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2024年10月11日金曜日

『推しの殺人』遠藤かたる著 感想・レビュー 地下アイドルの友情サスペンス

推しの殺人 (宝島社文庫)

わたしたちをつなぐのは罪

地下アイドルが主役なのが面白い。

2024年 第22回『このミステリーがすごい!』大賞文庫グランプリ受賞作

ミステリーというよりサスペンス色強め。


ノンストップ青春サスペンス。


あらすじ 

大阪を拠点に活動する三人組地下アイドル「ベイビー★スターライト」

人気は下がる一方で単独ライブでの集客力は最早なく、合同ライブで日銭を稼ぐ日々だった。

さらにメンバー格差もあり、関係性はぎくしゃくとしている。

そんな中、メンバーのひとりが殺人を犯してしまう。

このままではアイドルを続けることができない。

三人は罪を隠蔽することを誓い、山中に死体を埋める段取りを始める。

行きつく先は破滅かステージか。


ネタバレ感想

『溺れる星くず』改題。

元タイトルの方が断然いい。

『推しの子』に引っ張られた感がある。

このタイトルだと、冒頭ルイに説教した教師が主人公の話かなと思っちゃう。

皮肉にも殺人がきっかけになって3人の結束力が固まる。

絆が深まったところは泣ける。

主人公のルイがめちゃくちゃ冷静。

若干自意識過剰。

過去に色々あったせいか、精神的に不安定なのかな。

人物像に一貫性がないため、感情移入しにくかった。

テルマは感情的だけど一番分かりやすいタイプ。

イズミは芯がしっかりしていて、律儀。

関西弁が飛び交うけど違和感なし。

作家さんの出身大学を見て納得。


興信所がイズミに絡んだ理由に何やねんってなった。

2回もレンタカーで山行くの怪しすぎるだろ。

イノシシもただ出てきただけかーい(笑)

ドッキリ企画は良かった。

土井(どい)さん良かった。

河都(かわと)は良い人すぎたからそう来たかと思った。

どんでん返しが弱い気がする。

3人がどこでアイドルしているか描いて欲しかったな。

読みやすかったから次作も期待。


『推しの殺人』私の評価は★2

ストーリー  ★★☆☆☆ 2

キャラの魅力 ★★☆☆☆ 2

衝撃度    ★★★☆☆ 3

おすすめ   ★★★☆☆ 3

2024年10月2日水曜日

『あさひは失敗しない』真下みこと著 感想・レビュー 愛と狂気の境界線 

あさひは失敗しない (講談社文庫) 

おまじないの呪縛

装丁は坂野公一(さかのこういち)さん

めっちゃインパクトがあってじわじわとした怖さを感じさせるデザイン。

このストーリーにぴったりです。

過干渉の親に育てられ、考える力を持たないまま大人になったあさひ(女性)が主人公のホラーミステリー。


あらすじ

あさひは、ずっと母に頼り切り共依存的な生活を送っていた。

大学生になった今もそれは変わらない。

母は、不安な時はいつも「あさひは失敗しないから」というおまじないをかけていた。

そんなある日、母に内緒で男の子がいる飲み会に参加したあさひ。


そこから歯車が狂い出し、とんでもない失敗を犯してしまう。


ネタバレ感想

このストーリーには、有名な童話『ヘンゼルとグレーテル』が取り上げられています。

子供の頃に読んだ話なのに、すごい衝撃を受け今でも鮮明に覚えています。

概要を少し。

貧乏な木こり一家の子供ヘンゼルとグレーテルは、深い森で置き去りにされます。

子供たちを捨てようと提案したのは母親でした。

『ヘンゼルとグレーテル』

迷子になった2人は、クッキーやキャンディ、チョコレートなどで外観を彩られたお菓子の家を発見します。

お腹が空いていた2人はそのお菓子を食べてしまいます。

おいしそうなお菓子で子供を誘う魔女に2人は嵌められたのでした。

ヘンゼルを檻に入れ、グレーテルに家事を言いつけます。

グレーテルの機転でかまどに魔女を落とすことに成功した2人は家に帰ります。

2人を嬉しそうに迎えてくれたのは父親でした。

それから3人は仲良く暮らしました。

母はどこに?

魔女=母親説もありなのかも。

ヘンゼルたちは母親をやっつけることで幸せを手に入れた感じ。


あさひも母の呪縛から逃れると幸せになったかもしれないが、気付くの遅かった。

位置情報アプリ入れられても、睡眠薬を入れられ乱暴されても、友人に強請られても受け入れてるってのは、過干渉の成れの果てなのか。

そもそも何で信用していない律子(りつこ)に秘密を打ち明けるんだ…。

そして、睡眠薬で眠らされて処女を捨てれたのが良かったという謎の発想。

谷川翔太(たにがわしょうた)を恨んでいないあさひ。

考える力はないくせに、謎の処女卒マウントは取っていた。

この話に出てくる登場人物は全員クソ。

定食屋のおばちゃんに至るまでクソです。

小学校時代の女子の仲間外れ、リアルだ。

私もあります。

あれだけ仲良くしていたのに次の日から謎の無視。

優(ゆう)ちゃんは絶縁宣言してきたからまだマシかなと思う私にはまだ黒い記憶が浄化されていないようだ。

世代の負の連鎖はあさひによって断ち切られるのだろうけど、ずっとイライラしながら読んだ。

避暑地に別荘持ちなのは羨ましかった。すっごい名前の地名が出てきますが、現実にありました。

読みやすい女性向きの作品。

深夜ドラマとかでやってほしい。


『あさひは失敗しない』私の評価は★2

ストーリー ★★☆☆☆  2

キャラの魅力★☆☆☆☆  1 

衝撃度   ★★★☆☆  3

おすすめ  ★★☆☆☆  2

2024年8月13日火曜日

『貴方のために綴る18の物語』 岡崎琢磨著 感想・レビュー 奇妙な仕事

貴方のために綴る18の物語 (祥伝社文庫 ) 


あしながおじさん?

ある日、老紳士から依頼された仕事は、1日1話読むだけで総額143万円との胡散臭い内容。

この仕事の本来の目的にせまる恋愛ミステリ

18本の短編を読み進めていくうちに、心はかき乱されていく。




あらすじ

駅のホームで見知らぬ老紳士から声をかけられた美織(みおり)は、思い出のレトロな喫茶店で奇妙な依頼を受ける。

それは、1日1話、謎の人物が執筆した18本の短編を読み感想を書くこと。

それだけで報酬は破格の143万円。

詐欺だと疑う美織だが、毎日届く短編に美織は没頭し始める。

この仕事の真の目的とは?


ネタバレ感想

主人公の美織は、何かに思い悩んでいるようで性格も暗くじめっとした印象を受けた。

後に理由は分かるんだけど。

短編はどれもそれなりに面白く、様々な恋愛模様が描かれている。

ほっこりするお話は少なく、どちらかといえばクソキャラが多め。

星新一さんのショートショートまではいかないが、どんでん返しもあって良かった。

彼女が書いた感想は最初共感できるのも多かったのに、3週目から乱雑すぎる。

すぐ自殺しようとする美織にはうーん。

立ち直ったとは思えないし、本当に前を向いていけるかなとこれからも心配ではある。


『貴方のために綴る18の物語』私の評価は★2

ストーリー  ★★★☆☆ 3

キャラの魅力 ★★☆☆☆ 2

衝撃度    ★★☆☆☆ 2

おすすめ   ★★★☆☆ 3

2024年8月5日月曜日

『みんな蛍を殺したかった』木爾チレン (きな)著 感想・レビュー 誰も幸せになれない

 『みんな蛍を殺したかった 』(二見文庫 )

❝私を殺してくれて、ありがとう❞

このストーリーのキャラたちではどんなルートを選択してもバッドエンドになってしまうだろう。

冒頭の未送信のメールに衝撃を受け、なぜそんなメッセを打ったのか答えを知りたくなる。

女子の嫌な部分を見事に描いている作品。



あらすじ

美しい少女・蛍が線路に身を投じる。

京都の偏差値が低い高校に通うオタク女子三人。

もちろんスクールカースト底辺に属し、生物部に籍を置く。

そんなある日、東京から美少女・蛍が転校してきた。彼女はなぜか自分もオタクだと宣言し、生物部に入部してくる。

蛍とそれぞれ絆を深めていく三人だが、事態はあらぬ方向へと進んでいく。


登場人物

七瀬蛍(ななせほたる)……二次元から飛び出したかのような美貌の持ち主。

大川桜(おおかわさくら)…オンラインゲーム『魔法世界』(まじかるわーるど)にハマるボクっ子。アニメ声。

五十嵐雪(いがらしゆき)…裕福な家庭で育つが、母の愛に飢えている。クラスメイトの金づる。

猫井栞(ねこいしおり)……母は美人で有名人。顔の火傷のせいで筆談。小説を書いている。

リイ君 ………………………『魔法世界』での桜(ナデシコ)の恋人。

アロワナ ……………………生物部にいる古代魚。

デュビア ……………………ググると後悔します(笑) 蛍が育てている虫。


ネタバレ感想

蛍に裏がありそうと思いながら読んだけど、やっぱりそうだった(笑)

藤高さんは、生まれたての赤ちゃんが六花に見えてしまうぐらい精神を病んでしまったんだろうな。

ただ、そんな偶然ある?っていう狭い世界だった。

誰か一人くらいハッピーエンドにしてあげて。

オタクはみんなブスではないと思うし、性格悪いという設定はどうだろう。

蛍の勝手な復讐心で、歯車が狂っていくし歪みすぎ。

復讐する相手は違うのにね。

そして母親の愛情の注ぎ方で子供は変わってしまうだなと。

桜と栞の母親は酷かったし、父親も尻に敷かれすぎて頼りない。

唯一綺麗な心の持ち主だった栞は、母の世話なんかしなくて良いのにと思った。

彼女は蛍の我がままも受け入れたし。

兄弟間で容姿レベルが違いすぎるのが3組もあるなどツッコミどころもあるが、ドロドロとしていて面白かった。

読後感は良くないけど深夜枠で実写化しそう。


『みんな蛍を殺したかった』私の評価は★2

ストーリー  ★★★☆☆ 3

キャラの魅力 ★★☆☆☆ 2

衝撃度    ★★★☆☆ 3

おすすめ   ★★★☆☆ 3


2024年7月29日月曜日

『真夜中のマリオネット』知念実希人著 感想・レビュー 顔が良い容疑者

 『真夜中のマリオネット』集英社文庫

八雲??

表紙デザインが一瞬『心霊探偵八雲』の斉藤八雲(さいとうやくも)に見えた。 

八雲シリーズは鈴木康士(すずきやすし)さん。

こちらの作品は、遠田志帆(えんたしほ)さんでした。

遠田志帆さんは、『Another』(角川文庫)のイメージが強くて、女の子しか書かないと勝手に思ってましたが、

『新・心霊探偵八雲 赤眼の呪縛』(講談社)の装画も担当してました。

鈴木康士さんより遠田志帆さんのイラストの方が肉付きが良いイメージ。

2人とも妖絶で素敵なイラストで好きです。

❝ラスト1頁(ページ)、あなたは必ず絶叫する! 衝撃のクライムサスペンス❞ という謳い文句。

ハードル上げまくってます。


あらすじ

救急医の秋穂(あきほ)が救った少年は、天使か、悪魔か――。

一晩かけて遺体をバラバラにする殺人鬼――通称「真夜中の解体魔」の逮捕に向けて警察は躍起になっていた。

その解体魔に婚約者を殺された秋穂。

メンタルをやられ、ようやく職場に復帰をしたところに重症患者が運ばれる。

その患者は、美貌の少年・涼介(りょうすけ)。

無事、命を救うことができた秋穂だが、刑事は彼が『真夜中の解体魔』だと告げる。

涼介は涙を流しながら僕は罠にかけられたと秋穂に訴えた。

彼に翻弄されながら一緒に真犯人を探す秋穂。

涼介は真犯人に操られた人形なのか、それともマリオネット遣いなのか。


ネタバレ感想


初読みの作家さんです。

ストーリーの詰めが甘く、ラストは予想できた。

まず、主人公でヒロインである秋穂に全く共感できず、おいおいとツッコむ所多数でした。

涼介がもし美貌の少年じゃなかったら、秋穂はこんな行動するかなと疑問。

結局顔かよという描写がちらほら。

婚約者をを殺したかもしれない少年に寄り添ったり、言動もイライラする。

倉敷と雪絵さんはなぜわざわざ風俗店で会い、彼は出禁になったのか?

桐生さんと黒崎を殺害する動機が弱い。

遺体の一部で作ったとされるオブジェはどこ?

そして一晩かけてわざわざバラバラにする理由は?

秋穂の婚約者に犯人はどう接触したんだろう?

矢内と紅さんは良い人だった。

辻褄合わせが納得できない作品でした。

ただ、続きが気になってラストまでドキドキはさせてもらえた。

第一章 深夜の来訪者
第二章 シュレーディンガーの少年
第三章 人形たちの輪舞曲

『真夜中のマリオネット』私の評価は★2


ストーリー   ★★☆☆☆  2
キャラの魅力  ★★☆☆☆  2
衝撃度     ★★☆☆☆  2
おすすめ    ★★☆☆☆  2


2024年5月1日水曜日

『人獣細工』小林泰三著 感想・レビュー 人と獣の境界線

人獣細工(角川ホラー文庫)


人間の証明とは


❝パッチワークガール。そう。私は継ぎはぎ娘。❞


表題作「人獣細工」の他、「吸血狩り」「本」の3編からなる作品集。


デッドマン・ワンダーランド』の作者さんによる書き下ろしカバーイラストに惹かれて購入。

グロ描写ありのホラー。

想像力豊かな人は注意です(笑)

ブタの臓器を全身に移植された娘の話。

たった一つだけ、自分だと分かる印を残して。


あらすじ


先天性の病気が理由で、生後まもなくからブタの臓器を全身に移植され続けてきた少女・夕霞(ゆか)。

移植を担当していたのは彼女の父だった。

父の死後、膨大な移植記録を見た彼女は、自身の存在に疑問を覚える。

私は父の実験動物だったのだろうか。

ほとんどの器官をブタから移植されていた夕霞は、人間である証明を得るために実験記録を漁る日々。

心配して訪ねてきた友人に罵倒してしまう程おかしくなっていく。

やがて彼女が辿り着いた真実とは。


ネタバレ感想


小林泰三さんの文章は少し読みにくい印象。

メルヘン殺しシリーズは好きなんだけどね。

『玩具修理者』は、グロ描写がきつすぎて吐き気がした。

『人獣細工』は、前者がグロ10レベルだとすると、6ぐらいかな。

3篇目の「本」の方が描写がキツイ。

「人獣細工」と「本」は、専門的用語がたくさん出て来るけど、読み解く力が必要なのは「本」。

全ての臓器がブタならば、何をもって人間と言えるのか。

夕霞への唯一の救いは良い友人を持ったこと。

❝法律はある程度、人間の行動を抑制できるが、完全ではない❞

この言葉はなるほどと思った。

最終的にその人間のモラルに左右されるんだな。

彼女が知った真実は戦慄が走る。

そっちなのかと愕然。

2篇目の「吸血狩り」はライトな感じで読みやすいが不安が残る。

「本」は、まさに狂気の世界。

ピアノ辺りから描写がきつく頭がおかしくなりそうだった。


『人獣細工』私の評価は★2


ストーリー  ★★★☆☆ 3
衝撃度    ★★★★★ 5
キャラの魅力 ★☆☆☆☆ 1
おすすめ   ★★★☆☆ 3








『仮面』 伊岡瞬著 感想レビュー 仮面の下の秘密

  仮面 (角川文庫) ディレクシアを知る 初読みの作家さんでした。 ページ数は多いけどすぐに読み終えました。 グロ描写ありです。 あらすじ 読字障害というハンディキャップを抱えながらもアメリカ留学の後、情報番組を中心にメディアに露出する三条公彦(さんじょうきみひこ)。 知的で爽...