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2023年11月7日火曜日

『不可逆少年』五十嵐律人著 感想・レビュー 手を差し伸べてくれる大人を見極めろ 

不可逆少年

生配信の殺人

 「スタートラインの後ろから走り始めたほうが、視野は広くなる。」❞

印象的だったセリフ。

殺害された大人3人は全員クソ。

少年刑務所(14歳~)

だけど。

狐のお面が印象的な少年犯罪。

そして、闇を抱えた少年たちに真摯に向き合おうとする大人が描かれた法廷ミステリ。


あらすじ

殺人犯は、13歳。
法は彼女を裁けない――。

14歳になると罰せられるから今しかない。
人の痛みが分からないAIのような少女


みんなが恋人を作ってドキドキするように、人を殺してドキドキしたい。

家庭裁判所調査官・瀬良真昼(せらまひる)は、フォックス事件を扱う裁判所に異動となる。

彼は、どんな少年も見捨てないと信念を持つ。

だが、狐面の少女が犯した殺人事件の被害者遺族、加害者家族は全員同じ高校だった。

事件の真相に迫りながら、自身の信念が大きく揺らいでいく。


ネタバレ感想


法廷遊戯より読みやすいが、読後はすっきりしない。

綺麗事で終わり過ぎてファンタジー化。

治療しても無理。

外に出したらいけない人物がいる。

少年だからって許されるのは間違いだと言ってほしかったな。

だから、主任の早霧(さぎり)の考えに共感。

ある意味妹より恐ろしい姉が逮捕されず、普通に生活しているのは恐ろしい。

その間、誰かを不幸にしているかもしれない。

漠(ばく)や茉莉(まり)はやり直せると思うが、フォックス姉妹は世の中に出してはダメだ。

姉妹の家庭環境、真昼の少年時代をもっと詳しく描いてほしかった。

周りにまともな大人がいてもフォックス姉妹は無理だと思う。

何も響いていない。

「やり直せるから少年だよ」は綺麗な言葉だけど、もやもやする。

犯罪を犯した人物より、劣悪な家庭環境で過ごしている少年少女たちを先に救ってほしいと思う。


『不可逆少年』私の評価は★3


ストーリー  ★★★★☆ 4
キャラの魅力 ★★★☆☆ 3
衝撃度    ★★★★☆ 4
おすすめ   ★★★☆☆ 3


2023年10月31日火曜日

『迷宮山荘は甘く香る』 田畑農耕地著 感想・レビュー 山荘の陰謀を解き明かせ

迷宮山荘は甘く香る

改題前のタイトルの方が素敵 

山荘のイメージ
『壮途の青年と翼賛の少女』を改題。

"ミステリ" "閉ざされた山荘" "青春" "仲間" "作戦" "脱出" と興味をそそられるワードがたくさん。

信じられる友人って良いなと思える作品。


あらすじ


ぼっちの高校生、街端路人(まちばたみちひと)は文芸部の合宿で山荘に来ていた。

そこは、全体的に甘い香りに包まれ、部屋の窓には鉄格子がはまり、正面玄


関から外に出るとそびえ立つコンクリに阻まれて脱出不可能という異様な施設だった。

他の部員達は、施設の異常さに気づいておらず、全く似ていない中年男性を顧問の教師だと思いこんでいた。

街端は、自分と同じ正気のメンバー4人と共に施設内を調べ、脱出計画を立てる。



登場人物

【文芸部】

街端路人        ………二年B組。陰キャ。

冷海瑞(ひやうみみず) ……………一年B組。華奢な日本人形のような容姿。無表情。

三木ちなみ(みきちなみ) …………二年C組。背が高い。元気。護身術に長けている。

丸平揚(まるだいらよう) …………二年D組。坊主頭。工作が得意。

橋立悠一(はしだてゆういち)………二年A組 イケメン。頭が良い。

御山(みやま)    …………………国語教師。文芸部顧問。オッサン先生と呼ばれ、慕われている。


ネタバレ感想

初読み作家さんです。

「たばたのうこうち」と読むそうです。

何でタイトルを変えたんだろう?

甘く香るってストーリーそのままじゃないか。

高校生ぼくない端さんの態度や言動がずっと謎。

街端のもう一人の声みたいな文面があり、時折、彼が饒舌に語ったりとかよく分からなかった。

街端と瑞さんの登下校回想シーンの入り方も??

三木さんに少し護身術を習っただけなのに、そこまで習得できる?と思った。

運動センスが抜群に良いとしても。

ラストは無理矢理納得できるように終わったけども、瑞さんがなぜ街端を気に入ってるのかよく分からなかった。

現実と妄想の境界線がうーんって感じ。

世の中を震撼させる大事件を阻止したストーリーだけど、上手く描き切れてない感じでした。

でも途中までは面白かった。

『迷宮山荘は甘く香る』私の評価は★3


ストーリー   ★★☆☆☆  2
キャラの魅力  ★★☆☆☆  2
衝撃度     ★★★☆☆  3
おすすめ    ★★★☆☆  3

2023年10月17日火曜日

『昨日星を探した言い訳』河野裕著 感想・レビュー 君の嫌いな所、100個

 みんな平等の理想郷を求めて


緑の瞳と黒い瞳を持つ人間が存在する国で、総理大臣になりたい少女と気難しい少年2人の純愛もの。

ちょっとしたことで意地になったり、青春の甘酸っぱさを経験し、遠回りした恋愛を描く。


あらすじ


自分の声質が気に入らず、寡黙を選んだ坂口孝文(さかぐちたかふみ)は、全寮制の名門進学校、中高一貫校・制道院学園に入学。

そこでは寮が紫雲・青月・白雨(しうん・せいげつ・はくう)紅玉・黄苑・黒花(こうぎょく・おうえん・こっか)と6つに別れていた。

中等部2年、緑色の目を持ち、世界的に有名な映画監督、清寺時生(せいじときお)を養父にもつ茅森良子(かやもりりょうこ)が転入。

そんな彼女の夢は総理大臣になること。

幼少時代、少しだけ目に触れた清寺の幻の脚本「イルカの唄」に感化され、真の平等な社会を創ることを目標にしている。

まずは、制道院で生徒会長になることを目指す茅森だが、紅玉寮に入ったことで学校中から嫌われる。

そんな彼女と同じ図書委員になった坂口は、いつしか協力関係を結んでいく。



ネタバレ感想


河野裕さんの作品は階段島シリーズのみ読破。

❝「独りきりなら、歌うしかない」❞

文章表現がとても綺麗で、その言葉を使いたい為にストーリーを作ってるようなスタイルは変わってない。

意味は何となくニュアンスで理解しています。

倫理観にも触れていますが、深く考えたらよく分からない(笑)

タイトルは素敵です。

河野さんは、優等生タイプで意志が強く、ちょっとみんなから一目置かれてる女性が好みなのかな。

2人のメイン主人公が交互に語る形で描かれて、どっちの心情も深く描かれている。

好きだけど嫌いだという茅森と彼女に強く惹かれている坂口との意地の張り合いが見もの。

橋本先生と坂口の口論が印象的。

そこからの制道院学園の伝統行事、拝望会は感動的だった。

歩く距離や長い階段を想像したら参加したくないと思うが、しんどいだけでなく参加したからこそ分かる爽やかな感動が胸を打つ。

好きな人も苦手な人も同じ笑顔を向ける茅森は素晴らしい人物だと思うし、決して前に出ずに清掃員という組織を作り、徐々に人数を増やしていった坂口の手腕も凄いと思う。

でも、私はこの2人が現実にいたら苦手だろうなって気がした(笑)

八重樫、桜井、中川先生とは仲良くなれそう。

茅森を思ってしたことだけど、「イルカの唄」を隠した坂口は自分勝手だと思う。

作中にも触れているけど茅森の貴重な青春の思い出を灰色にしやがってと思った。

イルカに準えて周波数って言葉がやたら出てくるけど素敵だった。


登場人物

坂口孝文 …白雨寮。厳しい祖母に苦手意識を持つ。妹が2人いる。

茅森良子 …児童養護施設で育つ。緑の目を持つ。両親を知らない。

綿貫条吾(わたぬきじょうご) …坂口と同室。車いす。

八重樫明美(やえがしともみ) …緑の目を持つ。綿貫と仲が良い。

桜井真琴(さくらいまこと)  紅玉寮。坂口と小学校から同じ。坂口が昔好きだった相手。茅森を嫌う。

橋本先生 …歴史担当。制道院で人気のある教師。

中川先生 …司書教諭。坂口を気にかけてくれる。

原田祥子 …前副会長。紅玉寮に影響力を持つ。

月島渚  …茅森の実母。清寺映画に4本出演。

清寺時生 …制道院学園出身。映画監督。茅森の養父。



『昨日星を探した言い訳』私の評価は★3


ストーリー   ★★★☆☆  3
キャラの魅力  ★★☆☆☆  2
衝撃度     ★★☆☆☆  2
おすすめ    ★★★☆☆  3



2023年10月5日木曜日

『彼らは世界にはなればなれに立っている』太田愛著 感想・レビュー 歴史は繰り返す──現代の黙示録

 人間の浅はかさとは!?

時代設定皆無、国もどこか分からない。      

カイのイメージ

それでも、一言で感想を述べるなら心が抉られる。

主人公が章ごとに変わるストーリー。

ジャンルは多岐にわたり、差別された人々を描く。


あらすじ

〈はじまりの町〉で生まれた民は、みんな誇りを持っている。

その初等科に通う少年、トゥーレの母は、「羽虫」と呼ばれている。

母の作るドレスは、センスも良く人気があるが驚くほどの低賃金で働かされている。

誇り高き住人たちは、他所から来た人々を羽虫と蔑み、日常的に差別していた。

羽虫たちの住居イメージ

そして、町一番の金持ちの伯爵にみんな心酔していた。

豪華客船がやってきた日、トゥーレの母は姿を消す。

その事件をきっかけに、町では悪意の連鎖が起き始めた。


ネタバレ感想

この本を読み始めた時、どこか遠い国のおとぎ話かなといった感じで中々ストーリーに入り込めなかった。

語り手がマリに変わると一気に引き込まれ、魔術師の章では涙がこぼれた。

トゥーレがクッキーの空箱に隠した一枚の写真から紐解いていく。


登場人物はざっとこんな感じ。

トゥーレ …トラック運転手の父、羽虫の母を持つ。

カイ …判事の息子。マリを慕う優等生。トゥーレの友人。

コンテッサ …伯爵が連れてきた美貌の女性。

マリ …映画館の受付嬢。褐色の肌を持つ。雪を見たことがあると言ったせいで嘘つき呼ばわりされる。出生に秘密がある。

ハットラ …羽虫の期待の星。赤毛。足が速く中央の学校に推薦される。

怪力 …伯爵が所有する博物館の監視員。大きな体躯の持ち主。

葉巻屋 …吸殻を拾い、葉巻を作って売っている。情報収集に長けている。父も葉巻職人。弟子を持つ。文字が読める。

魔術師 …成功した試しがない魔術を披露する。禁書をトゥーレに貸し出し、マリとも親しい。


羽虫に対して人間扱いをしない、どこまでも非情な住民たち。

荒廃した町

トゥーレの母(アレンカ)とマリに起こった出来事は、えげつなく、酷くて辛く苦しい。

昔のような設定で描かれているけど現代にも起こり得そうで寒気がした。

魔術師の章で全てが解き明かされていくが、カイとトゥーレの姿に悲しくて涙が出た。

上記の登場人物たちは何も悪いことをしていないのに。

町の悪意の犠牲になってしまう。

どうか、こんな世界はなくなってほしい。

好きか嫌いかの2択なら、私はこのストーリーは嫌い。

だけど、読むべき作品だと思う。


『彼らは世界にはなればなれに立っている』私の評価は★3


ストーリー  ★★★★☆  4
キャラの魅力 ★★★☆☆  3
衝撃度    ★★★★☆  4
おすすめ   ★★★☆☆  3



『仮面』 伊岡瞬著 感想レビュー 仮面の下の秘密

  仮面 (角川文庫) ディレクシアを知る 初読みの作家さんでした。 ページ数は多いけどすぐに読み終えました。 グロ描写ありです。 あらすじ 読字障害というハンディキャップを抱えながらもアメリカ留学の後、情報番組を中心にメディアに露出する三条公彦(さんじょうきみひこ)。 知的で爽...