

やがて星名の存在が、2人の関係性に綻びを生じてしまう。



ネタバレ感想


見どころは、良平、健太、保科の三角関係の行方。
遭多夢(おうたむ)カフェのイメージ


保科の資金源の謎。

御菩薩池(みぞろけ)一家の殺人事件の犯人。

「保科と関わるな」と恐喝してきたのは誰か。

ナイトの正体は誰なのかです。

さらにナイトはもういない。

健太が賞をもらった作品が、ナイトの作品と酷似。

見どころ多いです(笑)

サイドストーリーとて、石塚巌(いしづかいわお)と認知症の妻が描かれますが、こちらの顛末の方がはっきり言って泣けました。

脅迫までは分かるけど、ジュンさんはなぜ包丁まで??

記憶を入れ替えた動機が若干浅いのでは?(まるで動機が薄っぺらいコナンの犯人のよう…)

なぜ、保科も記憶を消した??

中学高校大学と目まぐるしく人間関係を構築していくはずなのに、小学生時代に好きになった女の子を人生かけてまでずっと好きでいれるのかな?とか。

そして、二度と会えないよさようならで終わりじゃなかった。

記憶を入れた小瓶のイメージ
そして、健太はどうなるんだろうと彼の方が気になった。

健太、良い奴やった。

引っかかること多いけど、伏線の散りばめ方と新しい設定、そして綺麗な感じでまとまるから、惹かれるお話。

宇宙の構造と脳の神経細胞が酷似とか、星に纏わる知識も魅力。

スワンプマンてワード初めて知ったよ。

スワンプマン…考えると混乱
❝「主人公が、主人公だからという理由で助かるのは物語の中で一度きり」とかルールを決めるべきだよ。❞というセリフ、多くの漫画に刺さるよね。





『名もなき星の哀歌』私の評価は★5


ストーリー  ★★★★☆ 4
キャラの魅力 ★★★☆☆ 3
衝撃度    ★★★★☆ 4
おすすめ   ★★★★☆ 4



















2023年3月26日日曜日

『リライブ』法条遥 感想・レビュー re~シリーズ最終章

何のために私は転生を繰り返すのか?

前作『リアクト』でめっちゃ混乱したけど、完結編にあたるこの作品で綺麗にまとまるかが見所。

主人公の小霧(さぎり)は、何度も転生を繰り返す女性。

どうやら、保彦(やすひこ)とも関係があるようだ。

最悪タイムパラドックスの結末の行方は?


あらすじ

小霧は、前世の記憶を持ちながら転生を繰り返す。

そのたびに同じ名前を与えらえ、気付いたらまた生まれ変わっている。

小霧は結婚式場で、スタッフから読まれた長い長い手紙に衝撃を受ける。


ネタバレ感想

結論からいうと、保彦は何のために時を超えているかが分かって納得。

小霧の運命は転生を繰り返しても過酷。

式場でみんなに聞かせないで、そっと手紙を渡す方法でも良かったのでは?と思った。

結婚式で、小霧が過去に餓死したり、侍たちに犯されて死んだ時もあったっていう話なんか、聞きたくないよ。

保彦は空気読めないんかい。

保彦は、小霧のことしか考えておらず、その他全員はただのコマで脇役。

リライト』からの答え合わせ的な話になるけど、あっちいったりこっちいったりと本線から外れる長い手紙の告白だった。

四季に例えて、説明があるのは綺麗だった。


❝夏に『美雪』が溶けてなくなり、

秋に『霞』が時間を覆し、

冬に『蛍』が舞い、

春に『小霧』が光となる。❞

でも、伏線も何もなく4作目にして唐突に現れた小霧というヒロインに驚いたわ。

どこからどこまで保彦が関わっていたのか、パトロールは全員科学者の血を引いてるとか。

美雪=ホタルだとか、曖昧だった所がはっきり分かるけど、納得いかない所もあった。

小霧の転生の呪縛が終わると、保彦が代わりに受けるんだ?

時を超えられない保彦??

1000年前に飛んだヤスヒコは禁忌の子。

彼は小霧と結ばれるはずだった?何で?とか。

保彦は小霧が好きだけど、彼女視点では兄は嫌いと書いてあったし。

付録に素敵なイラストがあったので、私なりに名前をタグ付けした。(間違ってたらすみません)

また時間おいて、4冊一気読みしよう。

そしたらまた違った感想が生まれると思う。


『リライブ』私の評価は★3


ストーリー  ★★★☆☆  3
キャラの魅力 ★★☆☆☆  2
衝撃度    ★★☆☆☆  2
おすすめ   ★☆☆☆☆  1



2023年3月19日日曜日

『リアクト』法条遥 感想・レビュー 『リライト』が好きなら読むのやめとこ!

 全てが覆される

re~シリーズ第三作。

リライト』で余韻に浸ったのは何だったのか。

はっきり言って読んだの後悔した。

過去に戻って止めたいくらいだ。

リビジョン』から何となく嫌な予感はしてたのに。


あらすじ

西暦3000年、タイムパトロールの職に就くホタルは、行方不明の科学者の捜索任務に当たる。

過去が見えるという坂口霞(さかぐちかすみ)に接触したホタルは、1992年に「保彦」という少年が、ある本を探していることを聞く。

そこで、本の作者とタイトルを調べるホタルだが、パラドックスに巻き込まれ、未来に帰れなくなってしまう。

呆然とするホタルは、ある少女の助けを借りることになった。


ネタバレ感想

前2作を読まないと分からないストーリー。

ただし、読んでいても混乱(笑)

そこで私なりのメモを箇条書きで。

「リライト」≠「時を翔ける少女」


桜井…委員長

N中学校2年4組に園田保彦(そのだやすひこ)という転校生は来なかった。

坂口穂足(さかぐちほたる)が転校生。


友恵…西暦3000年からの未来人?

1人の科学者が失踪(2311年)

小さな一条保彦(いちじょう)に小瓶を渡し、美雪(みゆき)をお願いと言う。


ホタル…タイムパトロール

坂口霞(鏡に閉じ込められている)と話す。

ある科学者は、300年間失踪している。

霞、双子の弟との間「保彦」授かる軸がある。

勤め先の本屋で会った少年も「保彦」、そのあと地震。

霞は本のことを鏡に聞く。

タイトルと作者は誰?


「リライト」の作者は岡部蛍?

検索して見つかった2002年の静岡駅周辺のカラオケ店にホタルは飛ぶ。

カラオケの部屋のドアから出てきた黒コーデの彼女は、ホタルを「美雪」と呼んだ。

1992年夏、ホタルはパラドックスに巻き込まれて帰れなくなる。


ホタルと過去の雨宮(名乗ってない、名前複数ある)と穂足で協力。

雨宮から前後破れた本を指示通り、2311年の倉庫のような場所に置く。

ホタルが去って数十秒後、彼がその本を手に取る。


美雪…ペンネーム高峰文子(中学時代の親友が使っていた)

大学4年「時を翔る少女」を執筆して応募。

岡部蛍著「リライト」に似ていた。

彼女とは8年前に会った。

リライトの内容は、私(大槻美雪)が、1992年彼との約束を守るべく、携帯電話を用意するところから始まる。

そして、クラスメイト全員が彼と過ごし、本を探す約束をし、夏祭りを経験し、過去がリライトされるところで終わる。

この話は、雨宮友恵と私しか書けない。

保彦が記憶を残したかったのは美雪のみ。


坂口穂足…霞が結婚した相手坂口清の実の妹、穂足は霞が見えない

雨宮家に居候。

雨宮友恵は、読書が趣味の暗い少女の印象だったが後に仲良くなる。

霞(義姉)の姿が見えない話を友恵にする。

霞は邦彦との間に保彦を作らないといけないが、近親相姦になるので穂足の兄と付き合ってる。

後に保彦と穂足が関わるため、霞の姿が見えないのでは?

保彦が生まれる未来が正解?なぜなら1992に大勢出現し、本を探していた。

そこで、こう解釈すれば辻褄合うかもと友恵が考えた話が「リライト」

霞から穂足に連絡が入る。

別の時間軸の霞に知らされた内容は、1992年の7/1~21まで2年4組にいてはならない。

友恵の後押しで駆け出した穂足は、転校生とすれ違う。

転校生は園田保彦。


保彦…科学者(元凶?)

友恵の「リライト」を読み震える。

なんでこんな回りくどいことをと問う友恵。(自分で作っておきながら)

誰が作者か分からないから共有しないとと保彦。

友恵の背後に現れたホタルを見て、保彦逃亡。

ホタルは、友恵に事情聴取。

未来の銃を突きつけるが形違うので友恵は何それ状態。

なぜ、漆黒の女性は銃と知ってた?(それは未来の友恵だから)

さっき話してた人物の名前を聞いたホタルは、未来に戻れなくなった。


友恵が戻れるためのアドバイスをホタルにする。

まず最初に2年4組に暗示をかけ、雨宮友恵がいなくても平気な状況を作る。

ホタルを穂足として家に連れていく友恵。


霞が大勢の保彦を見た情報を元に友恵は「リライト」を執筆。

その通りに保彦が転校生としてやってくる。

保彦はリライトの通りにしようとしていると友恵はホタルに話す。

保彦が科学者かどうかDNAを手に入れる。

リライトの通りにしないと「時を翔ける少女」が出版されない。

だが、最大の難点は大槻美雪はいないってこと。


穂足の元にも保彦が現れる。

火葬場でそれどころじゃないが、2年4組だからとしつこい保彦。

数日後、兄のバイトを口利きしてくれた一条夫妻が現れる。

1歳の子供を抱っこしていて、名前を保彦だという。

その際、保彦は手にやけどをしてしまう。

数日後に再び現れた保彦に、火傷の跡が出現。


両親を亡くしたため、相良家へ引き取られた穂足。

長男と結婚し相良穂足となる。

そして、大槻美雪の担当編集者になる。

一条保彦と園田保彦は同一人物だと分かる。


後付けしたんだろうなという設定もあるし、一人称が変わるし、時系列が分からなさ過ぎて、さらに推敲しているか謎。

ペンネームもあって、誰が誰なのか混乱。

メモ書いても意味わからん(笑)

名前を3人ホタルにする必要はあるのか。

衝撃を受けたのは、美雪はいないってこと。

保彦の性格はうざかった。

そして、友恵は頭の良い子だった。

新キャラの穂足は果たして必要なのか。

難解だけど面白いんだよな、タイムパラドックスものは。

次巻で最終巻なので、すっきりしたらいいなあ。


『リアクト』私の評価は★3


ストーリー  ★★☆☆☆ 2
キャラの魅力 ★★☆☆☆ 2
衝撃度    ★★★☆☆ 3 
おすすめ   ★☆☆☆☆ 1





2023年3月13日月曜日

『あげくの果てのカノン』(全5巻)米代恭(よねしろきょう)感想・レビュー SF×不倫,タイトル回収作品

 劇的に変わる世界の中、変わらない主人公

主人公のかのんは、成長しない。

好きな先輩も、クソ(笑)

宇宙生物のゼリーのイメージ
でもタイトルは素敵だし、表紙でジャケ買いしてしまった。

はっきり言って胸クソ展開もの(笑)

そこに宇宙生物との戦いを入れてしまうというめちゃくちゃな設定。

でもストーリーは破綻せず、ちゃんとまとまってるのがすごいのがこの作品。

あらすじ

高月かのん(こうづきかのん)は、高校時代から境宗介(さかいそうすけ)に恋をしている23歳の女性。

境先輩は、宇宙生物ゼリー(エイリアン)と闘うSLC所属のエリート戦闘員。


強くてイケメンで優しい境先輩は、メディアに良く登場する人気者になっていた。


彼には同じ職場で働く初穂(はつほ)という美人妻もいた。

彼と再会したいために、SLC近くのパティスリーで働くかのん。

彼との再会を機に、かのんのストーカー気質が病的になっていく。



ゼリーとの戦いは、肉体を著しく損傷させていき、その度に「修繕」という形で回復させていく。


その「修繕」には、肉体の回復は文句なしだけど、心を変化させてしまうデメリットがあった。


先輩も例外ではなく、変わっていく。




ネタバレ感想


宇宙人の襲来で世界は劇的な変化をもたらしている。


だけど、かのんの考えることは先輩だけ。


先輩が出したゴミを回収し、コレクションしている常軌を逸した行動も。


それでも見捨てない弟、両親の愛はすごい。


でもそんな周りのことをお構いなしに、先輩への思いだけで突き進み、迷惑をかけまくって生きているかのん。


かのんに対して終始いらいら。


主人公を応援したくない作品(笑)


先輩も変わる、世の中は変わる、だけど、かのんだけは変わらない。


初穂の暴走はやりすぎだけど。


かのんには、はっきり言って共感できない。


気持ち悪いとさえ思う。


彼女はモテないわけじゃない、何で先輩なのって思ってしまう。


境先輩は変化していったからこそ、かのんに興味を示します。


結末にいらいらしちゃうけど、SF×不倫という初めてのジャンルのストーリーは楽しめた。


このタイトルは本当すごい。


ちゃんと回収したもの。



『あげくの果てのカノン』私の評価は★3


ストーリー  ★★★☆☆  3

キャラの魅力 ★★☆☆☆  2

衝撃度    ★★★☆☆  3

おすすめ   ★★☆☆☆  2



2023年3月12日日曜日

『プロジェクト・インソムニア』結城真一郎 感想・レビュー 夢の中だけでも理想郷を

 夢と現実の境界線

この小説を読んで、夢の話を聞かされて、ふーんって流して聞くのやめようって思った(笑)

ミシンの発明に夢が一役買ってるとか!

ダリの不思議な絵は、夢で見たやつだとか。

❞まだ正体を見せていない『悪意』が、この世界には潜んでるかもしれない❞

この一文から一気に面白くなります。


あらすじ

蝶野恭平(ちょうのきょうへい)は、今や人口の2割が愛用していると言われている快眠サプリ「フェリキタス」を服用していた。

ある日、恭平はサプリの会社から郵便を受け取り、『プロジェクト・インソムニア』(不眠症計画)の参加を打診される。

それは、年齢、性別、属性の異なる七人が、九十日間夢を共有するというものだった。

頭にチップを埋め込み、≪ユメトピア≫の≪ドリーマー≫となった恭平たちは、思いのまま物を≪クリエイト≫できた。

そこは間違いなく理想郷のはずだった。

夢の中で殺人が起きるまでは。


ネタバレ感想

伏線が至る所にあったのに、全然気付かなかった。

私は人見知りだけど、報酬が二百万なので、三ヶ月頑張れるかも(笑)

もちろん絶対死なない条件付きで。

そう思って参加したメンバーだったのになあ。

有機物、無機物関係なく、物を具現化(クリエイト)できるという設定が面白い。

ゲームの世界そのものだし、何にでもなれる。

胡蝶で夢か現実かを確認する設定もファンタジーぽくて好き。

ドリーマーたちは現実で接触してはいけないなどのルールがあったり、都市伝説を絡めたりと、虚構だったり現実であったりと混乱させられてこの世界観にはまった。

恭平がユメトピアのミナエを気にしてるので彼女とくっつくのかなって思ってたら、恋人いたんかいってなった。

でも恋人の彩花の行動が謎だったり、眠って見る夢じゃなく、人生の夢についても言及したりと、あらゆる角度から興味を持った。

彩花の拳銃はこのままでいいのか気になったけど、こういう夢の実験は既に行われているかもしれない。


『プロジェクト・インソムニア』私の評価は★4


ストーリー  ★★★★★ 5
キャラの魅力 ★★★☆☆ 3
衝撃度    ★★★★☆ 4
おすすめ   ★★★★☆ 4





2023年3月11日土曜日

『リビジョン』法条遥 感想・レビュー 過去を変えまくる

 さらに難解、結局何だったのか

バッドエンドの衝撃的な結末の『リライト』の続編。

「re~」シリーズ2作目。

『リライト』から数ヶ月後の出来事を描く。

未来視ができる女性が主人公。

SF的な要素に、家宝の手鏡という古いアイテムが使われている。

未来を視ることを「ビジョン」という。

我が子のためならと過去をリビジョンしまくる母親の姿を描いてる。


あらすじ

先祖代々女性のみ受け継がれる手鏡で未来を見ることができる千秋霞(ちあきかすみ)は、生後間もない息子ヤスヒコの命を救うため、奔走する。

だが、改変は新たな齟齬を生み、夫も巻き込んで霞の周辺が変わっていく。


ネタバレ感想


未来が見えるからと言って避けれるわけではない。

夫は邦彦(くにひこ)、幼馴染。

邦彦の家でも鏡が受け継がれるが、未来視はできない。

その鏡は一条家に預けてあり、子供ができたら返してもらえと言われている。

ビジョンにより過去未来の自分と対話。

10年後の自分は邦彦と結婚していなかった。

そして、手鏡を使うのをやめなさいと言われる。

違う男性と結婚し、2人の食べ盛りの可愛い子供がいた。

彼女はヤスヒコを生んでいない。

次の日、発熱で県立病院に行って薬(ラベンダーの香り)が効いたはずのヤスヒコの未来をも変わってた。

邦彦にビジョンを使うなと注意されるが、霞は聞かない。

ヤスヒコが中学2年生くらいになっていた。

でも複数いた。10人くらい。

❝未來を視ると過去が変わる。だからビジョンを使っては、いけない。❞

鏡を通過して自分の手を取ることもできる。(未来の自分に傷を付けられたら、相手に古傷ができた)

鏡は未来を映すが、過去も見ているはず。

ヤスヒコが高熱を出した原因を取り除くため、過去の記憶の齟齬があるところを探す。

坂口と結婚した霞は、書店での仕事中、本を探しているという中学生の女の子(桜井)に声をかけられる。

本の切れ端を持っていたが、どの本か分からなかった。

彼女の連れの男の子を見たとき、「抱きしめてあげたい」という思いに駆られる。

男の子の名前は保彦(やすひこ)。

あの子たちが探している本と巡り合うビジョンを見ればいいと思った霞は、1992年の夏に大量にそれを発見する。

成長した桜井は、男性に石で撲殺された。

男の子は、1992年にたくさんいる。

なぜか赤ちゃんもいた。

霞が(未来人の)保彦のビジョンを見たせいで、保護されていたバリアが解除される。

鏡が混乱し、赤ちゃんのヤスヒコが熱を出す。

別の時間軸にいる霞と邦彦も過去を弄りだし、鏡はさらに混乱する。

そして、保彦とヤスヒコが出会ってしまい、町が壊滅する。

消えたヤスヒコを探す霞は、ビジョンを使い、過去を遡り、平安時代まで遡る。

貴族である異母兄弟のカスミ、オオクニヒコの元に赤ん坊の保彦が現れる。

先祖が抱いていた保彦を鏡から奪う霞。

過去が変わり、霞も邦彦もいなかったことになった。

現代で禁忌の結婚をしていた2人は、消滅。

預けていた一条家の鏡の元に保彦出現。

一条保彦となった彼は、誕生日に本をせがみ、岡部蛍が書いたリライトを手に入れた。

私の理解が間違っていなければこんな感じだけど、辻褄は合っているのかな。

『リライト』の保彦は園田だけど、苗字は適当って言ってたから、彼の出生の秘密でいいのかな。

保彦と行動している女子のエピソードは美雪が良かったな。

あまり誰にも好感が持てないし、時系列がめちゃくちゃで難解。

『リビジョン』私の評価は★2


ストーリー  ★★☆☆☆  2
キャラの魅力 ★☆☆☆☆  1
衝撃度    ★★☆☆☆  2 
おすすめ   ★☆☆☆☆  1


2023年3月10日金曜日

『時空犯』潮谷験 感想・レビュー ❝計算ができるということは何もかもできること❞

時間遡行(じかんそこう)の繰り返し 

タイムループ作品は数多くあって珍しくもないですが、『時空犯』のタイムループ回数は異常です。

そこに私は惹かれました。

なぜ、千回近くも巻き戻されているのか。

その理由が分かった時、納得(共感)できるかできないかで面白さが変わるかも。

こんな思考の行く先があるんだなと思った作品。

あらすじ


1千万円の報酬金額につられ、治験の説明会に参加した私立探偵の姫崎智弘(きさきともひろ)。

依頼人の名前は、北上伊織(きたかみいおり)。

集められたメンバーは、様々な分野での情報収集、伝達に長けた人物たちだと言う。

情報工学の研究者である北上博士の口から、時間遡行を体験していると説明され、依頼は時間の巻き戻しを体験してもらいたいというものだった。

全員が呆気にとられ、会場内はざわつく。

半信半疑だったメンバーだが、信じざるを得ない体験をしていく中、九百八十回目の六月一日、北上博士が殺害される。

ラボのイメージ
時間遡行の研究は犯人とって都合が悪いという結論に至る。

犯人は一体誰なのか?

治験メンバー全員アリバイなしの中、さらに事件が起きていく。


ネタバレ感想


同じ日を何回もループしているSFミステリー。

知らないワードは出て来るけど、ちゃんと分かるように解説してくれるので読みやすく面白かった。

博士のラボ内での事件から時間も忘れて一気読み。

でも、犯人は意外でもなかったです(笑)

何より雷田亜利夫(らいだありお)というキャラが魅力だった。

❝理解できない対象と最も有意義な形で共存する方法は、関わりを絶つこと❞

この言葉に感銘を受ける彼のキャラが好き。

空気みたいな人もいるのに麻緒(まお)のキャラ設定がめっちゃ濃いい

神ポジションまで手に入れてるし。

大阪のおばちゃんキャラである大岩(おおいわ)さんが主人公以上に目立ちすぎだし、しつこい(笑)

でも彼女が口に出す疑問は真っ当なので、読者のためにはいないといけないキャラ。

結局、博士にみんな転がされていたのかなあ。

どこかであってもおかしくない、ファンタジーでは片づけられないストーリーだった。

『時空犯』私の評価は★4

ストーリー  ★★★★☆  4
キャラの魅力 ★★★★☆  4
衝撃度    ★★★☆☆  3
おすすめ   ★★★☆☆  3



2023年3月8日水曜日

『クララ殺し』小林泰三 感想・レビュー アーヴァタールたちの駆け引き

ブラックメルヘン

「メルヘン殺し」シリーズ2作目。

 『アリス殺し』より難解なので覚悟して。

確か、ハイジがアルプスの山のロッテンマイヤーさんと一緒に暮らして、近所のクララと仲良くなって励まして、ペーターとヤギの世話をする話だったような?

ハイジはいつ出てくるのかなと読み進めたけど、『クララ殺し』には、出て来ません。

「アルプスの少女ハイジ」とは一切関係なかった。

でも蜥蜴のビルが再登場したので歓喜。


あらすじ


大学生の井森建は、不思議の国の夢ばかりを見ている。

そこは、アリスという少女や変な生き物が暮らす世界。

自分はビルという蜥蜴だった。

だがある夜に彼が見た夢は、いつもと様相が違っていた。

クララと名乗る車椅子の美少女が登場したのだ。

翌日、井森は大学の校門前で、夢とそっくりの少女露天くらら(ろてん)に声をかけられる。

彼女は何者かから命を狙われていると話し、井森に助けを求めた。

夢で会った「クララ」と現実世界の「くらら」、2つの世界で事件が起きる。


ネタバレ感想

元ネタは「黄金の壺」「くるみ割り人形とねずみの王様」「砂男」「マドモワゼル・ド・スキュデリ」でした。

私は、子供の頃絵本で読んだ「くるみ割り人形」が夜動いて怖かったなという知識しかありませんでした。

なので、話の展開が全く読めないままストーリーが進み、ちょっと置いてけぼり感をくらいます(笑)

前作で地球と不思議の国はリンクしていることが分かりましたが、井森がある日を境に見た夢は「ホフマン宇宙」と名付けられ、不思議の国とは関係ありません。

井森(ビル)が、いつの間にか障壁を超え、別の世界に足を踏み入れたようです。

そして、ホフマン宇宙と地球を舞台にしてストーリーは進む。

地球の井森はビルの「アーヴァタール」という存在で、ドロッセルマイアーとクララにも地球に「アーヴァタール」がいます。

「アーヴァンタール」とはアバターとか化身っていう意味みたい。

聞きなれないワードがやたら出てくるし、ややこしい。

ビルのイライラする会話は健在です(笑)

グロさは前作より少なめかな。

井森何回死ぬねんとツッコミを入れたくなりました。

❝ホフマン宇宙で誰かが死ねば地球にいるアーヴァタールも死んでしまう。だが、アーヴァタールが死んでも本体は死なない。井森が死んでもお前(ビル)は生きている。❞

新ルールがあってまた混乱(笑)

でも不思議なストーリーが好きな私は好みの小説でした。

『クララ殺し』私の評価は★3

ストーリー  ★★★☆☆  3
キャラの魅力 ★★☆☆☆  2
衝撃度    ★★★☆☆  3
おすすめ   ★★☆☆☆  2


2023年2月19日日曜日

『リライト』法条遥 感想・レビュー バッドエンドタイムループ

 圧倒的に無慈悲なタイムループ

タイムループのイメージ
10年前の私が現れたら完璧だった。

だが、私は現れない。

彼は助けられない。

過去が最悪の形で次々と改変されていく。

「re~」シリーズ、1作目。

あらすじ

中学2年の夏、美雪(みゆき)は300年後の未来からやってきたという転校生の保彦(やすひこ)と出会う。

だが、2人は旧校舎崩落事故に巻き込まれてしまう。

保彦の持っていた薬を使って未来へ跳んだ美雪は、彼を助ける方法を探る。
旧校舎イメージ


そして10年後、作家となった美雪は跳んでくるはずの自分を待つが来なかった。

やがて、自身が持つ記憶と現実の相違を次々に発見し、美雪は驚愕する。

保彦は果たしてどうなったのか?

なぜ過去が変わっていったのか、最も救われないSFパラドックス開幕。

ネタバレ感想

美雪が保彦と1ヶ月ほど過ごした夏の思い出が綴られます。

でも、美雪の話だと思っていたのが、実は違うクラスメイトの話だったりと混乱していきます。

さらに保彦と関わっていたクラスメイトが現実で何人か殺されており、犯人が捕まっていないという。

現代に保彦と思える痕跡が残っていたり。

読み手はかなり混乱させられるので、ややこしい。

ラストに向けて謎が解けますが、何とも言えない不快感と余韻が残る。

美雪も保彦も救われない。

帯にあった無慈悲な収束、その通りでした。

法条遥さんの小説は、バッドエンドが多い印象ですが、この作品もその通り。

好きか嫌いかと問われれば、好きな作品です。

タイムループものは、当人だけがハッピーエンドだったら良いのか?と思える作品が多いので、『リライト』は現実的かも。

『リライト』私の評価は★4

ストーリー  ★★★☆☆ 3
キャラの魅力 ★★★☆☆ 3
衝撃度    ★★★★☆ 4
おすすめ   ★★★☆☆ 3






『仮面』 伊岡瞬著 感想レビュー 仮面の下の秘密

  仮面 (角川文庫) ディレクシアを知る 初読みの作家さんでした。 ページ数は多いけどすぐに読み終えました。 グロ描写ありです。 あらすじ 読字障害というハンディキャップを抱えながらもアメリカ留学の後、情報番組を中心にメディアに露出する三条公彦(さんじょうきみひこ)。 知的で爽...