2023年3月10日金曜日

『時空犯』潮谷験 感想・レビュー ❝計算ができるということは何もかもできること❞

時間遡行(じかんそこう)の繰り返し 

タイムループ作品は数多くあって珍しくもないですが、『時空犯』のタイムループ回数は異常です。

そこに私は惹かれました。

なぜ、千回近くも巻き戻されているのか。

その理由が分かった時、納得(共感)できるかできないかで面白さが変わるかも。

こんな思考の行く先があるんだなと思った作品。

あらすじ


1千万円の報酬金額につられ、治験の説明会に参加した私立探偵の姫崎智弘(きさきともひろ)。

依頼人の名前は、北上伊織(きたかみいおり)。

集められたメンバーは、様々な分野での情報収集、伝達に長けた人物たちだと言う。

情報工学の研究者である北上博士の口から、時間遡行を体験していると説明され、依頼は時間の巻き戻しを体験してもらいたいというものだった。

全員が呆気にとられ、会場内はざわつく。

半信半疑だったメンバーだが、信じざるを得ない体験をしていく中、九百八十回目の六月一日、北上博士が殺害される。

ラボのイメージ
時間遡行の研究は犯人とって都合が悪いという結論に至る。

犯人は一体誰なのか?

治験メンバー全員アリバイなしの中、さらに事件が起きていく。


ネタバレ感想


同じ日を何回もループしているSFミステリー。

知らないワードは出て来るけど、ちゃんと分かるように解説してくれるので読みやすく面白かった。

博士のラボ内での事件から時間も忘れて一気読み。

でも、犯人は意外でもなかったです(笑)

何より雷田亜利夫(らいだありお)というキャラが魅力だった。

❝理解できない対象と最も有意義な形で共存する方法は、関わりを絶つこと❞

この言葉に感銘を受ける彼のキャラが好き。

空気みたいな人もいるのに麻緒(まお)のキャラ設定がめっちゃ濃いい

神ポジションまで手に入れてるし。

大阪のおばちゃんキャラである大岩(おおいわ)さんが主人公以上に目立ちすぎだし、しつこい(笑)

でも彼女が口に出す疑問は真っ当なので、読者のためにはいないといけないキャラ。

結局、博士にみんな転がされていたのかなあ。

どこかであってもおかしくない、ファンタジーでは片づけられないストーリーだった。

『時空犯』私の評価は★4

ストーリー  ★★★★☆  4
キャラの魅力 ★★★★☆  4
衝撃度    ★★★☆☆  3
おすすめ   ★★★☆☆  3



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