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2024年10月21日月曜日

『廃遊園地の殺人』 斜線堂有紀著 感想・レビュー 主人公は廃墟マニア

廃遊園地の殺人 (実業之日本社文庫) 

失われた夢の国へようこそ

廃墟×遊園地

ノスタルジックを誘うめっちゃ最高の組み合わせ。

マスコットキャラが園内を闊歩しターゲットを殺害するパニックミステリではない。

次作の発売が決まっているので眞上(まがみ)にまた会える。

廃遊園地

コンビニアルバイト店員なのに、高身長で運動神経が良くスペックが高い。

紙書籍には園内パンフが付いていて、これが割と遊び心あって良かった。


あらすじ


20年前、巨額のマネーが動いたテーマパーク・イリュジオンランドは、プレオープン中に起きた銃乱射事件のため閉園に追い込まれた。

犯人は自殺。

時が経ち、資産家・十嶋庵(としまいおり)はかつての夢の国に9名を招待する。

招待を受け、廃遊園地へと足を運んだ眞上永太郎(えいたろう)を待っていたのは、『このイリュジオンランドは、宝を見つけたものに譲る』という十嶋からの宝探しゲームだった。

過去に囚われた招待客たちは宝探しを始めるが、殺人事件が起きてしまう。

わざわざ着ぐるみ姿で串刺しになった遺体が意味するメッセージとは?


ネタバレ感想

クローズドサークルなので登場人物が多い。

前半はこの人誰だっけと思いながら巻頭のキャラ紹介ページと照らし合わせながら読んだ。

後半、眞上のスペックの高さに驚く。

容姿のことは触れていないから分からないけど、うんちくが多くてまあ最初は好かれないだろうな。

『ミステリと思うこと勿れ』の整(ととのう)みたい。

彼の実父の謎を残したまま次作への予告。

もちろん読みたい。

全編リライトした文庫版だがこの文体合ってるのかなという箇所がいくつかあって、私の理解力不足なのか分からないけど気になった。

走屋(そうや)くんはかわいそう。

推理編では納得できない所もあった。

殺人が凝り過ぎてよく分からんかった。

腕取って付けてとか。

傷もミスリード狙いすぎてる感。

乱射事件起こすよりもっと他になかったのか、村を守りたい彼女を守りたい思いが強すぎたのかなあ。

だけど、イリュジオンランドの経営陣の実態が酷すぎた。

もっと早く暴いて欲しかったなあ。

藍郷(あいざと)のキャラ良かった。

私が勝手に呼んでいる斜線堂さんの『恋』の三部作。

あんな感じの本また書いてくれないかなあ。

このテイストの作品が先生本来のスタイルなのかもしれないが。


『廃遊園地の殺人』私の評価は★3

ストーリー  ★★★☆☆ 3
キャラの魅力 ★★★★☆ 4
衝撃度    ★★★☆☆ 3 
おすすめ   ★★★☆☆ 3

2024年9月1日日曜日

『方舟』 夕木春央著 感想・レビュー 思考実験「トロッコ問題」を彷彿

方舟 (講談社文庫)



 帯の煽り文句は本当だった

序盤はよくあるクローズドサークル。

連続して起こる殺人事件、そして犯人の目的が全く分からない。

なので、「トロッコ問題」のようにどうやったら生き残れるかを模索しながら読んでいく。


あらすじ


柊一(しゅういち)は、大学時代のサークルの友人たちと、従兄の翔太郎(しょうたろう)と共に山奥の地下建築を訪れる。

道に迷ったせいで、地下建築で一夜を過ごす羽目になった柊一たち。

同じように迷い込んだ矢崎一家の三人も地下建築に合流する。
ノアの箱舟

だが、翌朝に起こった地震のせいで、扉が岩で完全にふさがれてしまう。

さらに地盤に異変が起き、水が侵食し始めた。

このままでは地下建築は水没してしまう。

そんな矢先に殺人事件が発生。

❝誰か一人を犠牲にすれば脱出できる。

生贄には、その犯人がなるべきだ。

ーー犯人以外の全員が、そう思った。❞

水没までのタイムリミットは約1週間。

それまでに、殺人犯を見つけなければならない。

だが、第二の殺人事件までもが発生してしまう。






地下建築(廃墟)の入口イメージ

登場人物

・越野柊一(こしの)…………………主人公の僕。システムエンジニア。

・篠田翔太郎(しのだ)………………柊一の従兄弟。親の遺産で生活。世渡り上手で頭が良い。

── サークル仲間 ──

・西村裕哉(にしむらゆうや)………アパレル勤務。お調子者。
・絲山隆平(いとやまりゅうへい)…ジムのインストラクター。柊一に敵意を持っている。
・絲山麻衣(まい)……………………幼稚園の先生。隆平の妻。
・野内さやか(のうちさやか)………ヨガ教室勤務。花を慕っている。
・高津花(たかつはな)………………事務員。一人称は「うち」

── 矢崎家 ──
・幸太郎(こうたろう)…………電気工事士。
・弘子(ひろこ)………………………幸太郎の妻。
・隼人(はやと)………………………高校一年生。やや幼い印象。

ネタバレ感想

探偵役の翔太郎、助手役の柊一が証拠を集め、動機を考察し、みんなを食堂に集めて推理を披露する。

ここまではよくある話だし、意外な人物が犯人というのは想定内。

そこまで面白いとは思わなかった。

人物描写も薄いし?

人と人との繋がりの描写も深みがない。

例えば、この集まりに従兄弟連れて来るか?と疑問。

矢崎一家同様に、翔太郎だって胡散臭い。

隆平と麻衣がなぜ結婚したのか分からないし、柊一が彼女に惹かれるのがよく分かんないし。

だが、エピローグで完全に打ちのめされた。

こんなことってある?

ネタバレ本当に注意↓↓




探偵役が敗北するなんて

読み返すと犯人のセリフが違った意味に聞こえる。

サイコパス過ぎるやろ。

翔太郎は完全にピエロ。

どうすれば助かったんだろう。

何でタイムリミット一週間まで待ってたんだろう。

さっさと何人かで脱出して助け呼んだらいいのにっていう疑問はあるけれど、ラストの衝撃はきっと忘れられない一冊になる。

実写化しそうだな。

『方舟』私の評価は★4


ストーリー   ★★★☆☆  3
キャラの魅力  ★★☆☆☆  2
衝撃度     ★★★★★  5
おすすめ    ★★★★☆  4





2024年8月1日木曜日

『#真相をお話しします』結城真一郎著  感想・レビュー 現代風ショートミステリ

 『#真相をお話しします』(新潮文庫)

あなたはオチが読めるだろうか?

結城さんの小説は3冊目。

以前の小説とはガラリと趣向を変えた作品で驚いた。

パンドラの箱

『プロジェクト・インソムニア』は、夢の中のクローズドサークルミステリーだし、

『名もなき星の哀歌』は、記憶売買の話なので現実離れしているため、好き嫌いが別れそう。

そこに来てこの作品は現実感のあるストーリーで、一番読みやすい。

この作品で一気にファンを増やしただろうなあ。

2023年、本屋大賞ノミネート作品。


あらすじ

有名私立高校卒、現役東大生の片桐は、家庭教師の仲介ビジネスの営業アルバイトをしている。

ある程度ノウハウを極めた結果、営業成績はトップで仕事は順調だ。

今回の訪問先は、模試の成績が芳しくないという小学6年生の男の子の家。

約束の時間に訪問するも、インターホンを鳴らしても中々出てこない。

いつもと勝手が違う訪問先に違和感を覚えながら、片桐は話を始めるが…。

(惨者面談)

ネタバレ感想・レビュー

本作では中学受験、YouTuber、マチアプ、精子提供、リモート飲み会がテーマとなっています。

散りばめられた伏線の回収の見事さ。

二転三転するストーリー。

後味は悪いけど爽快さもある現代風ミステリです。

  • 惨者面談
  • ヤリモク
  • パンドラ
  • 三角奸計
  • #拡散希望

惨者面談、ヤリモク、#拡散希望が面白かった。

パンドラの真夏の親はもしかしたらと思ったのは私だけかな。

思い込みもあって、5作とも騙された―ってなるのは間違いなし。

人間は、こわい。


『#真相をお話しします』私の評価は★4

ストーリー ★★★★☆  4

キャラの魅力★★★☆☆  3

衝撃度   ★★★★☆  4

おすすめ  ★★★★★  5


2024年5月17日金曜日

『剝製の街 近森晃平と殺人鬼』樹島千草(きじまちぐさ)著 感想・レビュー 人の根底にあるもの


         剝製の街 近森晃平と殺人鬼(集英社文庫)


耽美で禍々しい芸術

完全にカバー買いです。

この作品の剥製のイメージは蠟人形っぽい感じ

装丁は西村弘美さん。

イラストレーション/人さらいさん

とありましが、「人さらいさん」は、調べても分からなかったです。

タイトルがちょっとダサい感じがしますが、イラストに惹かれた。

過去の事件を蒸し返すような事件が主人公の周りで起きてしまう。

過去も現在も、犯人の掌で踊らされていただけなのか。


あらすじ
ミノタウロス


失踪した人が半年後に剥製として発見される怪事件が3件起きた。

3件目の被害者の妻である秋月瑠華(あきづきるか)が、小さな探偵事務所を営む近森晃平(ちかもりこうへい)へ紛失したスマホを見つけてほしいと依頼。

そのことがきっかけに、晃平は思い出したくもない過去の事件との関連を発見していく。

晃平は、11年前に起きた「キャトル事件」で両親を殺害された被害者遺族であった。

それは、死体から臓器の一部を取り出し、手のひらに乗せるという常軌を逸した猟奇的事件だった。

だが犯人は獄中自殺していたはずであった。

ネタバレ感想


主人公の幼馴染である美貌の青年慧(けい)は、顔に似合わず毒を吐く。

美貌すぎるゆえに、周りで争いごとが起きてしまうという人物。

もし、映像化するとしたら慧は、岡田将生さんが似合いそう。

カバー絵は、慧だろうな。

主人公は実際ミノタウロスの犯人を見ているわけですが、あんなもん見たら腰抜かす。

加害者より被害者の人権が守られない世の中本当にどうかしてる。

作品で登場するミラーハウスですが、私は遊園地のアトラクションで迷子になって出れなくなったことがあります(笑)

右も左も分からないし、天井も床も鏡、鏡、鏡で軽くパニック状態になりました。

人形劇の開催場所が、ミラーハウス。

それだけで禍々しさが伝わる。

なぜ、同じ町で起きた3件の剥製事件の証拠が全然見つからないのか。

ミラーハウスなんか最初の方に調べると思うんだけどな。

ましてや2階なんかも。

犯人には協力者がいる──と晃平は推理。

いや、警察もすぐ分かるやろ(笑)

わりと序盤から誰が犯人かすぐ分かった。

協力者も。

でも、すっきりしない終わり方。

なぜ、被害者遺族だったはずの犯人は闇落ちしたのか、その過程をもっと知りたい。

栗原(くりはら)は、自分が特別だと思い込んでいる中途半端なサイコパス。

3人目の被害者もなぜ選ばれたのかよく分からない。

スマホが手に入ったから?

●●は、どうやってキャトル事件の犯人を操ったのか、そして、剥製魔が見つかるようなアドバイスを晃平にしたのかその心理が分からない。

晃平の様子を観察したいという単純な遊び心なのかな。

にしても、過去彼の側にいて彼の心を救ったのは事実だし、色々分からないことだらけ。

完全に●●はサイコパスなんだろうけど、彼がどう思ってなぜそんな行動に出ていたのか、もっとはっきり描いて欲しかったなー。

その辺描き切れていれば、文句なしに面白い作品でした。


『剝製の街 近森晃平と殺人鬼』私の評価は★3


ストーリー  ★★★☆☆  3
キャラの魅力 ★★★☆☆  3
衝撃度    ★★★☆☆  3
おすすめ   ★★★☆☆  3










2024年5月13日月曜日

『震える天秤』染井為人著 感想・レビュー 暴いてはいけない村の秘密

震える天秤(角川文庫)

己の正義に従うか、良心か

 フリーライターの俊藤律(しゅんどうりつ)が主役。

『海神』(わだつみ)では、脇キャラとして登場。                       

村落のイメージ
染井さんの作品は、『悪い夏』 『正体』と映像化が決まっている。

この『震える天秤』も映像化しそう。

社会問題となっている高齢者ドライバーに焦点を充て、法の問題にも触れている社会派ミステリ。


あらすじ

ある日、高齢男性の運転する軽トラックがコンビニに突っ込み、店員を轢き殺す大事故が発生。

事故前後の記憶が定かではない加害者の老人、落井正三(おちいしょうぞう)は、年金暮らしで認知症だと思われた。

事故を取材するライターの俊藤律は、落井が住んでいた埜ヶ谷村(のがだにむら)を訪ねる。

取材に対応してくれた人物たちは、口をそろえて加害者が認知症だと話す。

律は、この村はどこかおかしいと感じるがいまいち決め手に欠けていた。

内方七海(うちかたななみ)の姿を見るまでは。

事故の唯一の目撃者である七海と加害者が同じ埜ヶ谷村出身。

これは偶然なのか。

やがて律はこの事故の真相に辿り着く。


ネタバレ感想

良心の天秤がどちらに触れるか。

私だったら律と同じ選択をしたと思う。

死んでいい人間などいないというのは建前で、反省もしない本当にどうしようもない悪人はいる。

『震える天秤』に登場する石橋昇流(いしばしのぼる)がそんな人物だ。

最初は七海の行動に理解できなかったが、彼を知るにつれて彼女がなぜ律に冷たい態度を取るのか分かった。

七海は噂を鵜呑みにせず、自身で石橋昇流の人となりを判断するなど非常に聡明な少女だった。

昇流の父である宏(ひろし)がはっきりどうなったか描かれてないけど、彼はおそらく。

ずっと善人で生きてきた人が悪人のせいで人生が変わってしまうなんて許せない。

たた、関(せき)がもっとしっかりしていたらなあと思わずにはいられない。

一見関係がない出来事がどんどん繋がっていくのが面白かったし、衝撃だった。

律のキャラを見て、マスコミの取材ってしつこくてこんな感じなんだなあと思った。

律は優しい人物だったんだけどね。

相変わらず人間描写、風景描写、心理描写がうまいと思った染井作品でした。

タイトルが秀逸。


『震える天秤』私の評価は★4

ストーリー  ★★★★☆  4
衝撃度    ★★★★☆  4
キャラの魅力 ★★★☆☆  3
おすすめ   ★★★★☆  4











2024年2月1日木曜日

『花束は毒』織守きょうや著 感想・レビュー 過去を暴くのは要か否か

花束は毒

知りたくなかった

脅迫されているのになぜか犯人探しを躊躇する元家庭教師。

僕が知っている真壁はイケメンで明るく、常にみんなの中心にいるような人物だった。

結婚を控えた彼を助けてあげたかっただけなのに。

ミスリードを呼ぶミステリ。

有害植物

あらすじ

 脅迫され続ける真壁。

そんな彼を助けたいと思った検察官志望の木瀬は、探偵事務所のドアを叩く。

中学時代、木瀬は探偵見習と名乗る北見理花と出会っていた。

だが、真壁は探偵を雇うことに躊躇する。


ネタバレ感想

初読みの作家さんです。

主人公の木瀬が正義感たっぷりの真っ直ぐな青年。

彼のような人物は人を疑うことを知らない。

同じように家庭環境に恵まれ、頭も良く、容姿を整っていた真壁。

だが、彼はある事件をきっかけに人生が180度変わり、ひっそりと生きていく。

そんな彼と偶然出会い、昔の縁から助けようとする僕。

真壁がなぜ躊躇するのか。

彼は華やかな医大生時代、強姦事件を起こしていたのだ。

果たして彼は冤罪なのか。

事件を紐解いていくうちに行き当たる驚愕の真実。

木瀬が探偵を雇い、費用も負担するなんて良い子過ぎるし、美少女探偵の登場とか現実味ない設定だけど、ストーリーがしっかりしていてちゃんと読み応えがあった。

「知りたくなかった」と木瀬が北見先輩に言うプロローグ。

それがこんな形になって戻って来るなんて。

そしてタイトル回収。

背中がぞくっとしました。

そして私が木瀬の立場ならどうしたかと考えてしまった。

面白かった。


『花束は毒』私の評価は★5


ストーリー ★★★★☆ 4
キャラの魅力★★★★☆ 4
衝撃度   ★★★★★ 5
おすすめ  ★★★★★ 5

2023年8月23日水曜日

『向日葵を手折る』彩坂美月 感想・レビュー 田舎の都市伝説に絡めた青春ミステリ

 みんなが噂する向日葵男とは?

『向日葵を手折る』は、情景描写が素晴らしく、堪えきれず何度も涙をこぼした。

タイトルも素敵。

連続する不穏な事件と共に描かれる淡い恋。

限界集落のコミュニティは怖くもあり、羨ましくもある。

夏祭りの終わり

巡る季節の移り変わりは臨場感たっぷり。

都会育ちの主人公ならではの雪に対する心情がすごい理解できた。

私の大好きな小説、ベスト3に食い込む作品だ。






あらすじ


父の急死で、祖母を頼り、母と共に山形の集落に引っ越した小学校6年生の高橋みのり。

そこで強烈な印象を放つ2人の同級生と出会う。

夏、集落のみんな総出で行われる伝統行事「向日葵流し」。

その為に植えられていた向日葵の花が、何者かによって全て切り落とされる。

同級生たちは怖がり、「向日葵男のしわざだ」とつぶやく。  
立ち入り禁止の沼とは?


そして、みのりの周りで色んな出来事が起きる。

犯人は一体。

そして向日葵男とは?

集落で過ごした彼女の忘れられない4年間を描く切ない青春ミステリ。


ネタバレ感想


隼人(はやと)と怜(れい)、対照的な2人少年の存在が良かった。

粗野で乱暴者の隼人、穏やかで笑みを絶やさない美少年の玲。

2人の絆にヤキモチするみのりの心情も良かった。

みのりは、不気味な向日葵男に怯える同級生たちの傍ら、沼へ足を運んだり、図書館へ通ったりと真相を究明しようとする。

それがメインストーリーかと思いきや、青春要素が多め。

ハナの事件はすごく悲しく、思い出しても泣ける。

自生の果実を捥ぎ取り、2人で分けて食べる何ともない行為が、思春期の到来で何となく戸惑ってしまう描写も良かった。

中学生になった隼人の成長ぶりにドキッとした。

反対に心を閉ざすようになった玲との対比も良かった。

ラストにかけて分かる真相にも涙が溢れてくる。

みのりと誰がくっつくのかちゃんと描かれていないのも良かった。

名前が一緒なので余計感情移入してしまったけど、私なら隼人かな。

もう一度読み返したい小説。

大好きです。


『向日葵を手折る』私の評価は★5


ストーリー     ★★★★★   5
キャラの魅力   ★★★★☆   4
衝撃度      ★★★★☆   4
おすすめ      ★★★★★   5












2023年6月15日木曜日

『僕が愛したすべての君へ 』乙野四方字 感想・レビュー 朝食におにぎりを選んだ現実とパンを選んだ世界

 並行世界

人間は日常的に無自覚に意識のみが並行世界に移動する。

その際、時間の移動はない。

この移動を『パラレル・シフト』と呼ぶ。

そして、僕が愛した相手はゼロ世界の彼女なのか…。


あらすじ

研究所イメージ

人間が少しだけ違う並行世界間を移動していると実証され

された世界。

両親が離婚し、母と暮らす高崎暦(たかさきこよみ)は、超進学校に入学し、友達を作ろうと励む。

その目論見は失敗し、彼は未だに友達を作れずぼっちのままだった。

そしてある日、新入生代表で挨拶をした瀧川和音(たきがわかずね)から、突然声をかけられ戸惑う。

彼女は85番目の世界から来たといい、そこで2人は恋人同士だと話し始める。


ネタバレ感想

本当に並行世界があるかのように描かれていて、尚且つストーリーは無理なく進む。

専門用語の羅列はあるが、数学や物理が苦手でも難なく読めた。

ここに置いていたはずの物がないとかいう現象は隣の世界に移動していたからだと説明があり、本当にこの設定あり得るんじゃ…と思ってしまった。

見ず知らずの人間が幸せと聞いて僕も嬉しい、そういう人生を歩めて良かったって言えるって本当素晴らしい。

ラノベっぽいけれど刺さる言葉があった。

愛した相手をサイコロにたとえ、何番目の彼女でも可能性のすべてを愛すって素敵。

待ち合わせ場所に現れた少女と老婦人の正体が謎のまま。

君を愛したひとりの僕へ』を読んだら分かるのかな。


『僕が愛したすべての君へ 』私の評価は★4


ストーリー  ★★★★☆ 4
キャラの魅力 ★★★☆☆ 3
衝撃度    ★★★★☆ 4
おすすめ   ★★★★☆ 4


2023年6月4日日曜日

『薔薇のなかの蛇』恩田陸 感想・レビュー 少女期終了、舞台はイギリスへ

 ゴシックミステリ。「理瀬シリーズ」最新作。

今回は冒頭からトルソー事件が起き、きな臭い。   

挿絵が多いのは嬉しい。

雰囲気作りは最高で、このシリーズやっぱり大好きだと再確認。


あらすじ

アリスは、友人のリセ・ミズノを、イギリスの田舎にある「ブラックローズハウス」と呼ばれる館に招待する。

その館は、国家の経済や政治に太いパイプを持つ貴族・レミントン一家が所有していた。

アリスの兄であるアーサーやデイヴと交流を深め始めるリセだが、その周辺では、首と胴体が切断された遺体が見つかり、世間を騒がしていた。

屋敷の主のオズワルドが誕生日に一族に伝わる聖杯を披露するのでは、興味津々の招待客。

ところが、敷地内で第二の死体が発見される。


ネタバレ感想


登場人物

リセ ──── 図像学に興味がある東洋人。禍々しい美しさを放つ。

アーサー ── レミントン家長男。S研究所に内定。思慮深い。

デイヴ ─── レミントン家次男。金融業界志望。リセを気に入る。

アリス ─── 考古学を選考。リセをブラックローズハウス招待。

聖なる魚


オズワルド・レミントン 屋敷の当主。一族の中心人物。

エミリア ── アーサーたちの上の妹。母と仲が良い。

アマンダ ── エミリアが連れてきた友人。アーサーを気に入っている。

キース ─── アーサーたちの年の離れた従兄弟。スタジオミュージシャン。

アレン ─── アーサーたちの叔父。長身。歴史学者。

ヨハン ─── 音楽家。


探り合う人間関係。

起きる事件は禍々しく不気味。

からくり屋敷。

さらに脅迫の手紙、密室の出来事、犯人はこの中にいる?

とミステリ小説あるあるをこれでもかという具合に網羅。

理瀬が主役なんだけど、一番まとも??なアーサー主体で描かれているので、黒理瀬は不足かな。

ヨハンの目的は達成されたようだけど、その辺はよく分からなかった。

再読した方がいいかな。

事件の報告をわざわざヨハンにする男性の意図も謎。

そして、理瀬とアマンダはどうやって目的の物を手に入れたか気になる。

続編があるような終わり方だった。

理瀬とアーサーが敵対する未来を早く見たい。


『薔薇のなかの蛇』私の評価は★5


ストーリー  ★★★★☆  4
キャラの魅力 ★★★★☆  4
衝撃度    ★★★★☆  4
おすすめ   ★★★★☆  4


2023年5月10日水曜日

『法廷遊戯』五十嵐律人 感想・レビュー 正義の心か良心の呵責か

❝罪を犯したか否かは、真理を見抜ける神にしか判断できない❞


二転三転する法曹ミステリ

❝無辜(むこ)❞という言葉初めて聞いた。

主人公の清義(きよよし)より審判者であった馨(かおる)が魅力的に描かれている。

真相は決して暴いてはいけない。


あらすじ 

法曹の道を目指してロースクールに通う、3人の秀才。

結城馨(ゆうき)は、ロースクールに籍を置くが、司法試験を突破している。

久我清義(くが)と織本美鈴(おりもとみれい)は、過去を隠し、関係をも隠す。

だが、清義を陥れるために開催された無辜ゲームをきっかけに、美鈴にも危険が及ぶ。

ロースクール卒業後、一人は弁護士、一人は被告人、一人は命を失う。


ネタバレ感想

法曹の専門用語が連発するけどさほど気にならなかったし、読み応えはある。

ただ、人物像には魅力を感じない。

3人の中で一番感情移入できそうなのは、馨かな。

法廷

前半の無辜ゲームの章は素直に面白かった。

清義と美鈴が共依存するぐらいの仲というのがあまり描き切れなかったような。

美鈴がそこまで清義のこと思ってたのがよく分からない。

彼女は口を閉ざし過ぎていらいらした。

サクの方が可愛げがある。

馨がどうやって、2人の身元を調べ上げたのかは気になる。

ストーリーの最大の見せ場である杉咲花さんと、北村匠海さんの演技合戦は面白そう。

清義の選択は合っていたのか、ちょっともやもやが残る。

リンドウ

馨の方が清義より主人公らしい。

彼の成しえたかった思いを考えると辛いし、どんだけ努力してきたのだろうと思う。

馨の保険を掛けた相手が、どんな選択をするか分かっていたのかな。

それともそういう選択をしてほしくて保険を掛けたんだろうか。


『法廷遊戯』私の評価は★4


ストーリー  ★★★☆☆  3
キャラの魅力 ★★★☆☆  3
衝撃度    ★★★★☆  4
おすすめ   ★★★★☆  4



2023年3月25日土曜日

『ふしぎ遊戯』(全18巻)渡瀬悠宇 感想・レビュー 四神と二十八宿を扱ったとんでもなく面白い漫画

古代中国のイメージ

恋愛、友情、バトルをコミカルに描く異色の少女漫画

二十八宿がキャラの名前になっているので、すんなり覚えられるし星に興味が出る。

身体に文字が浮かび特殊能力を持っているキャラが、巫女を守って滅びそうな国を救うのがベースに話が進む。

漢字の勉強にもなる。

さらに親友同士が敵対し、朱雀VS青龍で争う形になり、そこにドラマがあり、同じ人を好きになってしまうという三角関係、まあドロドロ。

でもコミカル要素もあるので、読みやすい。

キャラは多いけれど、ちゃんと描き分けができてるから大丈夫。

本から別世界に行くという設定が面白く、映画「ネバーエンディングストーリー」が好きな方ならおすすめ。

こちらは古代中国に飛びます。

読む順番は『ふしぎ遊戯』→『ふしぎ遊戯 玄武開伝』(全12巻)→『ふしぎ遊戯 白虎仙記』(既刊1巻)を推奨。


あらすじ

中学3年の夕城美朱(ゆうき みあか)と親友の本郷唯(ほんごう ゆい)は図書館で四神天地書という書物を開き、物語の世界へと吸い込まれる。

そこは、古代中国のような異世界の紅南国だった。

危ないところを、額に鬼の字を浮かび上がらせる青年、鬼宿(たまほめ)に助けられる。

現実世界に戻った2人だが、美朱は受験のことで母と揉め、再び本の世界へ入ったまま戻れなくなってしまう。

美朱は倶東国(くとうこく)と一触即発状態の紅南国(こうなんこく)の皇帝である星宿(ほとほり)に頼まれ、朱雀の巫女となり、朱雀を召喚し、願いを叶える決意をする。

まずは、朱雀七星士を探すところから始まった。

一方、美朱を助けるために、唯は入れ違いで倶東国に入り、様々な誤解から青龍の巫女になった。

そして、朱雀側の美朱と争う形になってしまう。


朱雀&青龍七星士

朱雀七星士

鬼宿…お金が大好き。恋愛に鈍感。憲法が得意。額に「鬼」の字。

星宿紅南国の若き皇帝で、ナルシスト。左の首筋に「星」の字。

朱雀

柳宿(ぬりこ)…最初、美朱と犬猿の仲だった。怪力の持ち主。左胸に「柳」の字。

井宿(ちちり)…朱雀七星士の相談役。顔に傷跡がある。瞬間移動や変身が得意。右膝に「井」の字。

翼宿(たすき)…鉄扇で炎を操る。関西弁を話す。右腕に「翼」の字。

軫宿(みつかけ)…2メートル近い長身。治癒能力に長けている。寡黙。左掌に「軫」の字。

張宿(ちりこ)…朱雀七星士の最年少だが、頭脳明晰。字が出ている時だけ冷静。左足の甲に「張」の字。


青龍七星士

心宿(なかご)…異民族。倶東国将軍。あらゆる武術に長けている。額に「心」の字。

房宿(そい)…雷を操る。心宿とは体の関係。左太腿に「房」の字。

青龍

亢宿(あみぼし)…張宿と名乗って、朱雀七星士に入り込んだスパイ。右肩に「亢」の字。

角宿(すぼし)亢宿の双子の弟。兄と比べ、精神的に脆弱。唯を慕う。左肩に「角」の字。

氐宿(とも)…貝で幻覚を見せる術を使う。奇抜なメイクをしている。右下腹部に「氐」の字。

尾宿(あしたれ)…鋭い爪と牙を持つ巨大な獣。右腰に「尾」の字。

箕宿(みぼし)…見た目は赤子だが、邪法を操る。襟首に「箕」の字。


ネタバレ感想


七星士(仲間)探しの旅が面白く、それぞれのキャラに特徴がある。

朱雀と青龍どちらが先に召喚できるかを争う。

だが、巫女は四神に食われてしまうという衝撃の事実が明らかになる。

国を救いたい、でも死んでしまうという葛藤。

さらに、鬼宿をめぐっての三角関係も目が離せない。
そして、いくら思い合っても美朱と鬼宿は結ばれない事実も。

柳宿のシーンは大泣き。

ただ、私の中で2部はなかったことにしています。

1部だけを何度もリピート。

美朱が大好きで突っ走る鬼宿が好きだから。

人間の彼はネガティブ思考だし、キャラ違う。

私の好きなキャラは鬼宿、角宿、星宿です。

『ふしぎ遊戯』私の評価は★5


ストーリー  ★★★★★  5
キャラの魅力 ★★★★★  5
衝撃度    ★★★★☆  4
おすすめ   ★★★★☆  4(2部なかったら5)

























『仮面』 伊岡瞬著 感想レビュー 仮面の下の秘密

  仮面 (角川文庫) ディレクシアを知る 初読みの作家さんでした。 ページ数は多いけどすぐに読み終えました。 グロ描写ありです。 あらすじ 読字障害というハンディキャップを抱えながらもアメリカ留学の後、情報番組を中心にメディアに露出する三条公彦(さんじょうきみひこ)。 知的で爽...