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2024年11月6日水曜日

『仮面』 伊岡瞬著 感想レビュー 仮面の下の秘密

 仮面 (角川文庫)

ディレクシアを知る

初読みの作家さんでした。

ページ数は多いけどすぐに読み終えました。

グロ描写ありです。


あらすじ

読字障害というハンディキャップを抱えながらもアメリカ留学の後、情報番組を中心にメディアに露出する三条公彦(さんじょうきみひこ)。

知的で爽やか、容姿も整っている為、三条人気に拍車がかかる。

一方、30代主婦の行方不明者を捜査する宮下(みやした)刑事は、以前に白骨死体で発見された別の女性との繋がりに気づく。

はたして、三条は二つの事件に関わっているのか。


ネタバレ感想

『レディK』の菊井(きくい)さんと小野田(おのだ)刑事はかっこいい。

性に奔放すぎるその他の女性は好きになれなかった。

イケメンだったら良いのか安易に近づいて軽すぎる。

ストーリーは面白かったが途中から失速。

あーそういうことねと分かってから、よく今まで逮捕されなかったなって思った。

そんなにすぐ殺害しなくてもと思った。

仮面を取った三条がバカすぎる。

メディアに作られた虚像なんだなあ。

暴力の描写は嫌悪感いっぱい。

実は○○だったとか終わり方さらっとしすぎてるかな。

三条の経歴は嘘だった。

ネット情報が何でも本当になってしまうのは怖い。


『仮面』私の評価は★3

ストーリー ★★★☆☆ 3

キャラの魅力★★☆☆☆ 2

衝撃度   ★★★☆☆ 3

おすすめ  ★★★☆☆ 3






2024年10月28日月曜日

『この夜が明ければ』岩井圭也著 感想・レビュー 1人の遺体と6人の秘密 

この夜が明ければ (双葉文庫 ) 

お願いだから、通報しないで

季節バイト、衣食は提供されるみたいで給料も良い。

でも私にはこの仕事無理。


魚と血と刃物、そして周りに何もない場所、知らない人たちと2カ月の共同生活。

人には隠したい過去がある。

1人の遺体が見つかった為、暴かれていくそれぞれの過去。

長い一夜のサスペンス。


あらすじ

北海道で魚を捌く季節バイトに集まった20代~30代の七人の男女。

同じ宿舎に泊まり、気が合う合わないはあるものの表面上はそんなにトラブルもなく日々を過ごしていた。

だが、ある晩一人が遺体となって見つかり、警察を呼ぼうとした工藤秀吾(くどうしゅうご)はみんなから通報を阻止される。

それぞれ、全員警察を避ける訳あり人間だった。


一夜にして世界が反転。

そして犯人は誰?



ネタバレ感想

こういう季節バイトではコミュ力を発揮するのがいいか、誰とも交わらず静かに過ごす方がいいのかどっちなんだろう。

数ヶ月でリセットするしもう二度と会うことないメンバーだけど、楽しく過ごせた方がいい。

だけどやってくれたなー、単なる一人のわがままじゃないか。

疑心暗鬼に駆られたメンバーは、長い長い一夜を過ごす。

警察を避ける理由が一人一人明らかになる。

そんなことで?って思うのもあったけど思いは人それぞれ。

シュウは苦手だけど、一番無害を装っていた高井戸唯(たかいどゆい)がズルくて嫌いだ。

亮(りょう)と彩子(あやこ)さんは同情の余地あり。

サトマリとシュウは自分次第。

誰にも共感できないし、みんなそれでいいの?って終わり方だった。

性格はそんなすぐ変わるわけでもないし関係はすぐ破綻しそう。

このメンバーを雇ったバイト先が一番痛手かな。

でも一気読みで面白く読めた。

装丁も好き。


『この夜が明ければ』私の評価は★3

ストーリー  ★★★☆☆ 3

キャラの魅力 ★☆☆☆☆ 1

衝撃度    ★★☆☆☆ 2

おすすめ   ★★★☆☆ 3

2024年10月21日月曜日

『廃遊園地の殺人』 斜線堂有紀著 感想・レビュー 主人公は廃墟マニア

廃遊園地の殺人 (実業之日本社文庫) 

失われた夢の国へようこそ

廃墟×遊園地

ノスタルジックを誘うめっちゃ最高の組み合わせ。

マスコットキャラが園内を闊歩しターゲットを殺害するパニックミステリではない。

次作の発売が決まっているので眞上(まがみ)にまた会える。

廃遊園地

コンビニアルバイト店員なのに、高身長で運動神経が良くスペックが高い。

紙書籍には園内パンフが付いていて、これが割と遊び心あって良かった。


あらすじ


20年前、巨額のマネーが動いたテーマパーク・イリュジオンランドは、プレオープン中に起きた銃乱射事件のため閉園に追い込まれた。

犯人は自殺。

時が経ち、資産家・十嶋庵(としまいおり)はかつての夢の国に9名を招待する。

招待を受け、廃遊園地へと足を運んだ眞上永太郎(えいたろう)を待っていたのは、『このイリュジオンランドは、宝を見つけたものに譲る』という十嶋からの宝探しゲームだった。

過去に囚われた招待客たちは宝探しを始めるが、殺人事件が起きてしまう。

わざわざ着ぐるみ姿で串刺しになった遺体が意味するメッセージとは?


ネタバレ感想

クローズドサークルなので登場人物が多い。

前半はこの人誰だっけと思いながら巻頭のキャラ紹介ページと照らし合わせながら読んだ。

後半、眞上のスペックの高さに驚く。

容姿のことは触れていないから分からないけど、うんちくが多くてまあ最初は好かれないだろうな。

『ミステリと思うこと勿れ』の整(ととのう)みたい。

彼の実父の謎を残したまま次作への予告。

もちろん読みたい。

全編リライトした文庫版だがこの文体合ってるのかなという箇所がいくつかあって、私の理解力不足なのか分からないけど気になった。

走屋(そうや)くんはかわいそう。

推理編では納得できない所もあった。

殺人が凝り過ぎてよく分からんかった。

腕取って付けてとか。

傷もミスリード狙いすぎてる感。

乱射事件起こすよりもっと他になかったのか、村を守りたい彼女を守りたい思いが強すぎたのかなあ。

だけど、イリュジオンランドの経営陣の実態が酷すぎた。

もっと早く暴いて欲しかったなあ。

藍郷(あいざと)のキャラ良かった。

私が勝手に呼んでいる斜線堂さんの『恋』の三部作。

あんな感じの本また書いてくれないかなあ。

このテイストの作品が先生本来のスタイルなのかもしれないが。


『廃遊園地の殺人』私の評価は★3

ストーリー  ★★★☆☆ 3
キャラの魅力 ★★★★☆ 4
衝撃度    ★★★☆☆ 3 
おすすめ   ★★★☆☆ 3

2024年9月9日月曜日

『罪びとの手』天祢涼著 感想・レビュー タイムリミットは96時間、4つの謎を解き明かせ

罪びとの手 (角川文庫)  


家族愛か復讐か

AID(配偶者間人工授精)に触れている作品。


天祢涼(あまねりょう)さん、初読みの作家さん。

「殺したか」の呟きにどんな意味が?

伏線と疑惑が絡むミステリ小説。


あらすじ

川崎区の廃ビルで身許不明の中年男性の遺体が酔っ払いたちに発見される。

事件性なしと早々に判断されたが、刑事の滝沢圭(たきざわけい)は引っかかりを覚えた。

死亡推定日時と遺品の壊れた腕時計が示す日付とのズレに事件性を疑っていた。

ゴリ押しで解剖に回すが、そこでも事件性なしと言われる。

廃ビルイメージ

そこに、遺体を引き取りに来た葬儀屋・御木本悠司(みきもとゆうじ)が、自分の父親だと申し出る。

さらに、遺体を目にした悠司が「殺したか」と呟いたいう証言を得た滝沢は、奇妙な偶然で片付けるには説明がつかないと踏む。

果たして本当にその遺体は悠司の父親なのか。


ネタバレ感想

読みやすい文章だった。

キャラの印象は、悠司が微笑みを絶やさないキレ者。

ウェディングプランナーの兄の昇一(しょういち)はおしゃれだけど、バカそうに見えた。

長岡姫乃(ながおかひめの)はクールビューティで女性受けが良いキャラだと思う。

悠司が黒幕?という疑惑に駆られ、刑事、昇一、中守(なかもり)、姫乃視点でストーリーは進む。

いやーそのオチはちょっと納得いかないなあが正直な感想。

謎が分かるとちょっと騙された感あってうーん、それはないわー。

何度も違うって書いてたよね(笑)

でも途中まではめっちゃ良かった。

悠司と姫乃と伴藤(ばんどう)さんでずっと御木本葬儀社を守ってほしい。


『罪びとの手』私の評価は★3

ストーリー ★★★☆☆  3

キャラの魅力★★★☆☆  3

衝撃度   ★★☆☆☆  2

おすすめ  ★★★☆☆  3

2024年6月24日月曜日

『ティンカー・ベル殺し』小林泰三著 感想・レビュー 本当は残虐なピーターパン

ティンカー・ベル殺し/創元推理文庫 

ピーターパンのイメージが崩れる

でも原作はこっちが本来の姿。

ピーターパンのヒーローイメージはディズニーさんマジックでした。

グロ描写ありのため、耐性ない人にはおすすめしません(笑)

そして『不思議の国のアリス』の帽子屋たちの永遠のお茶会の会話劇が苦手な方もだめです。

メルヘン殺しシリーズ第4弾。

頭がおかしくなる独特な世界観を持つ。


あらすじ

妖精なんて、虫と同じと考えるピーター・パン。

井森建(いもりけん)は今度はネヴァーランドの世界へ迷い込む。

小学校の同窓会に参加するため帰省した井森たちは、大雪のため旅館に足止めを食らってしまう。

夢の中で井森は〈蜥蜴のビル〉となって、ピーター・パンと妖精ティンカー・ベル、ウェンディと子供たちに出会う。

ピーターは無邪気さゆえに殺人を犯すサイコパスだった。

そして、同窓会のメンバーたちも井森と同じネヴァーランドの住民がいた。


ネタバレ感想


現実世界では旅館を舞台にしたクローズドサークル。

だけど常識が全く通用しないから予測不可能。

このシリーズでは、現実世界と夢の世界のキャラクター同士がリンクし、精神的に影響し合い情報を共有します。

だけど、行動は止めることができず、夢の世界(アーヴァタール)の影響力が強い。

アーヴァタールが生きている限り現実世界で何度死んでも生きているんだから。

逆にアーヴァタールが死んじゃったら現実も=となってしまう。

割と早くピーター・パンが誰のアーヴァタールかは分かります。

だからって彼の悪行を現実世界で止めることができないのが歯がゆい。

ピーター・パンは、無邪気な子供で罪悪感の欠片を全く持ち合わせていない

おまけに短絡的ですぐ人を殺します。

ティンカー・ベルの殺され方が残酷だった。

犯人は分かり切っているのになぜピーター・パンが犯人探しをするの?と疑問のままストーリーは進む。

人魚の仲間殺しとかえぐい。(人魚姫では仲間思いだったはず)

そして、言葉のマジックや思い込みも手伝って見事に騙された。

無限ループに陥った○○は気の毒すぎる。

だけどネヴァーランドの○○のアーヴァタールは幸せだからいいのか。



『ドロシィ殺し』

そして、この『ティンカー・ベル殺し』

その後、『かぐや殺し』が続く予定でした。

順番通り読む方が分かりやすいかも。

続き読みたかったなあ。

小林泰三さんのご冥福をお祈り申し上げます。

『ティンカー・ベル殺し』私の評価は★3

ストーリー ★★★☆☆ 3
キャラの魅力★★★☆☆ 3
衝撃度   ★★★★☆ 4
おすすめ  ★★★☆☆ 3







2024年5月26日日曜日

『ゴールデンタイムの消費期限』斜線堂有紀著 感想・レビュー 才能の枯渇

                      ゴールデンタイムの消費期限(角川文庫)


若き天才のリサイクル計画

これまで斜線堂有紀さんの作品は、『私が大好きな小説家を殺すまで』 『恋に至る病』などの共依存系しか読んだことなかった。(ちなみにどちらの作品も大好きです)

だから何か起きそうって思ったし、クローズドサークルのミステリ作品かなと先入観を持ったけど違ってた。

恋愛要素ほぼなし。

世間から見放されつつある元天才たちが、それぞれ自身を見つめ、必死に努力するキャラたちの交差を描いている瑞々しい作品。

読後感も良い近未来青春ストーリー。


あらすじ


小学生で小説家デビューし、もてはやされた綴喜文彰(つづきふみあき)は、4年も新作を発表出来ていない。

焦燥感に駆られ、将来を悲観し始めた高校三年生の春、綴喜は編集者から『レミントン・プロジェクト』への参加を打診される。

綴喜が連れていかれた山奥の巨大な施設は、国が出資し、若き天才たちを集め交流を図る11日間のプロジェクト。

そこに料理人、ヴァイオリニスト、映画監督、日本画家、棋士の、若き五人の天才たちがいた。

全員、一度は天才だともてはやされたものの、徐々に前線から脱落していった者たちだった。

そして、このプロジェクトとは、人工知能「レミントン」とのセッションを通じた自分たちの「リサイクル計画」だった。


登場人物


綴喜文彰 天才小説家。

真取智之(まとりともゆき)天才料理人。綴喜と同じ「ギフテッドチルドレン」出演者。

秋笠奏子(あきがさかなこ)国内の賞総なめのヴァイオリン奏者。

秒島宗哉(びょうしまそうや)帝都藝大三年。専攻日本画。

御堂将道(みどうまさみち)デビュー戦から二十七戦無敗の最年少棋士。

凪寺エミ(なぎでらえみ) 18歳。映画監督。「世界のナギデラ」の一人娘。



ネタバレ感想


全員、元天才。

飽きられたら終わり。

プレッシャー。

私は凡人なので天才側の気持ちは今まで知る由もなかったけれど、一度結果を出した人間はこんな悩みがあるのかと分かった。

そこで、各分野の元天才を集めたレミントン計画。

❝レミントンは四十六万冊の小説を学習し、ベストセラーになる小説の展開を把握❞

1日1冊小説を読んでいる綴喜にも驚きだが、レミントンはおよそ人間が人生何周したって追いつかないくらいの気が遠くなるような数字の本を簡単に読破してしまう。

レミントンの言うとおりに書けばベストセラー間違いなし。

もう、これは現実に起きているかもしれない。

AIのイラストが普通に出回っているし。

レミントンに反発する人物、すんなり受け入れる人物、悩む人物、それぞれ意見をぶつけながら、11日間で人生を見つめ直していく。

殺人事件が起きたり、好きになり過ぎて苦しいとかそんな展開はないけれど、ラストまで面白く読めた。

それぞれの活躍がもっと見たいし交流も見たい。

私は秒島さんが良かった。

意外だったのが綴喜の従兄弟と秋笠。

凪ちゃんの父親と秋笠の母親には腹が立った。

後者は、私が今まで読んだ斜線堂さんの作品に出て来そうな母親像。



『ゴールデンタイムの消費期限』私の評価は★3


ストーリー   ★★★☆☆  3
キャラの魅力  ★★★★☆  4
衝撃度     ★★★☆☆  3
おすすめ    ★★★☆☆  3








2024年5月17日金曜日

『剝製の街 近森晃平と殺人鬼』樹島千草(きじまちぐさ)著 感想・レビュー 人の根底にあるもの


         剝製の街 近森晃平と殺人鬼(集英社文庫)


耽美で禍々しい芸術

完全にカバー買いです。

この作品の剥製のイメージは蠟人形っぽい感じ

装丁は西村弘美さん。

イラストレーション/人さらいさん

とありましが、「人さらいさん」は、調べても分からなかったです。

タイトルがちょっとダサい感じがしますが、イラストに惹かれた。

過去の事件を蒸し返すような事件が主人公の周りで起きてしまう。

過去も現在も、犯人の掌で踊らされていただけなのか。


あらすじ
ミノタウロス


失踪した人が半年後に剥製として発見される怪事件が3件起きた。

3件目の被害者の妻である秋月瑠華(あきづきるか)が、小さな探偵事務所を営む近森晃平(ちかもりこうへい)へ紛失したスマホを見つけてほしいと依頼。

そのことがきっかけに、晃平は思い出したくもない過去の事件との関連を発見していく。

晃平は、11年前に起きた「キャトル事件」で両親を殺害された被害者遺族であった。

それは、死体から臓器の一部を取り出し、手のひらに乗せるという常軌を逸した猟奇的事件だった。

だが犯人は獄中自殺していたはずであった。

ネタバレ感想


主人公の幼馴染である美貌の青年慧(けい)は、顔に似合わず毒を吐く。

美貌すぎるゆえに、周りで争いごとが起きてしまうという人物。

もし、映像化するとしたら慧は、岡田将生さんが似合いそう。

カバー絵は、慧だろうな。

主人公は実際ミノタウロスの犯人を見ているわけですが、あんなもん見たら腰抜かす。

加害者より被害者の人権が守られない世の中本当にどうかしてる。

作品で登場するミラーハウスですが、私は遊園地のアトラクションで迷子になって出れなくなったことがあります(笑)

右も左も分からないし、天井も床も鏡、鏡、鏡で軽くパニック状態になりました。

人形劇の開催場所が、ミラーハウス。

それだけで禍々しさが伝わる。

なぜ、同じ町で起きた3件の剥製事件の証拠が全然見つからないのか。

ミラーハウスなんか最初の方に調べると思うんだけどな。

ましてや2階なんかも。

犯人には協力者がいる──と晃平は推理。

いや、警察もすぐ分かるやろ(笑)

わりと序盤から誰が犯人かすぐ分かった。

協力者も。

でも、すっきりしない終わり方。

なぜ、被害者遺族だったはずの犯人は闇落ちしたのか、その過程をもっと知りたい。

栗原(くりはら)は、自分が特別だと思い込んでいる中途半端なサイコパス。

3人目の被害者もなぜ選ばれたのかよく分からない。

スマホが手に入ったから?

●●は、どうやってキャトル事件の犯人を操ったのか、そして、剥製魔が見つかるようなアドバイスを晃平にしたのかその心理が分からない。

晃平の様子を観察したいという単純な遊び心なのかな。

にしても、過去彼の側にいて彼の心を救ったのは事実だし、色々分からないことだらけ。

完全に●●はサイコパスなんだろうけど、彼がどう思ってなぜそんな行動に出ていたのか、もっとはっきり描いて欲しかったなー。

その辺描き切れていれば、文句なしに面白い作品でした。


『剝製の街 近森晃平と殺人鬼』私の評価は★3


ストーリー  ★★★☆☆  3
キャラの魅力 ★★★☆☆  3
衝撃度    ★★★☆☆  3
おすすめ   ★★★☆☆  3










2024年4月29日月曜日

『九度目の十八歳を迎えた君と』浅倉秋成著 感想・レビュー どうでもいいことに一生懸命になれる高校時代


不器用な青春時代

みんな夢を諦めたわけじゃない、今できる最良の跳躍をするんだ。

社会人になった今なら分かることだけど、あの頃気の利いた言葉が全く出てこなかった。

これは、タイムループ作品ではないしファンタジーでもない。


浅倉さんの伏線が光る青春ミステリ作品。


あらすじ

そこそこの印刷会社で営業マンとしてのノルマを熟す間瀬(ませ)は、通勤途中のホームで、同級生の姿を目撃する。

彼女は、僕が高校時代に恋をした二和美咲(にわみさき)だった。

だが、二和は制服に身を包み、見た目もあの頃のまま、未だ十八歳として高校に通っていた。

僕と二和は同い年。

本来ならば30歳目前であるはずだった。

なぜか周囲の人たちは彼女のその姿を違和感なく受け入れる。

僕は、現在の彼女の同級生と協力し、 原因を探っていく。


ネタバレ感想

設定に無理があるし、ん?となる箇所もあるけれど、その辺はさすが浅倉秋成さん、ラストまで読ませる筆力がありました。

間瀬の原因とか、二和さんの返事とかうやむやで終わってしまったが、全体を通して自身の青春時代とリンクさせたりして面白かった。

間瀬が彩雲に入れた夢、一番知りたかったな。

戻って来た彩雲を手に取るシーン、ちょっと泣きそうになった。

彩雲

同級生たちがそれぞれ大人になっていてみんないいやつ。

二和が一番掴みどころない感じ。

『教室が、ひとりになるまで』と違って、キャラが魅力的なのが良い。

真鍋と教頭先生が好き。

『サニー』と呼ぶのが笑っちゃうけど、ほうじ茶と和菓子を持って新聞部に居座る教頭先生がかわいい。

“青春の空回り"うまいこと言うなあと感心。


『九度目の十八歳を迎えた君と』私の評価は★3

ストーリー  ★★★☆☆  3
キャラの魅力 ★★★★☆  4
衝撃度    ★★★☆☆  3
おすすめ   ★★★☆☆  3

2023年11月15日水曜日

『愛に殺された僕たちは』野宮有著 感想・レビュー 共依存計画殺人

愛に殺された僕たちは

絵日記殺人──全ては毒親から逃れるための

願ったのはそう遠くない街へ2人で遊びに行くこと。

そんなことも許されない2人の哀しい殺人計画の顛末が描かれた衝撃の青春小説。


あらすじ


高校生の灰村瑞貴(はいむらみずき)は、義理の母と彼女の恋人から虐待されていた。

彼は父と同じ、多額の保険金を賭けられいる。

同じクラスの逢崎愛世(あいさきまなせ)は、女子からいじめの標的にされていた。

包帯で身を包む彼女は、父親の歪んだ愛情に苦しめられ、過度に束縛されていた。

夕刻の公園のブランコで、2人は言葉を交わす。

そして、廃ビルで見つけた絵日記を使い、殺人鬼に親たちを殺させる計画を立てた。

小さな町で次々と起こる不可解な事件。

身勝手な愛に苦しめられていた2人の行く末は?


ネタバレ感想


2人の家庭環境が劣悪すぎる。

愛世が異常な父親の愛に殺されるというのは分かったが、瑞貴がやたら愛に殺されるっていう文面が出てきてその辺よく分からなかった。

側で守ってくれるはずの親が異常なので、他人に助けを求めることができなかったのが悲しい。

2人とも親から離れて暮らす選択もできたはずだったのに。

夕焼けやブランコなど幻想的な雰囲気と真逆な会話内容の対比が特徴的。

事細かに情景描写が描かれているが、2人の容姿の特徴はなかった。

恐らく2人とも、どこにでもいるごく普通の高校生なんだろう。

絵日記の設定がジョジョのオインゴボインゴを彷彿させたのは私だけではないはず。

絵日記殺人の描写からストーリーが格段に面白くなった。

ラストは余韻を残す形で終わる。

逢崎の選んだ道は、瑞貴と共になんだろうな。

巻き込まれた他の人がかわいそう。

読後すっきりしたい方にはお薦めできないなあ。

タイトルがちょっと重いかな。

2人は出会って良かったのかな。

『愛に殺された僕たちは』私の評価は★3


ストーリー  ★★★☆☆ 3
キャラの魅力 ★★☆☆☆ 2
衝撃度    ★★★★☆ 4
おすすめ   ★★☆☆☆ 3




『仮面』 伊岡瞬著 感想レビュー 仮面の下の秘密

  仮面 (角川文庫) ディレクシアを知る 初読みの作家さんでした。 ページ数は多いけどすぐに読み終えました。 グロ描写ありです。 あらすじ 読字障害というハンディキャップを抱えながらもアメリカ留学の後、情報番組を中心にメディアに露出する三条公彦(さんじょうきみひこ)。 知的で爽...