2023年2月28日火曜日

『今際の国のアリス』麻生羽呂  感想・レビュー はあとのなな「かくれんぼ」が難しすぎる

 生き残るためにはゲームに勝つしかない

読んだきっかけは、「不思議の国のアリス」が好きだから。

不思議の国のアリスに登場するキャラの名前が使われているのが嬉しい。

ずっといると思っていたキャラが退場するなど、展開が読めず面白い。

参加するまでどんなゲームか分からず、頭脳戦、心理戦、体力戦、協力戦がトランプに準えてる設定がすごい。

誰にも感情移入しないけれど、自分だったらとか考えるの楽しい。

読み応えある漫画です。


あらすじ

高校生の有栖良平(ありすりょうへい)は、怠惰的な生活を送っていた。

ある日、いつものメンバー(カルベ、チョータ)で遊んでいたところ、巨大な花火を目撃する。

気付いた時は、周囲の人間は消えており、強制的に理不尽な「げえむ」に参加させられる。

ただし、「げえむ」に「くりあ」しないと待つのは死のみ。

ビザ切れはこんなイメージ

アリスの監察力と頭脳にいち早く気づいたカルベは、彼を生かすべく行動に出る。

果たして、この世界は何なのだろうか?

展開が読めないサバイバルデスゲーム


ネタバレ感想

一番印象に残ったのは、難易度7(はあとのなな)げえむ「かくれんぼ」

狼が負けると思うよね
参加人数無制限だけど、アリスたちは仲間4人で挑む。

るうるは、おおかみ1 VS ひつじ3 でかくれんぼをし、最後に狼だった人が勝つという最悪のゲーム。

アリスは全員生き残れる方法を考えますが、心が壊されるゲームだった。


他は、

♠5「おにごっこ」 

J「どくぼう」  が印象に残ってる。


キングクラスが出てきてさらに面白さは増し、キューマは普通に良い人だった。

この先にミラがいそう
ミラとの対決は少しだるく、ラストのページの割き方は微妙。

でも全体的には面白かった。

うさぎが強い女の子だったのに、うざキャラになってしまったのは残念。

私はずっと意志を持って強かったアンが好きだ。

ヤバとパンダ、チシヤのその後が見たい。

ツッコミどころはあるけれど、ネトフリも面白かった。

殆どのキャラがイメージ通りなので見応えある。

スピンオフ作品『今際の路のアリス』は、主人公は変わりますが世界観そのままなので良かったら。

大人になったアリスの話が読める『今際の国のアリスRETRY』もおすすめ。


『今際の国のアリス』私の評価は★4

ストーリー  ★★★★☆ 4
キャラの魅力 ★★★☆☆ 3 
衝撃度    ★★★★☆ 4
おすすめ   ★★★★★ 5


2023年2月26日日曜日

『禁じられた遊び』清水カルマ 感想・レビュー 映画化決定,分かりやすいホラー作品

 嫉妬心の最終形態

この小説で思い浮かべたのは、無垢で幼い少女と少年が次々とお墓を作る映画「禁じられた遊び」と、スティーヴンキング原作で自ら脚本を手掛けたとされるホラー映画「ペットセメタリー」(1989年版)。

清水カルマさんの『禁じられた遊び』は、2つの作品をうまく融合させて読みやすかった印象。


簡単なあらすじ

伊原直人(いはらなおと)は、美しい妻の美雪(みゆき)と可愛い一人息子の春翔(はると)のためにマイホームを購入し、幸せな日々を送っていた。

だが、妻の美雪が居眠り運転のトラックに轢かれて死亡し、絶望する。

現場に一緒にいた春翔の手には美雪の指が握られていた。

以前、直人は息子に、トカゲの尻尾を土中に埋めると生き返ると悪戯心で教えたため、春翔は母の指も同じように庭に埋めた。

それから春翔は一心不乱に土の前で呪文を唱え続ける。

そのころ、フリーのビデオカメラマンである倉沢比呂子(くろさわひろこ)の周りで、5年前と似たような奇怪な現象が起きていた。


ネタバレ感想

比呂子がビデオカメラマンという職に就いているため、行動力もあって強く逞しい。

直人を優先するところ以外は応援したくなる。

反対に直人にはずっといらいらさせられた。

ペットの犬への仕打ちはほんと許せない。

彼は結局、妻も春翔も比呂子のことも守れてない。

柏原(かしわばら)の方が断然頼もしいし、彼と付き合ってほしい。

それにしても心の浮気だけで、執拗に比呂子を襲う美雪が怖すぎた。

ストーリーはしつこいけど続きが気になったし、怖かった。

緑の液体、腐臭、虫とかの表現がぞわっとした。

比呂子はこの後、大丈夫なのかなって思った。

映画はラスト変えてほしいなあ。


『禁じられた遊び』私の評価は★2

ストーリー  ★★☆☆☆ 2  
キャラの魅力 ★☆☆☆☆ 1
衝撃度    ★★★☆☆ 3
おすすめ   ★★☆☆☆ 2








2023年2月25日土曜日

『吐息雪色』(といきゆきいろ)綾崎隼 感想・レビュー 姉妹愛が恋を結ぶミステリー

ただ彼の幸せを思う

「花鳥風月」シリーズ、今回は「雪」です。

ストーリーは独立しているので、単体で読んでも理解できます。

ですが、『初恋彗星』(星乃叶〈ほのか〉登場)はこの作品の前に読んで欲しい。

イラストは、ワカマツカオリさん。

ドーナツを咥える真奈のイラストが好き。

「花鳥風月」シリーズ、『蒼空時雨』(風夏<ふうか>登場)『旋律月下』も書いてますので興味があれば。


簡単なあらすじ

 結城佳帆(ゆうきかほ)は、ボロアパートで引きこもりの妹、真奈(まな)と住んでいる。

手がかかる妹だが、佳帆は真奈のことが大好きだ。

ある日、図書館で佳帆はある男性に目を奪わる。

図書館に似つかわしくない彼が、後に館長の舞原葵依(まいばらあおい)だと知る。

彼に恋をしていく佳帆だが、最愛の妻が失踪したというデリケートな事情を知り、心を痛める。

彼の再生だけを願おうと決めた佳帆だが、彼女にも哀しい秘密があった。


ネタバレ感想

館長は結婚していますよと忠告されたにも関わらず、彼を探しに図書館をうろつく佳帆の行動は理解できない。

さらに彼が利用すると思われるコンビニで何時間も待ち伏せしたり、家に押しかけたりとか。

奥さんが失踪中だからって、図々しいし通報案件すぎる。

その辺が読んでてすごく引っ掛かったけど、佳帆の事情を知るとなるほどと納得したし、泣けてきた。

二度読んでみたくなるストーリー。

『吐息雪色』私の評価は★3

ストーリー  ★★★☆☆ 3
キャラの魅力 ★★☆☆☆ 2
衝撃度    ★★★☆☆ 3
おすすめ   ★★★☆☆ 3




『旋律月下(せんりつげっか)』綾崎隼 感想・レビュー ifを考えずにはいられない

初恋を引きずる男性が主役

「花鳥風月シリーズ」のミステリーです。   

イラストは大好きなワカマツカオリさん。

シリーズは順番通りに読まなくても単体で完結しているので大丈夫。

ちなみに私はこの作品から読んで、舞原って何だ?と思ったけど理解できました。

同シリーズの『蒼空時雨』『吐息雪色』も、良かったら。


簡単なあらすじ

転校生の望月洋平(もちづきようへい)は、クラスメイトの舞原月乃(まいばらつきの)に恋をする。

放課後、図書室で静かに本を読んでいる月乃と、少しずつ親しくなっていく洋平。

教室での彼女はちょっと近寄りがたいけれど、図書室では違っていた。

彼女が難関レベルの美浜高校を受験すると聞いて、必死で勉強する洋平。

そんな時、月乃が双子だと知る。

受験前に父の転勤が決まり、彼女と離れ離れになってしまうが、きっと会えると信じていた。

果たして洋平の恋の行方は?


ネタバレ感想

だいぶ端折りますが、まとめるとこんな感じ。

if side.A …静岡の国立大学に通う洋平。

          月乃は大阪大学。

          洋平と同じ大学に今宵(こよい)がいた。

             今宵の家に遊びに来た月乃と連絡先交換し、やり取りが日常化する。

         大学4年、月乃に告白し交際スタート。

         新潟での遠征就活中、偶然月乃に遭遇し違和感を覚える。


if side.B …浪人を経て大阪大学に合格、会いたかった舞原月乃と再会。

          サークル活動で怪我をし、熊本で入院している彼女の元へ駆けつける。

          それから1年後に告白し、交際スタート。

          月乃との結婚は婿養子が条件。

          彼女の苗字が舞原(東日本の財界を牛耳る一族)だと両親に話す。


ifの使い方、そう来たかー、すっかり騙されました(笑)

洋平の今宵に対する態度やしつこさは好きになれない。

月乃と今宵、家族でも間違うほど見た目はそっくりなのに、性格は正反対。

洋平が本当に好きになった相手は今宵だと思うのに恋愛ってうまくいかない。

一途な人は素敵だと思うけど、この2人はしつこい(笑)

どのキャラも好きじゃなかったけどストーリー構成は好き。

『旋律月下』私の評価は★2

ストーリー  ★★★☆☆ 3
キャラの魅力 ★☆☆☆☆ 2
衝撃度    ★★★☆☆ 3
おすすめ   ★★☆☆☆ 2 


2023年2月24日金曜日

『いなくなれ、群青』河野裕 感想・レビュー 自身のレゾンデートル

階段島のイメージ

なぜこの不思議な島にやって来たのか?

タイトルが素敵すぎた。

哲学っぽい語り口が特徴かな。

およそ2000人が暮らしている階段島が舞台。

存在価値(レゾンデートル)を問うストーリー。

簡単なあらすじ

階段島で暮らす七草(ななくさ)は、島に来る前の記憶がない。

この島にいる住民はみんなそうだ。

店が少ないことは不満だけど、圧倒されるような星空を眺めることができるし、事件らしい事件も起きない。

島から出ることはできないけれど、それなりに平穏な日常を過ごしていた。

だが、七草は、こんな島で会うべきじゃない人物に再会してしまう。

真辺由宇(まなべゆう)、彼女に会ったせいで、七草の生活は変わっていく。

僕たちは階段島になぜいるのか?

真相を知るべく、七草たちは奔走する。

ネタバレ感想

真辺由宇みたいな女の子を好きになったら、男の子はみんな振り回されそう。

誰よりも真っすぐで、凛々しく、階段島に来るべきじゃない女の子。

❝この物語はどうしようもなく、彼女に出会った時から始まる❞

みないに、七草の言い回しがちょっと独特だし、共感しにくい所がある。

ピストルスター
全体的にふわっとしたストーリーで説明が難しい。

幻想的なミステリーとしては面白い。

しかもこの作品、映像化してます。

まとめるの難しそう。

でも、横浜流星さんと飯豊まりえさんが主演なので機会があれば、見てみたい。

『いなくなれ、群青』私の評価は★3

ストーリー  ★★★☆☆ 3
キャラの魅力 ★★☆☆☆ 
衝撃度    ★★☆☆☆ 
おすすめ   ★★☆☆☆ 






2023年2月23日木曜日

『暗闇の非行少年たち』松村涼哉 感想・レビュー 本音が言える,居心地の良い場所を探して

 誰かに必要とされたい

『15歳のテロリスト』著者さんの作品。

1人が怖い。

1人になるのを恐れて話を合わせて。

ある日、仮想空間への招待状を受け取った。

誰が何のために作った場所か分からない。

でもいつしかそこが心の拠り所となっていった。


簡単なあらすじ

18歳の水井ハノは、少年院から退院したばかりだ。

更生を誓うが、斡旋された就職先ではうまくいかず、再び昔の仲間が集う場所へと戻って行く。

そんな時、「ネバーランドへの招待状」と記された紙切れを受けとる。

訝しながらも指示通りにゲームをインストールする。

アバターを作ったハルは仮想世界へと飛んだ。

果たしてハルの行く末は?


ネタバレ感想

ハル視点だけではなく、ネバーランドへ招待されたメンバーの視点からも描かれるのが面白い。

そして、彼らの意外な共通点にも注目。

罪は重く、色々考えさせられる。

心を入れ替えて更生しようと頑張る人もいるが、根っからの悪人もいる。

難しいテーマだ。

登場するキャラに未成年が多いからわざとなんだろうけど、総じて考えが甘いし、人を信じすぎる。

家庭環境が悪い人間は、全て犯罪者にならない。

カノンちゃんが犯罪に至るまでの過程が一番重かった。

出会う人間で人は変わる。

本音を吐き出して救われるゲームは現代には必要かも。

❝俺たちは賢くない

賢くない人間のくせに「自分の幸せはこれしかない」とか勝手に決めつけるな❞

ショウのこのセリフが突き刺さりました。

櫂は良い人間に出会えたのに、彼は根っからの悪だった。

『15歳のテロリスト』の衝撃とまではいきませんが、未成年の犯罪について考えさせられる作品でした。

『暗闇の非行少年たち』私の評価は★3

ストーリー  ★★★☆☆ 3
キャラの魅力 ★★☆☆☆ 2
衝撃度    ★★★☆☆ 3
おすすめ   ★★★☆☆ 3





2023年2月22日水曜日

『アリス殺し』小林泰三 感想・レビュー メルヘンは本来残酷なのかもしれない

アリスの不条理な世界

2014年「啓文堂書店文芸書大賞受賞」作品

私は『不思議の国のアリス』が大好きだ。

出てくるキャラみんなおかしくて、予想も付かない展開。

その反面、果てしなく妄想が広がるし現実逃避もできる。

小林泰三さんの小説は玩具修理者』の描写がグロすぎて途中で読むのを止めてしまう程でした。

『アリス殺し』も残酷でグロいですが、アリス好きなのでなんとか許容範囲にしました(笑)

簡単なあらすじ

院生の栗栖川亜理(くりすがわあり)は、不思議の国の夢をよく見る。

ハンプティ・ダンプティが塀から落ちた夢を見た後、大学では玉子と呼ばれていた博士研究員が屋上から墜落死していた。


亜理が、生牡蠣を喉に詰まらせてグリフォンが窒息死する夢を見ると、牡蠣を食べた教授が急死する事件が現実に起きていた。

どうやら夢の世界と現実はリンクしているらしい。

不思議の国では、三月兎と頭のおかしい帽子屋がアリスを容疑者にする。

果たして事件の真相とは?

不思議な不思議なミステリー。


ネタバレ感想


ほんまややこしい(笑)

不思議の国のアリスの名物である堂々巡りの会話も好きだからこそ許せる。

現実世界(地球)と不思議の国の世界がリンクし、お馴染みのキャラが登場。

どのキャラが誰だろと当てはめながら読んでいきます。

事件の真相に驚いたけれど、それ以上に井森の退場に凹んだ。

現実の井森は、不思議の国と違いすぎる。

文体にすごく癖があるけど、ハマると面白い。

吐き気をもよおすほど気持ち悪い表現があるので、耐性ない人はお薦めしない。

この作品、メルヘン殺しシリーズとしてシリーズ化しています。

ただ、作者さんがお亡くなりになったので4作で完結のようです。

まだまだ読みたかったです。

『アリス殺し』私の評価は★4

ストーリー  ★★★★☆ 4
キャラの魅力 ★★★☆☆ 3
衝撃度    ★★★★☆ 4
おすすめ   ★★★☆☆ 3








2023年2月21日火曜日

『今際の路のアリス』(全8巻)原作:麻生羽呂、作画:黒田高祥 感想・レビュー ❝人生は80年、強制参加のクソゲー❞

 今回はトランプを所持して目覚める

今際の国のアリス』の続編にあたる作品。

スピンオフ的なストーリーで、麻生羽呂さんは今回は作画を別の方に託しています。

『今際の国のアリス』同様、世界観は変わらず面白いし、読んで損はない。

常に心理戦が伴っているような展開でした。

清水寺

ポジティブな女子高生が主役です。


簡単なあらすじ

荒れ果てた京都で目覚めたキーナは、トランプを握りしめていた。

周囲を彷徨っていると、清水寺で小島亜里朱(こじまありす)と出会う。

花火が打ちあがり、その場所まで駆け付けた2人は、同じように記憶を失った男女9人がその場所に集まっていた。

話し合いの結果、東京を目指そうと決めたが、1人殺されてしまう。

疑心暗鬼の中、一部を除いたメンバーで東京へ向かう。

果たして無事に東京にたどり着けるのか、そして元の世界に戻れるのか?


感想・レビュー

前作より目を背けたくなるシーンが多め。

少ない人数なのにくせ者が多い上に殺人犯が紛れ込んでいるし、敢えて狂わされた人物もいます。

反面、精神的に成長した人物もいます。

ネガティブ思考のキーナとポジティブなアリスが対照的に描かれている。

集められた男女の選出は、偶然なのか必然か。

今回のトランプの意味は?

絶対R指定だけどこの作品もネトフリで映像化してほしい。


『今際の路のアリス』私の評価は★4

ストーリー  ★★★★☆ 4
キャラの魅力 ★★★☆☆ 3
衝撃度    ★★★★☆ 4
おすすめ   ★★★★☆ 4



『僕が電話をかけていた場所』(下)三秋縋 感想・レビュー たった一人の女の子を救いたい

僕は人魚姫と同じ運命をたどるのだろうか 

この作品は上巻である『君が電話をかけていた場所』の続巻です。

伏線は次々と回収していきます。   

水の泡イメージ

   

切なさを伴いながら。


簡単なあらすじ

陽介は、初鹿野を喜ばそうと、悪友檜原(ひのはら)から天体望遠鏡を借りるが、貸してもらう条件は彼の同行だった。

女子が1人だと怖がると思った陽介は、千草も誘い、4人で天体観測の日常が始まった。

喜ぶ初鹿野を見て満足する陽介だが、彼女が檜原に惹かれていくのを目の当たりにし、心を痛める。

こんな状態で、陽介は初鹿野と両想いになれるだろうか?

初鹿野の空白の4日間とは?


ネタバレ感想              
               

 陽 介 → 初鹿野                       

  ↑     ↓

 千 草 ← 檜 原   

天体観測は、片思いの一方通行。          

陽介は、命を懸けてまで自分を好きでいてくれた千草に対して負い目を感じず、初鹿野に夢中。

反対に檜原は、初鹿野のお見舞いにも行かなかった。

好きな人以外はどうでも良いという心情が見事。

現実ではあり得ないストーリーだけど、不思議とリアリティある世界観が描かれてる。

初鹿野が回りくどかったので、素直に思ったことを伝えた方がいいと勉強になった。

彼女の痣はどうなったのかな。

千草が救われたら良いなと思う。


『僕が電話をかけていた場所』私の評価は★3

ストーリー  ★★★★☆ 5
キャラの魅力 ★★★☆☆ 3
衝撃度    ★★★☆☆ 3
おすすめ   ★★★☆☆ 3




2023年2月19日日曜日

『いつもの朝に』(上下巻)今邑彩 感想・レビュー 家族愛を謳った作品

 完璧な兄に対し劣等感を抱く弟、カインとアベルに準えた現代のミステリー

30年前に起きた凄惨な事件。

出生の秘密が書いてあった隠された手紙。

優秀な兄と全く似ていない弟。

全てが線で繋がるとき、慟哭する。

装画は北見隆さんです。


簡単なあらすじ


聖人君主である父と、画家の母を両親に持つ兄弟、桐人と優太。

彼らは仲の良い兄弟だった。

だが、小さいころからある熊のぬいぐるみの中から、本当の父だと名乗る手紙を発見し、兄弟はすれ違っていく。

犯罪者の血は遺伝するのか?

家族は再生できるのか?

涙なくてしては読めない家族愛がテーマのミステリー小説。

ネタバレ感想


ストーリーは単純ではなく二転三転します。

上巻と下巻でガラリと変化します。

兄の桐人の選択にも涙し、弟優太の行動にも泣けます。

事実に怯え、兄弟に亀裂が生じ始める。

だが、忘れてならないのは逃げ出した優太を止めたのは兄であり、兄を救おうとしたのは優太だった。

2人を深い愛で包む母親、沙羅も素晴らしい人だった。

人に勧めたくなる本です。

ドラマ化したら見ごたえありそうだなと思う。

桐人役は高橋文哉さんに演じてもらいたいなあ。

『いつもの朝に』私の評価は★5

ストーリー   ★★★★★ 5
キャラの魅力  ★★★☆☆ 3 
衝撃度     ★★★★★ 5
おすすめ    ★★★★★ 5

『リライト』法条遥 感想・レビュー バッドエンドタイムループ

 圧倒的に無慈悲なタイムループ

タイムループのイメージ
10年前の私が現れたら完璧だった。

だが、私は現れない。

彼は助けられない。

過去が最悪の形で次々と改変されていく。

「re~」シリーズ、1作目。

あらすじ

中学2年の夏、美雪(みゆき)は300年後の未来からやってきたという転校生の保彦(やすひこ)と出会う。

だが、2人は旧校舎崩落事故に巻き込まれてしまう。

保彦の持っていた薬を使って未来へ跳んだ美雪は、彼を助ける方法を探る。
旧校舎イメージ


そして10年後、作家となった美雪は跳んでくるはずの自分を待つが来なかった。

やがて、自身が持つ記憶と現実の相違を次々に発見し、美雪は驚愕する。

保彦は果たしてどうなったのか?

なぜ過去が変わっていったのか、最も救われないSFパラドックス開幕。

ネタバレ感想

美雪が保彦と1ヶ月ほど過ごした夏の思い出が綴られます。

でも、美雪の話だと思っていたのが、実は違うクラスメイトの話だったりと混乱していきます。

さらに保彦と関わっていたクラスメイトが現実で何人か殺されており、犯人が捕まっていないという。

現代に保彦と思える痕跡が残っていたり。

読み手はかなり混乱させられるので、ややこしい。

ラストに向けて謎が解けますが、何とも言えない不快感と余韻が残る。

美雪も保彦も救われない。

帯にあった無慈悲な収束、その通りでした。

法条遥さんの小説は、バッドエンドが多い印象ですが、この作品もその通り。

好きか嫌いかと問われれば、好きな作品です。

タイムループものは、当人だけがハッピーエンドだったら良いのか?と思える作品が多いので、『リライト』は現実的かも。

『リライト』私の評価は★4

ストーリー  ★★★☆☆ 3
キャラの魅力 ★★★☆☆ 3
衝撃度    ★★★★☆ 4
おすすめ   ★★★☆☆ 3






2023年2月18日土曜日

『恋と心臓』(全10巻)海道ちとせ(かいどうちとせ)感想・レビュー 彼女しか見ていない究極の愛を描くラブサスペンス

イケメンのヤンデレ男子に愛される女子大生

子供の頃の記憶が曖昧な主人公。

主人公を洗脳し、2人だけの世界を作ろうとする交換留学生。

ヤンデレ男子が恋の相手というの設定は面白い。


簡単なあらすじ

幼馴染だと名乗る広瀬春馬(ひろせはるま)と同居することになった大学生の八木沢羊(やぎさわよう)。

彼は昔、羊の隣に住んでいたと話すが、一向に思い出せない。

空き家イメージ
(春馬が住んでいた?)

羊が誰かに狙われているような事件が度々起きる。

心配する友人たちをよそに、助けてくれた春馬に羊は次第に惹かれていく。

春馬の目的とは?

羊の幼少期の記憶とは?

春馬の黒い部分を知ったとき、背筋がぞくりとするラブサスペンス。


ネタバレ感想

春馬の胡散臭さに気付きながらも羊が彼を好きになる理由が理解できない。

羊のためを思い、彼女が子供の頃の記憶を取り戻すのを阻止していたとしても、春馬が周りにしてきた仕打ちはどうなんだろう。

イケメンだから許されるっていう展開?

性格も含めて冬弥(とうや)の方がイケメンに見える。

冬弥や早和子(さわこ)の制止を聞かず、サバサバ系女子だった羊が春馬春馬となったのは引いた。

3巻くらいまではサイコサスペンスっぽくて面白かったけれど、どんどん2人だけの世界になった後は惰性で読み続けた。

友人たちは好感が持てる。 

絵は横顔が雑な印象で、キャラの区別が付きにくい。


『恋と心臓』私の評価は★1

ストーリー  ★★☆☆☆ 2
キャラの魅力 ★☆☆☆☆ 1
衝撃度    ★★☆☆☆ 2
おすすめ   ★★☆☆☆ 2



『ROUTE END』(全8巻)中川海二 感想・レビュー 予測不能なサイコサスペンス漫画,特殊清掃員という職業

ラストの好みは分かれるかもしれない

一見何の感情もなさそうな人物がカラー表紙を飾っていますが、彼らの背景はとても切ない。

漫画にはそんな奴ばっかりいないよとばかり、イケメンと美女が多く出てきますが、『ROUTE END』は出て来ません。

何となく町ですれ違ってそうと思える平凡な容姿の人たちがばかりです。

そのため、ストーリーにのめり込みやすく、リアリティもすごくありました。

「特殊清掃員」という聞きなれない職を理解することができます。


あらすじ

特殊清掃員として働いている春野太慈(はるのたじ)の町では、凄惨なEND事件」が起きていた。

この事件は、未だに容疑者さえ絞れておらず、遺体をバラバラにしてENDの文字を作っていた。

ある日、春野は社長の橘の指示で、END事件の現場の清掃へ向かう。

腐敗した体液が染みついた床を張り替えようとした彼は、白骨化した遺体を発見する。

そして、橘とは連絡が付かなくなってしまう。

果たしてEND事件の犯人は?

橘はどこに消えたのか?

謎が謎を呼ぶサイコサスペンス。


ネタバレ感想

春野たちがなぜ特殊清掃員として働いているか、その背景を知ると胸が苦しくなる。

そして彼が出会う女刑事の五十嵐秋奈(いがらしあきな)。

彼女も春野と意外な接点が見つかりますが、彼女もまた辛い過去を背負っていました。

まず、社長の橘が謎。

カウンセラーも絡んできて、どんどんストーリーは混乱し、次から次へと衝撃を受けます。

春野と五十嵐刑事との絡みだけ、和む感じでした。

絵のタッチは女性受けしませんが、すごく面白い作品。

ただ、スピリチュアル的な解決は好みじゃなく、分からない所も多かった。

好きな人は好きかもしれないです。


『ROUTE END』私の評価は★4


ストーリー  ★★★★☆ 4
キャラの魅力 ★★★★☆ 4
衝撃度    ★★★★★ 5
おすすめ   ★★★★☆ 4

2023年2月17日金曜日

『君が電話をかけていた場所』(上)三秋縋 感想・レビュー コンプレックスを排除すれば恋は成就するのか?

現実に電話がかかってきたらこわいと思う

 夏の不可解な賭けとは?

三秋縋(みあきすがる)さんの作品は、この本が初めてです。

出てくるキャラは美少女が多いけれど、嫌みはないです。

 簡単なあらすじ

顔の右側を覆うような痣を持つ主人公、深町陽介。

彼が好きになった初鹿野唯は、完璧な容姿を持つ少女だった。

彼女は、陽介の痣を素敵だと言ってくれた。

こんな自分を好きになってもらえるわけがないと、思いを伝えないまま小学校を卒業。

中学は別々でそのまま2人は疎遠になる。

高校生になった陽介は、謎の女性と電話で賭けをすることとなった。

以後、初鹿野と陽介は思わぬ形で再会する。

再び出会った2人は元の仲良い友人に戻れるのだろうか。

それとも?

『君が電話をかけていた場所』は、前後編で、『僕が電話をかけていた場所』へと続きます。

この1冊だけでは伏線回収してないし、話がよく分からないままなので、続きを読むのお勧めします。


ネタバレ感想


陽介のコンプレックスがなくなると初鹿野との間に溝ができてしまった。

クラスメイトの千草は、陽介のコンプレックスを知らないまま彼に好意を持つ。

初鹿野の空白の4日間。
廃墟となった鱒川旅館のイメージ

彼女に痣ができてしまった理由。

泡となった人物は誰なのか。           

人魚伝説が今後どう絡んでいくかとか。

続きを読まないと何とも評価しにくいですが、青春時代を思い出し、感傷に浸れる作品です。好きな子とのやり取りで共感したり、ちょっと羽目を外したこととか。

私も星を見るのが好きですが、怖くて夜中に廃墟を訪れる勇気はないので、初鹿野さんの行動力はすごいと思った。

陽介も千草も、メンタルが強く、見習いたいところがたくさんあった。

そして度々、出てくる比喩表現におおっとなります。

❝牡丹、松葉、柳、散菊の段階を経て…❞

線香花火の説明が特に素敵だった。    


『君が電話をかけていた場所』私の評価は★3

ストーリー  ★★★☆☆ 3
キャラの魅力 ★★☆☆☆ 2
衝撃度    ★★☆☆☆ 2
おすすめ   ★★★☆☆ 3

次巻も興味があれば。『僕が電話をかけていた場所』



2023年2月15日水曜日

『ダークゾーン』(上下巻)貴志祐介 感想・レビュー 不条理な将棋デスゲーム

チェスや将棋の駒になった人間たちのバトル

簡単なあらすじ


プロ棋士の塚田が主人公。 

ある日、彼は異形の姿で目覚めるが、周囲にいた恋人や友人たちも異形と化していた。

赤の軍勢の将である塚田は、青の軍勢との戦いを余儀なくされる。

舞台は軍艦島。

軍艦島
そこで繰り広げられる異形バトル。

軍配はどちらに上がるのか?

まるでゲームのような世界観。


感想・レビュー


敵の将が現実世界での塚田のライバルという設定も面白く、将棋の駒同様、それぞれに火を噴くなど特性を持っている。

私は、貴志祐介さんの作品、『新世界より』
『クリムゾンの迷宮』『天使の囀り』『黒い家』『悪の教典』十三番目の人格 ISOLA』を読破しています。

これらに比べるとややオチと展開は弱く余韻を残さないですが、エンタメ小説としてはそれなりに楽しく読めました。

将棋をあまり知らなくても説明が丁寧なので、世界観にハマることができる。

アニメ化したら見応えあるかも。

主人公の性格はちょっと腹立つ。

軍艦島の描写説明は素晴らしく、まるでその地に行ったことあるような感覚に陥った。

『ダークゾーン』私の評価は★3


ストーリー  ★★★☆☆ 3
キャラの魅力 ★★☆☆☆ 2
衝撃度    ★★☆☆☆ 2
おすすめ   ★★★☆☆ 3 








2023年2月14日火曜日

『ノイズ【noise】』(全3巻)筒井哲也 感想・レビュー たった一人の悪が限界集落にやって来た為、ノイズが生じる

映画と漫画は別物

ネトフリで『ノイズ』を視聴した。

何これ、漫画と全然違う。

まず、設定が変わりすぎて人物に深みがなく中途半端。

刑事が抱える闇と今度こそ逃さない覚悟とか。

鈴木(小御坂こみさか)が平気で嘘がつき、犯罪を何とも思わないクソな奴だとか。

好きな俳優さんばかりだったのに、残念。

役者の無駄遣いが頭をよぎった。

私は原作コミックを読んでいて面白かったので、映画を視聴。

でも、映画→原作見てみようって人はいなさそう。

簡単なあらすじ

黒イチジクが注目され、猪狩町の救世主だと持てはやされた泉圭太(いずみけいた)の元に、怪しい男、鈴木が現れる。

彼を危険人物と判断した圭太と親友の純(じゅん)は、配属されたばかりの警官守屋(もりや)と共に、彼の元へと向かうが、思わぬアクシデントが起こってしまう。

果たして限界集落は元の平穏を取り戻せるのか?

田舎を舞台に、次から次へとトラブルが起きるノンストップサスペンス。

感想・レビュー


最初の選択さえ間違わなければというのは映画と一緒。

後にどんどん悪い方向へ。

漫画は3巻でまとまっているし、全体を通して緊張感があった。

絵のタッチは女性受けしないけれど。

娘の恵理奈との親子愛とか感動した。

純は悪い奴じゃない。

映画はもやっとしますが、コミックの方は納得いく終わり方なのでぜひ。

『ノイズ【noise】』私の評価は★4(映画は★1)


ストーリー  ★★★★☆  4
キャラの魅力 ★★★☆☆  3
衝撃度    ★★★☆☆  3
おすすめ   ★★★☆☆  3

2023年2月13日月曜日

『私が大好きな小説家を殺すまで』斜線堂有紀 感想・レビュー 共依存の悲しい恋愛の行く先

私の好きな本ベスト3

タイトルに惹かれて読んだ作品。

余韻を深く残し、梓は最後どうなったかと人によって捉え方が違うかもしれません。

簡単なあらすじ

ネグレストを受けていた梓(あずさ)が憧れていた売れっ子小説家、遥川悠真(はるかわゆうま)と出会い、救われる。

その一方、彼は才能を失いつつあった。

梓がどうして愛する彼を殺す決意をしたのか。

胸を打つ悲しいラブストーリー。


感想・レビュー

才能、嫉妬、裏切り、騙し合い、全て愛情から来る2人の行為。

どこからかすれ違い狂ってしまいます。

2人が幸せに生きていく方法はなかったのか。

もしかしたら、出会わなければ良かったのか。

映像化するならば、深夜枠で無名の俳優さんたちで、丁寧にドラマ化してほしいなと思いました。

同作家さんの『恋に至る病』の方が人気ですが、私はこの作品が大好きです。

この本を読むとき、いつもYOASOBIさんのハルジオン』が頭の中を駆け巡ります。


私が大好きな小説家を殺すまで』私の評価は★5

ストーリー  ★★★★★ 5
キャラの魅力 ★★★★☆ 4
衝撃度    ★★★★★ 5
おすすめ   ★★★★☆   4



『月の子 MOON CHILD』(文庫版全8巻)清水玲子 感想・レビュー 現代版人魚姫が壮大なスケールで描かれるSFファンタジー 

ただ好きになっただけなのに…


人間の王子に恋をした人魚姫は、魔女の力を借りて人間の姿になるが、代わりに美しい声を失ってしまう。

王子は隣国の姫と結婚し、恋に破れた人魚姫は水の泡となって消えてしまいました。

アンデルセン童話の「人魚姫」は、ざっくりと書けばこのようなあらすじ。

この童話をベースに描かれる『月の子 MOON CHILD』は、現代版おとぎ話のよう。

簡単なあらすじ


売れないダンサーのアートは、交通事故を起こす。

そのせいで記憶を失った少年ジミーを罪悪感から引き取り、奇妙な同居生活を送る。

ジミーの周りではゴーストが出現したり、壊れた時計が直ったりと奇妙な出来事が起こっていた。

ジミーの行動で地球の未来が変わってしまう?

人間と人魚たち、そして地球の運命が描かれるファンタジー。

↓ネタバレ感想↓


ベンジャミンが本当に美しく見惚れてしまいますが、人魚姫同様、好きな男性には振り向いてもらえず、切なくなります。

人魚姫(セイラ)の子供が3人という設定も面白く、関わる人間たちの関係性の変化が見応えありました。

アートに恋をしてしまったため、地球を破滅に導いてしまうベンジャミン。

セツの為に、地球を賭けて魔女と契約したティルト。

それぞれの思いが交差する切ないストーリーが、清水玲子さんの綺麗な絵によって描かれています。

  • ジミー×アート
記憶喪失のジミーと口は悪いけど世話焼きのアート、2人の日常がとても微笑ましくて好き。
  • ジミー×ショナ
ジミーの正体を知ったショナの溺愛ぶりが面白い

  • セツ×ショナ
この2人の関係が変わっていくのが良かった。恋の結末にすごく泣けた。

ヒール役であるティルトが、ベンジャミンの無邪気さに傷付いていたと知ると憎めくなる。

一番かわいそうなのはティルトに乗っ取られたギル・オウエンかも。

『月の子 MOON CHILD』私の評価は★5


ストーリー  ★★★★★ 5
キャラの魅力 ★★★★★ 5
衝撃度    ★★★★☆ 4
おすすめ   ★★★★☆ 4


『夜行』森見登美彦 感想・レビュー 一夜で読ませてしまう手腕はすごい

本屋大賞ノミネート作品

タイトルと表紙に目を奪われ、初版限定のポストカードをゲットしました。

続きが気になって気になって仕方なく、読書する時間を限りなく作って読みふけってしまった。

鞍馬の祭りの日に失踪した女性はどうなったか、早く答えを知りたくてうずうずした。

簡単なあらすじ

長谷川さんの失踪以来10年ぶりに再会した5人が、それぞれ経験した話を語る形で物語は進みます。

尾道、奥飛騨、津軽など情景描写が素晴らしく、自分もその場所に旅しているかのような錯覚に陥る。

一体長谷川さんはどこへ行ってしまったのか?

ホラー要素ありの不思議な世界観で綴られたストーリー。


感想・レビュー

初版のポストカード

いくつか話が分かれていますが、どれもえ?という感じで終わります。

結局長谷川さんはどうなったのか、はっきりした答えが分からず、もやもや感が残ります。

幻想的で不気味、ラストもすっきりしない。

途中までは本当に面白くて夢中になった。

語られる場所は本当に景色が綺麗なところなので、遊びに行ってみたい。


                 『夜行』私の評価は★2

奥飛騨

ストーリー  ★★★★☆ 4
キャラの魅力 ★★☆☆☆ 2
衝撃度    ★★★☆☆ 3
おすすめ   ★★★☆☆ 3


天竜峡

2023年2月12日日曜日

『超巨大密室殺人事件』二宮敦人 感想・レビュー リアルとゲームの境界線とは

ゲームの世界が現実を侵食していく

簡単なあらすじ

照(てる)は大学在学中に起業し、貯金30億以上を持ちイケメンだがゲーム廃人。

高層マンションのワンフロアを購入し、一人で住んでるほどの!

セキュリティは万全だけど、広すぎて寂しくないのかなと思いますがゲームの世界で生きている彼なので関係なし。

恋人が殺されたと言って発狂するがそれはゲーム内でのこと。

そんな彼に対して半ば呆れながらも付き合う友人仁菜(にな)。

現実で起きてる猟奇的な殺人事件。

そしてゲーム内の殺人とある共通点が浮かび上がる。

照はこのままゲーム廃人となってしまうのか?

ゲームが現実を侵食した世界観を描くミステリー。


感想・レビュー

ネトゲをしたことがあるならこのストーリーに出てくるワードもすんなり頭に入る。

ゲーム内で会話して仲良くなるのはリアルでもあるし、あり得ない話でもないでの無理なく楽しめた。

文章はライトな感じでホラー文庫と言いながら、怖さはありませんが読みやすかった。


『超巨大密室殺人事件』私の評価は★4


ストーリー  ★★★☆☆ 3
キャラの魅力 ★★☆☆☆ 2
衝撃度    ★★☆☆☆ 2 
おすすめ   ★★★☆☆ 3 

『恋に至る病』斜線堂有紀 感想・レビュー 誰もが魅入られる少女とは

共依存に仕立て上げられた男子高生の行く先は?

共依存をテーマにしたストーリーは、斜線堂有紀さんが一番すごいと思う。

簡単なあらすじ

人気者の女子高生の寄河景(よすがけい)。

主人公の僕、宮嶺望(みやみねのぞむ)が彼女と出会ったのは小学5年生の時。

そこから、彼は周りの人と同様、景の虜になっていきます。

時折、おかしいなと感じながらも。

この本は、いかにして景が直接手を下さずに150人以上の人生を狂わせていったかが描かれていきます。

宮嶺は景を止めることができるのか?

2人の関係は今後どうなっていくのだろうか?


↓ネタばれ感想↓

私は『恋に至る病』を初版で購入したので前知識なしに読み、すごく面白くて、ラストについてどう思ったか友人と話しました。

後に帯で『ラスト○○の衝撃』と書いてあって、ネタバレしてる、それまでの流れが面白いのにって残念に思いました。

景が怖いのは、罪悪感の欠片がないところ。

分かっていながらも、それでも景が好きという宮嶺の思いも切なかったです。

同じ共依存でも同作家さんの『私が大好きな小説家を殺すまで』は、また違った余韻を残します。

『恋に至る病』私の評価は★4

ストーリー  ★★★★★ 5
キャラの魅力 ★★★★☆ 4
衝撃度    ★★★★★ 5
おすすめ   ★★★★☆ 4


『剝製の街 近森晃平と殺人鬼』樹島千草(きじまちぐさ)著 感想・レビュー 人の根底にあるもの

耽美で禍々しい芸術 完全にカバー買いです。 この作品の剥製のイメージは蠟人形っぽい感じ 装丁は西村弘美さん。 イラストレーション/人さらいさん とありましが、「人さらいさん」は、調べても分からなかったです。 タイトルがちょっとダサい感じがしますが、イラストに惹かれた。 過去の事件...