2024年2月25日日曜日

『正体』染井為人著 感想レビュー 知能犯と言われた未成年死刑囚の脱獄後を描く

 彼はなぜ逃げるのか?彼の目的とは

逃げるストーリーは文句なしに面白い

鏑木視点では描かれておらず、他者からの目線でストーリーが進む。

語り手の人物たちは彼の人柄に触れた後、世間を騒がせる犯人だと気付き、彼なぜ犯罪を犯したのか疑問に思う。

そして、彼を知方は口をそろえて言う、そんな人とは思えないと。

めっちゃページ数多かったが、気にならないくらい面白い。

色んなところに現れるのがフォレストガンプみたいだった。

社会派ミステリ



あらすじ

罪もない一家三人を惨殺した平成最後の未成年死刑囚。

頭が良く見た目も良い彼は、様々な場所で名前を替えて潜伏し、逃亡生活をする。

工事現場、ライター業、旅館の住み込みバイト、パン工場、グループホーム。

彼はなぜ脱獄したのか。

脱獄後の488日を追う。


ネタバレ感想

どうか現実に起きないでと思う作品。

作家さんがあとがきで触れてる通り、私もみんなと同じ意見を彼に言いたい。

救われて欲しかった。

もっとちゃんと調べて!疑わしきは罰せずだよ。

一度犯人だと思われると覆すのは難しいのか、冤罪は酷い。

彼が関わった人たちの再登場は嬉しかった。

ラストはただ悔しい。

そして泣けた。

しばらく引きずる作品になると思うし、読み応えある作品だった。

四方田は桜井への嫉妬から通報したのかな。

井尾由子と舞、ちゃんと証言してって思った。

逃亡期間中に友達と好きな人ができ、好きなスポーツができたのが救いなのかな。

色んな業種で働いている方たちのリアルな描写に驚いた。

めっちゃ調べてるんだろうなって。

2024年、映画化決定って帯にあったけど配役誰だろう。

赤楚英二さんが鏑木役似合いそう。


『正体』私の評価は★5

ストーリー ★★★★★ 5
キャラの魅力★★★★★ 5
衝撃度   ★★★☆☆ 3
おすすめ  ★★★★★ 5


WOWWOW『正体』ドラマ、原作との違い


全4話ですが、原作を読んで内容を知っているにも関わらず、めちゃくちゃ面白く一気見しました。

原作と違ってた箇所をいくつかあげると…


・鏑木の容姿の特徴、年齢

・脱獄の場所

・弁護士との出会い

・旅館のエピソード丸々カット

・さーやの家  …マンションから一軒家に変更

・鏑木が疑われた理由

・ラスト    …原作を読んだ方への思いを汲み、改変したのかなと思いました。


これでもかという豪華キャストでした。

市原隼人さんと貫地谷しほりさんはハマリ役だと思いました。

高畑淳子さんと野間口徹さんは安定の上手さ。

亀梨和也さんの工事現場での演技は、完全にオーラを消していて良かったです。

鏑木は、いくつかの逃亡先で不本意ながら何人かと交流をしますが、そこの関係性に至るまでドラマでは尺の関係もあって浅く感じますが、原作はすごく深いです。

染井さんは人の描き方がすごいんですよ。

まるで、その人物になったことがあるみたい。

原作を読むのをぜひおすすめします。




2024年2月15日木曜日

『マッチング』内田英治著 感想・レビュー #アプリ婚 の愛が試される 天使か悪魔か

 仕掛けられた罠に気付くことができるのだろうか

2024年2月23日公開 映画「マッチング」原作小説

監督自ら書き下ろした小説なので、読みやすい。
流氷の天使「クリオネ」


配役も分かっているので想像しながら読めた。

吐夢(とむ)のキャラが強烈。

仕掛けられた罠に気付くことができるのだろうか。

映画も見たくなった。

あらすじ


ウェディングプランナーの輪花(りんか)は、幼いころ母が出て行ったため、恋愛に奥手。

心配する同僚の尚美から、マッチングアプリ『ウィルウィル』に登録するよう促される。

アプリでマッチングした男性と水族館で待ち合わせした輪花は、現れた男性の吐夢(とむ)を見て、異常者だと慄く。

その日以来吐夢にストーキングされる輪花は、アプリを開発した影山に相談する。

その頃、アプリ婚をした夫婦が、次々と惨殺される事件が世間を賑わしていた。

ネタバレ感想



吐夢(とむ)が分かりやすいほど怪しい

クリオネの捕食姿に興味を持ち、バッカルコーンを初めて知った。

一度動画で見るのおすすめです。

輪花のキャラには終始イライラ。

周りを信用しすぎるので疑えよと(笑)

せっかく美人なのに彼女の周りは変な男しかいない。

恩師の片岡や尚美は彼女と仲良かっただけなのに。

片岡に関してはちゃんと愛を持っていたのになぜ殺されたんだと思ったが、後に判明。

尚美は脇が甘すぎたなあ。

吐夢はストーカーはするが、輪花を傷つけませんと飄々と言ってのける様子は、なぜか憎めず微笑ましくすら感じてしまった。

その彼の描き方がすごくうまい。

輪花が、彼のことを憎めなくなってきているのが伝わる。

そして、明かされる全ての謎。

途中からこいつが怪しいんじゃないかと思って読んでいたけど、色々騙された。

もう心も囚われてしまって逃げられないね。

悪の根源は父なのか。

面白かった。



『マッチング』私の評価は★4


ストーリー  ★★★★☆  4
キャラの魅力 ★★★★☆  4
衝撃度    ★★★★☆  4 
おすすめ   ★★★★☆  4













2024年2月7日水曜日

『だってバズりたいじゃないですか』喜友名トト(きゆなとと)著 10秒MV@渋谷

エモいがよく出てくるSNS時代ならではのライトノベル

表紙絵がかわいくて購入。 

2人の美少女と芸術家崩れのやさぐれた主人公が出てくる。


恋愛がテーマではなく、成長物語だと思った。


あらすじ

芸大生の秋都(あきと)は、一生に一度の恋が「感動の実話」として映画化されたことにもやもやしていた。

同じ大学に通う後輩、胡桃沢千歳(くるみざわちとせ)に声をかけられ、バズるMVを取って欲しいと頼まれる。

彼女は音楽系インフルエンサーでちょっとした人気者だった。

最初は渋っていた秋都だが、徐々に制作にのめり込んでいき、AKIとして人気を得る。

過去の恋と現代の生活を交差させながら描かれる、青春ストーリー。


ネタバレ感想

私がエモいという言葉を知ったのは、菅田将暉さん主演のドラマ「3年A組 ―今から皆さんは、人質です―」からです。

そこから爆発的に広がったんじゃないかなあ。

ドラマ人気あったし。

女は才能に惚れると言われているけど、秋都はその通り2人の美少女に好かれます。

カメラマンとしての素質と才能を備えていた彼は言われるがままに動画を撮影し、のめり込んでいきます。

バズるだろう動画を配信しながらも心は闇で閉ざされたまま。

2/3くらいはあまり面白くない。

過去編はうーん。

現代編はiPhoneを駆使したり、秋都の撮影の描写が細かく、簡単に思い浮かべることができたので、作者さんの情景描写のセンスはすごいと思った。

承認欲求の強い千歳の闇の部分に焦点が合ってから、面白くなります。

秋都の撮影の描写が細かく、簡単に思い浮かべることができたので、作者さんの情景描写のセンスはすごいと思った。

芸能界は作り上げた虚像、そして賞の出来レース多いのかなと思わせるシーンも。

秋都も千歳もやりたいこと、やりたくないことをちょっとずつ修正しながら、前に進んでいく姿は良かった。

刺さる小説ではないけどiPhoneを片手に今しか読めないストーリーかも。


『だってバズりたいじゃないですか』私の評価は★2

ストーリー ★★★☆☆  3

キャラの魅力★★☆☆☆  2

衝撃度   ★☆☆☆☆  1

おすすめ  ★★☆☆☆  2

2024年2月1日木曜日

『花束は毒』織守きょうや著 感想・レビュー 過去を暴くのは要か否か

知りたくなかった

脅迫されているのになぜか犯人探しを躊躇する元家庭教師。

僕が知っている真壁はイケメンで明るく、常にみんなの中心にいるような人物だった。

結婚を控えた彼を助けてあげたかっただけなのに。

ミスリードを呼ぶミステリ。

有害植物

あらすじ

 脅迫され続ける真壁。

そんな彼を助けたいと思った検察官志望の木瀬は、探偵事務所のドアを叩く。

中学時代、木瀬は探偵見習と名乗る北見理花と出会っていた。

だが、真壁は探偵を雇うことに躊躇する。


ネタバレ感想

初読みの作家さんです。

主人公の木瀬が正義感たっぷりの真っ直ぐな青年。

彼のような人物は人を疑うことを知らない。

同じように家庭環境に恵まれ、頭も良く、容姿を整っていた真壁。

だが、彼はある事件をきっかけに人生が180度変わり、ひっそりと生きていく。

そんな彼と偶然出会い、昔の縁から助けようとする僕。

真壁がなぜ躊躇するのか。

彼は華やかな医大生時代、強姦事件を起こしていたのだ。

果たして彼は冤罪なのか。

事件を紐解いていくうちに行き当たる驚愕の真実。

木瀬が探偵を雇い、費用も負担するなんて良い子過ぎるし、美少女探偵の登場とか現実味ない設定だけど、ストーリーがしっかりしていてちゃんと読み応えがあった。

「知りたくなかった」と木瀬が北見先輩に言うプロローグ。

それがこんな形になって戻って来るなんて。

そしてタイトル回収。

背中がぞくっとしました。

そして私が木瀬の立場ならどうしたかと考えてしまった。

面白かった。


『花束は毒』私の評価は★5


ストーリー ★★★★☆ 4
キャラの魅力★★★★☆ 4
衝撃度   ★★★★★ 5
おすすめ  ★★★★★ 5

『剝製の街 近森晃平と殺人鬼』樹島千草(きじまちぐさ)著 感想・レビュー 人の根底にあるもの

耽美で禍々しい芸術 完全にカバー買いです。 この作品の剥製のイメージは蠟人形っぽい感じ 装丁は西村弘美さん。 イラストレーション/人さらいさん とありましが、「人さらいさん」は、調べても分からなかったです。 タイトルがちょっとダサい感じがしますが、イラストに惹かれた。 過去の事件...