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2024年4月18日木曜日

『スイッチ 悪意の実験』潮谷験著 感想・レビュー 思ってたのと違う



嘘つきは誰?

脳内コイントスで人生を歩んできた主人公のサイコパスぶりと実験参加の報酬が魅力的。

あらすじだけ読むとめっちゃ面白そうだが、


後半は完全に裏切られた。

タイトルも装丁(文庫)もシンプルで目立つので、思わず手に取りたくなるのは分かる。

ただ、心理描写のくだりはあまり理解できない。

誰に対しても感情移入ができない心理学ミステリ。


あらすじ


押す? 押さない? どうする? どうなる? こんな結末読めないよ…………!

夏休み、大学生の小雪は、就職浪人中の先輩香川からバイトの話を持ち込まれる。

インストールされたアプリスイッチをもって1ヵ月暮らすだけの簡単なお仕事。

日当は1万円、そして1ヶ月後のボーナスは、100万円

スイッチは押しても押さなくても報酬に変化なし。

「誰も押すわけがない」と参加者たち全員が思っていた。

だが、この奇妙な心理実験は思わぬ方向へ。


ネタバレ感想・レビュー

『時空犯』が面白かったので購入。

破格のアルバイト料で心理学実験に参加した6人。

スイッチを押しても、参加者にペナルティはなく、ただパン屋さんが破滅するだけ。

スイッチを押すか押さないかで後半まで引っ張るストーリーかと思ったら甘かった。

前半で押されてしまい、後半は押した犯人S探しとなります。

さらに、殺人事件まで。

幼少期、悪魔呼ばわりされた主人公の邂逅など、ストーリーに一気に引き込まれます。

実験の立案者の安楽さんが、まだ魅力的に描かれているのが救いですが、他のキャラはうーん。

玲奈と大我が純粋すぎる。

なぜか香川さんだけアル中という設定。

ストーリーの要にご都合よく使われている彼女が不憫だった。

「純粋な悪」を燻りだす実験なのに、薄っぺらいハッピーエンドで終わった。

宗教論が出てきた辺りから読むのが苦痛。

分かりやすかったねと語る主人公たちに、どこが??と思わずつっこんだ。

「光意」にたどり着いた一人である小雪の脳内の組み換えがいまいち理解できず、みんなの心を救う展開も微妙。

でも、❝自分の価値をゴミ箱に捨てるのは人を無作為に傷つけるのと同じ❞

という言葉は刺さった。


『スイッチ 悪意の実験』私の評価は★2


ストーリー  ★★★☆☆ 3
キャラの魅力 ★★☆☆☆ 2
衝撃度    ★★★☆☆ 3
おすすめ   ★★☆☆☆ 2











2023年5月14日日曜日

『エンドロール』潮谷験 感想・レビュー 物語には終わりがある

 『物語論と生命自律』最も危険な書物

ジャンルは何だろう、社会派?

まず、話の流れが全く掴めないのがこの小説の魅力。

シンプルに説明すると自殺を肯定する側と否定する側の戦い。

物語には終わりがあるが、現実は?という哲学っぽいテーマに触れながら、時事ネタも取り入れ、ストーリーは進む。


あらすじ

202X年。

疫病が蔓延。

そのため、空虚な時間を過ごす羽目になった若者たち。

体を動かすことも学習も疎かになり、疫病が落ち着いた現在も不利益を多く被った若者たち。

そんな彼らの間である本が囁かれる。

哲学者、陰橋冬(かげはしとう)著『物語論と生命自律』。

彼は、自伝を国会図書館に納本し、自殺の末路を辿った。

そして彼を真似た自殺者数は推定200人。

高校生の雨宮葉(あめみやよう)は、早世した人気作家・雨宮桜倉(あめみやさくら)を姉に持つ。

姉が生前陰橋と交流があったため、遺作が若者の自殺を肯定していると受け止められないように奔走する。


ネタバレ感想


自殺反対派

雨宮葉 主人公。姉の作品にこだわりを持つ。

遠成響(とおなりひびき)人気ユーチューバー。女性。

箱川嵐(はこがわあらし)名門サッカー部所属。
           VS
生命自律主義者

長谷部組人(はせべくみひと)何を考えているか全く分からない。

尾戸陽一(おどよういち)組人と同居している。

新川ひなた(しんかわ)    〃   女性。



生配信の討論対決に始まり、決着がままならないまま第2回戦に突入。

その際、事件が起き、疑心暗鬼に駆られます。

葉の姉が伝えたかったのは何なのか。

組人は何を考えているのかを軸にストーリーは進む。
ジンジャエールが飲みたくなる


葉より組人の方が魅力があった。

嵐の考えがポジティブで良かった。

二転三転するけど万人受けしないストーリーだった。

葉の姉が残した言葉が全然刺さらなかった。

同作者が書いた『時空犯』は好きです。


『エンドロール』私の評価は★2

ストーリー   ★★☆☆☆  2
キャラの魅力  ★★☆☆☆  2
衝撃度     ★★☆☆☆  2
おすすめ    ★☆☆☆☆  1

2023年3月10日金曜日

『時空犯』潮谷験 感想・レビュー ❝計算ができるということは何もかもできること❞

時間遡行(じかんそこう)の繰り返し 

タイムループ作品は数多くあって珍しくもないですが、『時空犯』のタイムループ回数は異常です。

そこに私は惹かれました。

なぜ、千回近くも巻き戻されているのか。

その理由が分かった時、納得(共感)できるかできないかで面白さが変わるかも。

こんな思考の行く先があるんだなと思った作品。

あらすじ


1千万円の報酬金額につられ、治験の説明会に参加した私立探偵の姫崎智弘(きさきともひろ)。

依頼人の名前は、北上伊織(きたかみいおり)。

集められたメンバーは、様々な分野での情報収集、伝達に長けた人物たちだと言う。

情報工学の研究者である北上博士の口から、時間遡行を体験していると説明され、依頼は時間の巻き戻しを体験してもらいたいというものだった。

全員が呆気にとられ、会場内はざわつく。

半信半疑だったメンバーだが、信じざるを得ない体験をしていく中、九百八十回目の六月一日、北上博士が殺害される。

ラボのイメージ
時間遡行の研究は犯人とって都合が悪いという結論に至る。

犯人は一体誰なのか?

治験メンバー全員アリバイなしの中、さらに事件が起きていく。


ネタバレ感想


同じ日を何回もループしているSFミステリー。

知らないワードは出て来るけど、ちゃんと分かるように解説してくれるので読みやすく面白かった。

博士のラボ内での事件から時間も忘れて一気読み。

でも、犯人は意外でもなかったです(笑)

何より雷田亜利夫(らいだありお)というキャラが魅力だった。

❝理解できない対象と最も有意義な形で共存する方法は、関わりを絶つこと❞

この言葉に感銘を受ける彼のキャラが好き。

空気みたいな人もいるのに麻緒(まお)のキャラ設定がめっちゃ濃いい

神ポジションまで手に入れてるし。

大阪のおばちゃんキャラである大岩(おおいわ)さんが主人公以上に目立ちすぎだし、しつこい(笑)

でも彼女が口に出す疑問は真っ当なので、読者のためにはいないといけないキャラ。

結局、博士にみんな転がされていたのかなあ。

どこかであってもおかしくない、ファンタジーでは片づけられないストーリーだった。

『時空犯』私の評価は★4

ストーリー  ★★★★☆  4
キャラの魅力 ★★★★☆  4
衝撃度    ★★★☆☆  3
おすすめ   ★★★☆☆  3



『仮面』 伊岡瞬著 感想レビュー 仮面の下の秘密

  仮面 (角川文庫) ディレクシアを知る 初読みの作家さんでした。 ページ数は多いけどすぐに読み終えました。 グロ描写ありです。 あらすじ 読字障害というハンディキャップを抱えながらもアメリカ留学の後、情報番組を中心にメディアに露出する三条公彦(さんじょうきみひこ)。 知的で爽...