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2023年4月19日水曜日

『蝉かえる』櫻田智也 感想・レビュー まず装丁に惹かれ、読むと余韻が残る

神聖な土地イメージ

虫は嫌いだけど大好きな小説


おとぼけ昆虫好き青年、エリサワが活躍する第2弾。

シリーズ1作目『サーチライトと誘蛾灯』ですっかりエリサワのキャラとストーリーにハマってしまった。

虫のうんちくより、ミステリ小説としてのカラーが強め。

虫嫌いだとしても楽しめます。

私がそうなので(笑)

前作より切なさが重め。

伏線も多岐にわたり、何度か読み返したくなる。

人にお勧めしたい作品。


あらすじ

昆虫好きの青年エリサワは、虫を求めて全国各地を旅する。

だが、行く先々で事件に遭遇してしまう。

彼の目線から解く事件の真相はいつも切なさを含んでいた。

全5編からなる短編集。


ネタバレ感想

 1.蝉かえる ……………森で16年前に少女の幽霊を見た糸瓜(へちま)は、その地域が蝉を食べる風習があると知る。


風習や郷土色が強め。

幽霊の少女の謎が分かった時は切なすぎた。


2.コマチグモ …………少女は母親の元から何故駆け出したのか?エリサワは、少し前にトンボに投石を繰り返す少女を目撃していた。


母への思いをああいった形で行動した少女の心情を思うと泣ける。


3.彼方の甲虫 …………丸江ちゃんのペンションに招待されたエリサワは、スカラベのネックレスを大切にしている青年と出会う。


丸江ちゃんの再登場が嬉しい。

❝「明日がくることと、ぼくに明日があることは、同じではないのです」❞

刺さりました。


繭玉さん家のイメージ
4.ホタル計画 …………エリサワの過去が垣間見れる。


遺伝子組み換えという壮大なテーマを扱い、オダマンナ斎藤、繭玉カイ子、ナニサマバッタの関係性と思いに泣けた。

エリサワは昔から洞察力に秀でていた。

途中まで騙されていた。

一番好きな話。


5.サブサハラの蠅………エリサワの旧友登場。

アフリカ睡眠病を媒介する蠅を研究する医師の話。


自分の身体を使って実験する医師の行動に泣ける。

❝「きれいごとのひとつも口にしなければ、こんな世界、生きていけないじゃないですか」❞

刺さった。


もしドラマ化されるとしたら、エリサワ役は岡山天音さん、窪田正孝さん磯村勇斗さんで見てみたいです。


『蝉かえる』私の評価は★5


ストーリー  ★★★★★  5
キャラの魅力 ★★★★☆  4
衝撃度    ★★★★☆  4
おすすめ   ★★★★☆  4

2023年3月31日金曜日

『名もなき星の哀歌』結城真一郎 感想・レビュー  スワンプマンは誰?

 個人情報で最も大事なのは、記憶──。

結城真一郎さんは、推し作家さんです。

難しいワードも分かりやすく説明してくれるイメージ。

綺麗な文章で読みやすい。

特殊設定ミステリのイメージが強い。

伏線も見事に回収して綺麗にまとまっています。

作家さんの写真を見て、一瞬戸惑ってしまいました。

私、似たような方にフラれたことあります(笑)

でも、そんな個人的な事なんかどうでも良いと思える幻想的で惹かれるSFストーリー。



あらすじ


大学の同級生である良太と健太は、裏稼業として人の記憶を売買する店で働いている。

店のノルマを着々とこなし、調子に乗った彼らは、神出鬼没で話題のシンガーソングライター・星名の素性を調べるという探偵まがいのことを始める。

だが、彼女の素性を洗うにつれ、あり得ない状況や繋がりが浮かび上がり、首を傾げる。

やがて星名の存在が、2人の関係性に綻びを生じてしまう。



ネタバレ感想


見どころは、良平、健太、保科の三角関係の行方。
遭多夢(おうたむ)カフェのイメージ


保科の資金源の謎。

御菩薩池(みぞろけ)一家の殺人事件の犯人。

「保科と関わるな」と恐喝してきたのは誰か。

ナイトの正体は誰なのかです。

さらにナイトはもういない。

健太が賞をもらった作品が、ナイトの作品と酷似。

見どころ多いです(笑)

サイドストーリーとて、石塚巌(いしづかいわお)と認知症の妻が描かれますが、こちらの顛末の方がはっきり言って泣けました。

脅迫までは分かるけど、ジュンさんはなぜ包丁まで??

記憶を入れ替えた動機が若干浅いのでは?(まるで動機が薄っぺらいコナンの犯人のよう…)

なぜ、保科も記憶を消した??

中学高校大学と目まぐるしく人間関係を構築していくはずなのに、小学生時代に好きになった女の子を人生かけてまでずっと好きでいれるのかな?とか。

そして、二度と会えないよさようならで終わりじゃなかった。

記憶を入れた小瓶のイメージ
そして、健太はどうなるんだろうと彼の方が気になった。

健太、良い奴やった。

引っかかること多いけど、伏線の散りばめ方と新しい設定、そして綺麗な感じでまとまるから、惹かれるお話。

宇宙の構造と脳の神経細胞が酷似とか、星に纏わる知識も魅力。

スワンプマンてワード初めて知ったよ。

スワンプマン…考えると混乱
❝「主人公が、主人公だからという理由で助かるのは物語の中で一度きり」とかルールを決めるべきだよ。❞というセリフ、多くの漫画に刺さるよね。





『名もなき星の哀歌』私の評価は★5


ストーリー  ★★★★☆ 4
キャラの魅力 ★★★☆☆ 3
衝撃度    ★★★★☆ 4
おすすめ   ★★★★☆ 4



















2023年3月25日土曜日

『ふしぎ遊戯』(全18巻)渡瀬悠宇 感想・レビュー 四神と二十八宿を扱ったとんでもなく面白い漫画

古代中国のイメージ

恋愛、友情、バトルをコミカルに描く異色の少女漫画

二十八宿がキャラの名前になっているので、すんなり覚えられるし星に興味が出る。

身体に文字が浮かび特殊能力を持っているキャラが、巫女を守って滅びそうな国を救うのがベースに話が進む。

漢字の勉強にもなる。

さらに親友同士が敵対し、朱雀VS青龍で争う形になり、そこにドラマがあり、同じ人を好きになってしまうという三角関係、まあドロドロ。

でもコミカル要素もあるので、読みやすい。

キャラは多いけれど、ちゃんと描き分けができてるから大丈夫。

本から別世界に行くという設定が面白く、映画「ネバーエンディングストーリー」が好きな方ならおすすめ。

こちらは古代中国に飛びます。

読む順番は『ふしぎ遊戯』→『ふしぎ遊戯 玄武開伝』(全12巻)→『ふしぎ遊戯 白虎仙記』(既刊1巻)を推奨。


あらすじ

中学3年の夕城美朱(ゆうき みあか)と親友の本郷唯(ほんごう ゆい)は図書館で四神天地書という書物を開き、物語の世界へと吸い込まれる。

そこは、古代中国のような異世界の紅南国だった。

危ないところを、額に鬼の字を浮かび上がらせる青年、鬼宿(たまほめ)に助けられる。

現実世界に戻った2人だが、美朱は受験のことで母と揉め、再び本の世界へ入ったまま戻れなくなってしまう。

美朱は倶東国(くとうこく)と一触即発状態の紅南国(こうなんこく)の皇帝である星宿(ほとほり)に頼まれ、朱雀の巫女となり、朱雀を召喚し、願いを叶える決意をする。

まずは、朱雀七星士を探すところから始まった。

一方、美朱を助けるために、唯は入れ違いで倶東国に入り、様々な誤解から青龍の巫女になった。

そして、朱雀側の美朱と争う形になってしまう。


朱雀&青龍七星士

朱雀七星士

鬼宿…お金が大好き。恋愛に鈍感。憲法が得意。額に「鬼」の字。

星宿紅南国の若き皇帝で、ナルシスト。左の首筋に「星」の字。

朱雀

柳宿(ぬりこ)…最初、美朱と犬猿の仲だった。怪力の持ち主。左胸に「柳」の字。

井宿(ちちり)…朱雀七星士の相談役。顔に傷跡がある。瞬間移動や変身が得意。右膝に「井」の字。

翼宿(たすき)…鉄扇で炎を操る。関西弁を話す。右腕に「翼」の字。

軫宿(みつかけ)…2メートル近い長身。治癒能力に長けている。寡黙。左掌に「軫」の字。

張宿(ちりこ)…朱雀七星士の最年少だが、頭脳明晰。字が出ている時だけ冷静。左足の甲に「張」の字。


青龍七星士

心宿(なかご)…異民族。倶東国将軍。あらゆる武術に長けている。額に「心」の字。

房宿(そい)…雷を操る。心宿とは体の関係。左太腿に「房」の字。

青龍

亢宿(あみぼし)…張宿と名乗って、朱雀七星士に入り込んだスパイ。右肩に「亢」の字。

角宿(すぼし)亢宿の双子の弟。兄と比べ、精神的に脆弱。唯を慕う。左肩に「角」の字。

氐宿(とも)…貝で幻覚を見せる術を使う。奇抜なメイクをしている。右下腹部に「氐」の字。

尾宿(あしたれ)…鋭い爪と牙を持つ巨大な獣。右腰に「尾」の字。

箕宿(みぼし)…見た目は赤子だが、邪法を操る。襟首に「箕」の字。


ネタバレ感想


七星士(仲間)探しの旅が面白く、それぞれのキャラに特徴がある。

朱雀と青龍どちらが先に召喚できるかを争う。

だが、巫女は四神に食われてしまうという衝撃の事実が明らかになる。

国を救いたい、でも死んでしまうという葛藤。

さらに、鬼宿をめぐっての三角関係も目が離せない。
そして、いくら思い合っても美朱と鬼宿は結ばれない事実も。

柳宿のシーンは大泣き。

ただ、私の中で2部はなかったことにしています。

1部だけを何度もリピート。

美朱が大好きで突っ走る鬼宿が好きだから。

人間の彼はネガティブ思考だし、キャラ違う。

私の好きなキャラは鬼宿、角宿、星宿です。

『ふしぎ遊戯』私の評価は★5


ストーリー  ★★★★★  5
キャラの魅力 ★★★★★  5
衝撃度    ★★★★☆  4
おすすめ   ★★★★☆  4(2部なかったら5)

























2023年3月7日火曜日

『二木先生』夏木志朋 感想・レビュー 共感性羞恥が発動する,テンポの良いストーリー

 主人公が嫌いでも面白い

みんな普通を装う。

だって芸能人じゃないし、ただの一般人だし。

目立って良いことないし、絡まれるとめんどくさい。

でも普通って?

人によるのではないか?

主人公である田井中は、「あ、そんなことまで言ってしまうの?」と歯止めの境界線を失っているキャラ。

彼に好意を寄せる人物は肉親以外いないだろう。

作家さんが女性だと知って驚いた。

こんな作品を執筆できるのは男性だと決めつけてた(笑)


あらすじ

田井中広一(たいなかこういち)は、幼いころから自分なりに変わっていると気づいてた。

普通を装う努力をしたが、もう我慢せずに思ったことを口に出すようにした。

田舎の学校イメージ
黙っていても話しても結局、同じだったからだ。

担任である美術教師の二木良平(にきりょうへい)は、そんな自分と対極にいる普通の人間だと思っていたが、彼のとんでもない秘密を偶然知る。

二木の秘密をチラつかせた田井中と先生の攻防戦が始まった。


ネタバレ感想


読み始めは何だこれ状態だったけど、面白かった。

会話で一触即発の攻防戦が成り立っているし、張り詰めてる空気感がピーンと伝わってくる臨場感がすごい。

二木先生は穏便にすまそうとしているのに、田井中がしつこい。ほんとに(笑)

もう何してんのって思って、共感性羞恥が発動して一瞬本を閉じたり。

映像でも見たいけど、”話のテンポ”と”間”がうまく起動できるとは思えない。

何より「がじぞう先生」の件は苦情必至。

とりあえず何も考えずに読むのがおすすめ。

例え方がうまいので脳内で映像となって浮かびやすい。

❝急激に空腹を訴え始めた。さっきまではストレスで縮み上がっていたくせに、自分のテリトリーに帰ってきた途端、勢いを取り戻した内臓の内弁慶っぷりに少し呆れた。❞

表現の仕方がすごい好き。

田舎の学校は人間関係がリセットできないのが辛い。

例えば、小学校1年生の時に付けられた屈辱的なニックネームが6年間使われる羽目になる。

小学生時代に2年ほど田舎で暮らしたことがあるから分かる。

先生が普通の皮を被ることがどんなに大事だったか。

田井中と二木先生は、いい出会いをしたんじゃないでしょうか。

『二木先生』私の評価は★5

ストーリー  ★★★★★ 5
キャラの魅力 ★★★★☆ 4
衝撃度    ★★★★☆ 4
おすすめ   ★★★★☆ 4






2023年2月19日日曜日

『いつもの朝に』(上下巻)今邑彩 感想・レビュー 家族愛を謳った作品

 完璧な兄に対し劣等感を抱く弟、カインとアベルに準えた現代のミステリー

30年前に起きた凄惨な事件。

出生の秘密が書いてあった隠された手紙。

優秀な兄と全く似ていない弟。

全てが線で繋がるとき、慟哭する。

装画は北見隆さんです。


簡単なあらすじ


聖人君主である父と、画家の母を両親に持つ兄弟、桐人と優太。

彼らは仲の良い兄弟だった。

だが、小さいころからある熊のぬいぐるみの中から、本当の父だと名乗る手紙を発見し、兄弟はすれ違っていく。

犯罪者の血は遺伝するのか?

家族は再生できるのか?

涙なくてしては読めない家族愛がテーマのミステリー小説。

ネタバレ感想


ストーリーは単純ではなく二転三転します。

上巻と下巻でガラリと変化します。

兄の桐人の選択にも涙し、弟優太の行動にも泣けます。

事実に怯え、兄弟に亀裂が生じ始める。

だが、忘れてならないのは逃げ出した優太を止めたのは兄であり、兄を救おうとしたのは優太だった。

2人を深い愛で包む母親、沙羅も素晴らしい人だった。

人に勧めたくなる本です。

ドラマ化したら見ごたえありそうだなと思う。

桐人役は高橋文哉さんに演じてもらいたいなあ。

『いつもの朝に』私の評価は★5

ストーリー   ★★★★★ 5
キャラの魅力  ★★★☆☆ 3 
衝撃度     ★★★★★ 5
おすすめ    ★★★★★ 5

2023年2月13日月曜日

『私が大好きな小説家を殺すまで』斜線堂有紀 感想・レビュー 共依存の悲しい恋愛の行く先

私の好きな本ベスト3

タイトルに惹かれて読んだ作品。

余韻を深く残し、梓は最後どうなったかと人によって捉え方が違うかもしれません。

簡単なあらすじ

ネグレストを受けていた梓(あずさ)が憧れていた売れっ子小説家、遥川悠真(はるかわゆうま)と出会い、救われる。

その一方、彼は才能を失いつつあった。

梓がどうして愛する彼を殺す決意をしたのか。

胸を打つ悲しいラブストーリー。


感想・レビュー

才能、嫉妬、裏切り、騙し合い、全て愛情から来る2人の行為。

どこからかすれ違い狂ってしまいます。

2人が幸せに生きていく方法はなかったのか。

もしかしたら、出会わなければ良かったのか。

映像化するならば、深夜枠で無名の俳優さんたちで、丁寧にドラマ化してほしいなと思いました。

同作家さんの『恋に至る病』の方が人気ですが、私はこの作品が大好きです。

この本を読むとき、いつもYOASOBIさんのハルジオン』が頭の中を駆け巡ります。


私が大好きな小説家を殺すまで』私の評価は★5

ストーリー  ★★★★★ 5
キャラの魅力 ★★★★☆ 4
衝撃度    ★★★★★ 5
おすすめ   ★★★★☆   4



『月の子 MOON CHILD』(文庫版全8巻)清水玲子 感想・レビュー 現代版人魚姫が壮大なスケールで描かれるSFファンタジー 

ただ好きになっただけなのに…


人間の王子に恋をした人魚姫は、魔女の力を借りて人間の姿になるが、代わりに美しい声を失ってしまう。

王子は隣国の姫と結婚し、恋に破れた人魚姫は水の泡となって消えてしまいました。

アンデルセン童話の「人魚姫」は、ざっくりと書けばこのようなあらすじ。

この童話をベースに描かれる『月の子 MOON CHILD』は、現代版おとぎ話のよう。

簡単なあらすじ


売れないダンサーのアートは、交通事故を起こす。

そのせいで記憶を失った少年ジミーを罪悪感から引き取り、奇妙な同居生活を送る。

ジミーの周りではゴーストが出現したり、壊れた時計が直ったりと奇妙な出来事が起こっていた。

ジミーの行動で地球の未来が変わってしまう?

人間と人魚たち、そして地球の運命が描かれるファンタジー。

↓ネタバレ感想↓


ベンジャミンが本当に美しく見惚れてしまいますが、人魚姫同様、好きな男性には振り向いてもらえず、切なくなります。

人魚姫(セイラ)の子供が3人という設定も面白く、関わる人間たちの関係性の変化が見応えありました。

アートに恋をしてしまったため、地球を破滅に導いてしまうベンジャミン。

セツの為に、地球を賭けて魔女と契約したティルト。

それぞれの思いが交差する切ないストーリーが、清水玲子さんの綺麗な絵によって描かれています。

  • ジミー×アート
記憶喪失のジミーと口は悪いけど世話焼きのアート、2人の日常がとても微笑ましくて好き。
  • ジミー×ショナ
ジミーの正体を知ったショナの溺愛ぶりが面白い

  • セツ×ショナ
この2人の関係が変わっていくのが良かった。恋の結末にすごく泣けた。

ヒール役であるティルトが、ベンジャミンの無邪気さに傷付いていたと知ると憎めくなる。

一番かわいそうなのはティルトに乗っ取られたギル・オウエンかも。

『月の子 MOON CHILD』私の評価は★5


ストーリー  ★★★★★ 5
キャラの魅力 ★★★★★ 5
衝撃度    ★★★★☆ 4
おすすめ   ★★★★☆ 4


2023年2月9日木曜日

『麦の海に沈む果実』恩田陸 感想・レビュー 学園が舞台の幻想的なミステリー

麦の海に沈む果実

全寮制の学園に隠された秘密とは

この本を読んだ後、理瀬(りせ)シリーズの1冊だと知りました。

その後、全部の作品を読破したけれど、私は『麦の海に沈む果実』の理瀬が好きです。

記憶が混濁している理瀬は、大人しい真面目な女の子。

閉ざされた全寮制の学校が舞台です。

こちらは白理瀬(純粋)と言われてます。

『黄昏の百合の骨』の彼女は、黒理瀬(腹黒い)です。

おとぎ話のような不思議な世界観を綺麗な表現で綴られているため、現実逃避させられた作品でした。

北見隆さんのイラストも素敵です。


簡単なあらすじ

理瀬が転入してきたのは2月、3月以外の転入生は学園を破滅に導くという噂があり、実際彼女が来てから、不可解な出来事が多く起きます。

不可解な出来事は、理瀬のせいなのか?

理瀬が失っていた記憶とは?


↓ネタバレ感想↓

黎二(れいじ)と理瀬のワルツのシーンがとても印象的でした。

2人の最も幸せな時を刻んだワルツ。

❝頂点に立った時に感じる滅びの予感

最も美しい時間を経験した後は滅びていく。❞


この文が忘れられず、自身の恋愛に変換し、あの時が頂点だったなと思ってしまったり。 

黎二というキャラクターは一見ぶっきらぼうだけど、実は優しく、身を挺して守ってくれるナイトのような存在で、女性なら誰でも彼に惚れると思う。

黎二の存在を忘却する決意をした理瀬。

作中に出てくる詩がストーリーの終盤で意味を成し、余韻を残したまま、忘れられない1冊となりました。

もし、映像化するなら丁寧にアニメ化してほしいです。


『麦の海に沈む果実』私の評価は★5

ストーリー  ★★★★☆ 4
キャラの魅力 ★★★★☆ 4
衝撃度    ★★★☆☆ 3
おすすめ   ★★★★☆ 4

2023年2月8日水曜日

『15歳のテロリスト』松村涼哉著 感想・レビュー 少年の本当の願いとは

15歳のテロリスト

低年齢化する犯罪に対して法の改正を願ったストーリー

主人公の15歳の少年の動機が分かった時、彼の決意に涙なしでは読めなかった。

テーマは重いけれど、読みやすい文章で綴られている為一気読みできた。

スノードロップ
加害者家族と被害者家族の立場両方が理解できる作品。

10代のうちに読んで欲しい作品だと思った。

スノードロップはこの小説で知って、実際見てみたいと思った。


簡単なあらすじ


新宿駅爆破事件の犯人は15歳の少年、渡辺篤人。

その事件は世間を大きく揺るがした。

だが彼は、少年犯罪の被害者家族だった。

彼がなぜ凶行に走ったのか?

篤人を知っていた記者の安藤は、彼の行方を追う。

↓ネタバレ感想↓

被害者遺族の篤人と加害者家族のアズサ、2人を結び付けた背景が辛い。

アズサに近付いた篤人は、彼女たち加害者家族も苦しんでいると知って慟哭します。

復讐を誓った篤人ですが非情に成りきれず歯痒い思いをします。

アズサも彼女の母も優しい良い人だったため、余計苦しみます。
 

一方、アズサは兄のせいで酷いいじめを受け落ち込んでいたところ、優しく接してくれた篤人に恋心を抱きます。

好きになった相手が違う目的で近づいたと知ったアズサの心情を思うと切ない。


『15歳のテロリスト』私の評価は★5

ストーリー  ★★★★☆ 4
キャラの魅力 ★★★☆☆ 3
衝撃度    ★★★★☆ 4
おすすめ   ★★★★★ 5

2023年2月6日月曜日

『VANILLA FICTION(ヴァニラ フィクション)』(全8巻)大須賀めぐみ 感想・レビュー 壮大なスケールで描く双六ゲーム

VANILLA FICTION

 血縁関係がなくても絆は生まれる

スピーディーな展開で出てくるキャラも個性的、何でこのコミックがそんなに有名じゃないんだろうと不思議でなりません。

アニメになっても見応えありそう。

主人公の佐藤は、陰キャ設定だけど、ストーリーが進むにつれて頼もしくなっていきます。

絵も綺麗で読みやすいです。

双六ゲームに強制的に参加することになった2人の対決が描かれますが、展開が読めずに面白い。

キーパーソンである不思議な少女エリがどっちの味方になるかによって、運命が大きく変わります。

佐藤の邪魔をする悪徳警官が腹立ちますが、彼の息子が可愛くて憎み切れない。


ゴールはエリと佐藤がクッキーを食べること。

カオス理論の連鎖で世界を救うというコンセプトも好き。

全8巻なのですぐに読み終わります。

簡単なあらすじ

佐藤忍(さとうしのぶ)はバッドエンドしか書けない気鋭の小説家。

廃ビルで薄汚れた少女エリをめぐって、争う人間を目撃した彼は、双六ゲームという非日常に巻き込まれる。

チャラ男の太宰を案内役に逃避行が始まる。

果たして佐藤とエリは無事にゴールにたどり着けるのか?

↓ネタバレ注意↓

佐藤とエリには血縁関係はありませんが、絆が芽生えてくる過程に泣かされます。

敵役の雪彦(ゆきひこ)は元妻より駑螺滋恵(ドラジェ)というキラキラネームの息子を急に押し付けられます。

複数の男と関係を持っている元妻なので、雪彦の本当の息子かどうか怪しいですが、悪事を働く警官である彼が、息子に対する愛情が芽生えていく過程が微笑ましい。

不条理なゲームに巻き込まれたとんでもないストーリーだけど、それぞれの心情がしっかりと描かれている印象。

また案内役の太宰治と佐藤に芽生えた絆も良かった。 


この太宰が不死身で趣味と特技はセックス遊びというとんでもないキャラだけど、佐藤の影響で変わっていく過程も面白い。


『VANILLA FICTION』私の評価は★5

ストーリー  ★★★★☆ 4
キャラの魅力 ★★★★☆ 4
衝撃度    ★★★★☆ 4
おすすめ   ★★★★☆ 4



『マリオネット』(文庫版全4巻)愛田真夕美 感想・レビュー 残酷で美しいストーリー

マリオネット

誰もが魅了される少年ダニエル。彼は悪魔なのか天使なのか

 1980年代に連載されたコミックですが、ストーリーがしっかりしていて面白い。

ジャンルで言うとホラーかな。


簡単なあらすじ

主人公のダニエルの美貌と伯爵の地位に魅せられた人たちが破滅の道へ辿っていくストーリー。

そのため、彼はいつしか悪魔とまで呼ばれるようになります。

少年のダニエルは悪戯心でつい人を唆したりもしますが、傷ついたりもします。

幼少期、彼は義母に翻弄され、大好きだった姉にも裏切られ、周りの人間を誰も信用できなくなっています。

またサブタイトルが良く、「鳶色の童話」から私はハマりました。

「ガラス細工の森」は本当に悲しいストーリーでした。

欲望渦巻く世界で、ダニエルは人を信用できるのか?


↓ネタバレ感想↓

近づく者には冷たい視線を向け、わがままでやりたい放題のダニエルですが、アンティエーヌという少女に出会い、彼は少し変わります。

性格も可愛らしく天使のような彼女は、ある殺害シーンを目撃してしまったため、悲劇の道へと歩みます。

だけど最後まで自分の運命を呪わず、綺麗な心のままダニエルの腕の中で亡くなるという衝撃的な結末を迎えます。

この2人の微笑ましいシーンをもっと見たかった。

『マリオネット』私の評価は★5

ストーリー  ★★★★☆ 4
キャラの魅力 ★★★★☆ 4
衝撃度    ★★★☆☆ 3
おすすめ   ★★★★☆ 4



2023年2月5日日曜日

『新世界より』貴志祐介著 感想・レビュー 人間と化け物の境界線

新世界より


私の好きな小説、トップ3

大長編(上・中・下)の作品ですが、上巻から即引き込まれてすぐに読み終えました。

大人が隠し事をしながら閉ざされた世界で育つ子供たち。

弱い子供、そして人に災いをもたらしそうな子供は早々に排除されていく世界。

その中で早季(さき)たちのグループは、好奇心旺盛で有望だったゆえに、混乱を来たす元凶になっていく。

簡単なあらすじ


町で生まれた仲良し5人組。

決して町の外には出てはいけないという制約を受けながら日々を過ごす子供たち。

記憶を操作されながら、いなくなった友人を忘れて日常生活に戻っていく。

夏季キャンプをきっかけに、早季たちは町の様相を疑い始めた。

真相を知った早季たちは?

安全だった町は襲撃され、思わぬ展開になっていく。

人外との戦い、そして、人間の浅はかさを唄う作品。
神栖66町の民家のイメージ

伏線も凄く、何度でも読み返したくなるストーリー。


↓ネタバレ注意↓


私は将来有望とされていた瞬(しゅん)の退場が悲しすぎてめっちゃ泣きました。

彼をどうやったら助けることができただろうとそればっかりを考えます。

夏季キャンプでのナイトカヌーの描写が美しく印象的でした。



早季と瞬の恋がすごく切ない。

2人の別れのシーンは胸が痛いです。


アニメ化は、世界観を壊さず上手く作っていたなと思いました。

『新世界より』私の評価は★5

ストーリー  ★★★★★ 5 
キャラの魅力 ★★★★★ 5
衝撃度    ★★★★★ 5
おすすめ   ★★★★★ 5


『仮面』 伊岡瞬著 感想レビュー 仮面の下の秘密

  仮面 (角川文庫) ディレクシアを知る 初読みの作家さんでした。 ページ数は多いけどすぐに読み終えました。 グロ描写ありです。 あらすじ 読字障害というハンディキャップを抱えながらもアメリカ留学の後、情報番組を中心にメディアに露出する三条公彦(さんじょうきみひこ)。 知的で爽...