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2024年10月21日月曜日

『廃遊園地の殺人』 斜線堂有紀著 感想・レビュー 主人公は廃墟マニア

廃遊園地の殺人 (実業之日本社文庫) 

失われた夢の国へようこそ

廃墟×遊園地

ノスタルジックを誘うめっちゃ最高の組み合わせ。

マスコットキャラが園内を闊歩しターゲットを殺害するパニックミステリではない。

次作の発売が決まっているので眞上(まがみ)にまた会える。

廃遊園地

コンビニアルバイト店員なのに、高身長で運動神経が良くスペックが高い。

紙書籍には園内パンフが付いていて、これが割と遊び心あって良かった。


あらすじ


20年前、巨額のマネーが動いたテーマパーク・イリュジオンランドは、プレオープン中に起きた銃乱射事件のため閉園に追い込まれた。

犯人は自殺。

時が経ち、資産家・十嶋庵(としまいおり)はかつての夢の国に9名を招待する。

招待を受け、廃遊園地へと足を運んだ眞上永太郎(えいたろう)を待っていたのは、『このイリュジオンランドは、宝を見つけたものに譲る』という十嶋からの宝探しゲームだった。

過去に囚われた招待客たちは宝探しを始めるが、殺人事件が起きてしまう。

わざわざ着ぐるみ姿で串刺しになった遺体が意味するメッセージとは?


ネタバレ感想

クローズドサークルなので登場人物が多い。

前半はこの人誰だっけと思いながら巻頭のキャラ紹介ページと照らし合わせながら読んだ。

後半、眞上のスペックの高さに驚く。

容姿のことは触れていないから分からないけど、うんちくが多くてまあ最初は好かれないだろうな。

『ミステリと思うこと勿れ』の整(ととのう)みたい。

彼の実父の謎を残したまま次作への予告。

もちろん読みたい。

全編リライトした文庫版だがこの文体合ってるのかなという箇所がいくつかあって、私の理解力不足なのか分からないけど気になった。

走屋(そうや)くんはかわいそう。

推理編では納得できない所もあった。

殺人が凝り過ぎてよく分からんかった。

腕取って付けてとか。

傷もミスリード狙いすぎてる感。

乱射事件起こすよりもっと他になかったのか、村を守りたい彼女を守りたい思いが強すぎたのかなあ。

だけど、イリュジオンランドの経営陣の実態が酷すぎた。

もっと早く暴いて欲しかったなあ。

藍郷(あいざと)のキャラ良かった。

私が勝手に呼んでいる斜線堂さんの『恋』の三部作。

あんな感じの本また書いてくれないかなあ。

このテイストの作品が先生本来のスタイルなのかもしれないが。


『廃遊園地の殺人』私の評価は★3

ストーリー  ★★★☆☆ 3
キャラの魅力 ★★★★☆ 4
衝撃度    ★★★☆☆ 3 
おすすめ   ★★★☆☆ 3

2024年5月26日日曜日

『ゴールデンタイムの消費期限』斜線堂有紀著 感想・レビュー 才能の枯渇

                      ゴールデンタイムの消費期限(角川文庫)


若き天才のリサイクル計画

これまで斜線堂有紀さんの作品は、『私が大好きな小説家を殺すまで』 『恋に至る病』などの共依存系しか読んだことなかった。(ちなみにどちらの作品も大好きです)

だから何か起きそうって思ったし、クローズドサークルのミステリ作品かなと先入観を持ったけど違ってた。

恋愛要素ほぼなし。

世間から見放されつつある元天才たちが、それぞれ自身を見つめ、必死に努力するキャラたちの交差を描いている瑞々しい作品。

読後感も良い近未来青春ストーリー。


あらすじ


小学生で小説家デビューし、もてはやされた綴喜文彰(つづきふみあき)は、4年も新作を発表出来ていない。

焦燥感に駆られ、将来を悲観し始めた高校三年生の春、綴喜は編集者から『レミントン・プロジェクト』への参加を打診される。

綴喜が連れていかれた山奥の巨大な施設は、国が出資し、若き天才たちを集め交流を図る11日間のプロジェクト。

そこに料理人、ヴァイオリニスト、映画監督、日本画家、棋士の、若き五人の天才たちがいた。

全員、一度は天才だともてはやされたものの、徐々に前線から脱落していった者たちだった。

そして、このプロジェクトとは、人工知能「レミントン」とのセッションを通じた自分たちの「リサイクル計画」だった。


登場人物


綴喜文彰 天才小説家。

真取智之(まとりともゆき)天才料理人。綴喜と同じ「ギフテッドチルドレン」出演者。

秋笠奏子(あきがさかなこ)国内の賞総なめのヴァイオリン奏者。

秒島宗哉(びょうしまそうや)帝都藝大三年。専攻日本画。

御堂将道(みどうまさみち)デビュー戦から二十七戦無敗の最年少棋士。

凪寺エミ(なぎでらえみ) 18歳。映画監督。「世界のナギデラ」の一人娘。



ネタバレ感想


全員、元天才。

飽きられたら終わり。

プレッシャー。

私は凡人なので天才側の気持ちは今まで知る由もなかったけれど、一度結果を出した人間はこんな悩みがあるのかと分かった。

そこで、各分野の元天才を集めたレミントン計画。

❝レミントンは四十六万冊の小説を学習し、ベストセラーになる小説の展開を把握❞

1日1冊小説を読んでいる綴喜にも驚きだが、レミントンはおよそ人間が人生何周したって追いつかないくらいの気が遠くなるような数字の本を簡単に読破してしまう。

レミントンの言うとおりに書けばベストセラー間違いなし。

もう、これは現実に起きているかもしれない。

AIのイラストが普通に出回っているし。

レミントンに反発する人物、すんなり受け入れる人物、悩む人物、それぞれ意見をぶつけながら、11日間で人生を見つめ直していく。

殺人事件が起きたり、好きになり過ぎて苦しいとかそんな展開はないけれど、ラストまで面白く読めた。

それぞれの活躍がもっと見たいし交流も見たい。

私は秒島さんが良かった。

意外だったのが綴喜の従兄弟と秋笠。

凪ちゃんの父親と秋笠の母親には腹が立った。

後者は、私が今まで読んだ斜線堂さんの作品に出て来そうな母親像。



『ゴールデンタイムの消費期限』私の評価は★3


ストーリー   ★★★☆☆  3
キャラの魅力  ★★★★☆  4
衝撃度     ★★★☆☆  3
おすすめ    ★★★☆☆  3








2023年3月16日木曜日

『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』斜線堂有紀 感想・レビュー 三億円の価値がある女性

純粋な愛は伝わるのか?


人間はどうして好きになってはいけない人を好きになってしまう生き物なんでしょうね。
                        
とりあえず、主人公の毒親が胸くそ悪い。

❝自分が金の為に傍にいるんじゃないことを、証明し続けなくちゃいけない❞

お金で人は変わってしまう。

だけど、ただ傍にいたいと思う気持ちを証明できない辛さ。

主人公は中学生なんだけど、あまりにも重い。


あらすじ

サナトリウムのおかげで財政が成り立っている田舎で、将来に価値を見出せずに暮らす中学生の江都日向(えとひなた)。

彼は、毒親のせいでその日暮らしの日々。

そんな彼が出会ったのは、サナトリウムに入院している女子大生前に現れたのは都村弥子(つむらやこ)。

彼女は、身体が金塊に変わる病に侵されていた。

二月の鯨のネーミングセンス好き

身寄りがない彼女は、死後三億で売れる『自分』の相続を彼に持ち掛けた。

相続の条件は、チェッカーというゲームで彼女に勝つこと。

次第に彼女との距離が縮まっていくエトだが、運命に抗えるはずもなかった。


ネタバレ感想

エトの前だけサバ系女子を演じている弥子さんが切ない。

エトの家庭環境の劣悪さよ。

こんな酷い親いるの?って思うかもしれないけど、いるんですよ。

簡単に家庭環境のイメージができるから読んでいて苦しかった。

ただ、サナトリウムのスタッフが良い人たちで救われた。

弥子さんがなぜエトに全て渡さなかったのか、色々考えてしまう。

でも、彼が田舎を出るきっかけを作ってくれた。

晴充(はるみつ)もしかして悪い奴?って勘ぐってた私は性格悪すぎる。

敢えてダメ出しするなら、タイトルは違う方が良かったかな。

読んだら意味合いが全然違ったから。

私が大好きな小説家を殺すまで』『恋に至る病』と合わせて、共依存シリーズって言われそう。

余韻を残す作品ばっかりなんでハマります。


『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』私の評価は★3

ストーリー  ★★★☆☆ 3
キャラの魅力 ★★★☆☆ 3
衝撃度    ★★★☆☆ 3
おすすめ   ★★★☆☆ 3







2023年2月13日月曜日

『私が大好きな小説家を殺すまで』斜線堂有紀 感想・レビュー 共依存の悲しい恋愛の行く先

私の好きな本ベスト3

タイトルに惹かれて読んだ作品。

余韻を深く残し、梓は最後どうなったかと人によって捉え方が違うかもしれません。

簡単なあらすじ

ネグレストを受けていた梓(あずさ)が憧れていた売れっ子小説家、遥川悠真(はるかわゆうま)と出会い、救われる。

その一方、彼は才能を失いつつあった。

梓がどうして愛する彼を殺す決意をしたのか。

胸を打つ悲しいラブストーリー。


感想・レビュー

才能、嫉妬、裏切り、騙し合い、全て愛情から来る2人の行為。

どこからかすれ違い狂ってしまいます。

2人が幸せに生きていく方法はなかったのか。

もしかしたら、出会わなければ良かったのか。

映像化するならば、深夜枠で無名の俳優さんたちで、丁寧にドラマ化してほしいなと思いました。

同作家さんの『恋に至る病』の方が人気ですが、私はこの作品が大好きです。

この本を読むとき、いつもYOASOBIさんのハルジオン』が頭の中を駆け巡ります。


私が大好きな小説家を殺すまで』私の評価は★5

ストーリー  ★★★★★ 5
キャラの魅力 ★★★★☆ 4
衝撃度    ★★★★★ 5
おすすめ   ★★★★☆   4



2023年2月12日日曜日

『恋に至る病』斜線堂有紀 感想・レビュー 誰もが魅入られる少女とは

共依存に仕立て上げられた男子高生の行く先は?

共依存をテーマにしたストーリーは、斜線堂有紀さんが一番すごいと思う。

簡単なあらすじ

人気者の女子高生の寄河景(よすがけい)。

主人公の僕、宮嶺望(みやみねのぞむ)が彼女と出会ったのは小学5年生の時。

そこから、彼は周りの人と同様、景の虜になっていきます。

時折、おかしいなと感じながらも。

この本は、いかにして景が直接手を下さずに150人以上の人生を狂わせていったかが描かれていきます。

宮嶺は景を止めることができるのか?

2人の関係は今後どうなっていくのだろうか?


↓ネタばれ感想↓

私は『恋に至る病』を初版で購入したので前知識なしに読み、すごく面白くて、ラストについてどう思ったか友人と話しました。

後に帯で『ラスト○○の衝撃』と書いてあって、ネタバレしてる、それまでの流れが面白いのにって残念に思いました。

景が怖いのは、罪悪感の欠片がないところ。

分かっていながらも、それでも景が好きという宮嶺の思いも切なかったです。

同じ共依存でも同作家さんの『私が大好きな小説家を殺すまで』は、また違った余韻を残します。

『恋に至る病』私の評価は★4

ストーリー  ★★★★★ 5
キャラの魅力 ★★★★☆ 4
衝撃度    ★★★★★ 5
おすすめ   ★★★★☆ 4


『仮面』 伊岡瞬著 感想レビュー 仮面の下の秘密

  仮面 (角川文庫) ディレクシアを知る 初読みの作家さんでした。 ページ数は多いけどすぐに読み終えました。 グロ描写ありです。 あらすじ 読字障害というハンディキャップを抱えながらもアメリカ留学の後、情報番組を中心にメディアに露出する三条公彦(さんじょうきみひこ)。 知的で爽...