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2024年10月11日金曜日

『推しの殺人』遠藤かたる著 感想・レビュー 地下アイドルの友情サスペンス

推しの殺人 (宝島社文庫)

わたしたちをつなぐのは罪

地下アイドルが主役なのが面白い。

2024年 第22回『このミステリーがすごい!』大賞文庫グランプリ受賞作

ミステリーというよりサスペンス色強め。


ノンストップ青春サスペンス。


あらすじ 

大阪を拠点に活動する三人組地下アイドル「ベイビー★スターライト」

人気は下がる一方で単独ライブでの集客力は最早なく、合同ライブで日銭を稼ぐ日々だった。

さらにメンバー格差もあり、関係性はぎくしゃくとしている。

そんな中、メンバーのひとりが殺人を犯してしまう。

このままではアイドルを続けることができない。

三人は罪を隠蔽することを誓い、山中に死体を埋める段取りを始める。

行きつく先は破滅かステージか。


ネタバレ感想

『溺れる星くず』改題。

元タイトルの方が断然いい。

『推しの子』に引っ張られた感がある。

このタイトルだと、冒頭ルイに説教した教師が主人公の話かなと思っちゃう。

皮肉にも殺人がきっかけになって3人の結束力が固まる。

絆が深まったところは泣ける。

主人公のルイがめちゃくちゃ冷静。

若干自意識過剰。

過去に色々あったせいか、精神的に不安定なのかな。

人物像に一貫性がないため、感情移入しにくかった。

テルマは感情的だけど一番分かりやすいタイプ。

イズミは芯がしっかりしていて、律儀。

関西弁が飛び交うけど違和感なし。

作家さんの出身大学を見て納得。


興信所がイズミに絡んだ理由に何やねんってなった。

2回もレンタカーで山行くの怪しすぎるだろ。

イノシシもただ出てきただけかーい(笑)

ドッキリ企画は良かった。

土井(どい)さん良かった。

河都(かわと)は良い人すぎたからそう来たかと思った。

どんでん返しが弱い気がする。

3人がどこでアイドルしているか描いて欲しかったな。

読みやすかったから次作も期待。


『推しの殺人』私の評価は★2

ストーリー  ★★☆☆☆ 2

キャラの魅力 ★★☆☆☆ 2

衝撃度    ★★★☆☆ 3

おすすめ   ★★★☆☆ 3

2024年8月5日月曜日

『みんな蛍を殺したかった』木爾チレン (きな)著 感想・レビュー 誰も幸せになれない

 『みんな蛍を殺したかった 』(二見文庫 )

❝私を殺してくれて、ありがとう❞

このストーリーのキャラたちではどんなルートを選択してもバッドエンドになってしまうだろう。

冒頭の未送信のメールに衝撃を受け、なぜそんなメッセを打ったのか答えを知りたくなる。

女子の嫌な部分を見事に描いている作品。



あらすじ

美しい少女・蛍が線路に身を投じる。

京都の偏差値が低い高校に通うオタク女子三人。

もちろんスクールカースト底辺に属し、生物部に籍を置く。

そんなある日、東京から美少女・蛍が転校してきた。彼女はなぜか自分もオタクだと宣言し、生物部に入部してくる。

蛍とそれぞれ絆を深めていく三人だが、事態はあらぬ方向へと進んでいく。


登場人物

七瀬蛍(ななせほたる)……二次元から飛び出したかのような美貌の持ち主。

大川桜(おおかわさくら)…オンラインゲーム『魔法世界』(まじかるわーるど)にハマるボクっ子。アニメ声。

五十嵐雪(いがらしゆき)…裕福な家庭で育つが、母の愛に飢えている。クラスメイトの金づる。

猫井栞(ねこいしおり)……母は美人で有名人。顔の火傷のせいで筆談。小説を書いている。

リイ君 ………………………『魔法世界』での桜(ナデシコ)の恋人。

アロワナ ……………………生物部にいる古代魚。

デュビア ……………………ググると後悔します(笑) 蛍が育てている虫。


ネタバレ感想

蛍に裏がありそうと思いながら読んだけど、やっぱりそうだった(笑)

藤高さんは、生まれたての赤ちゃんが六花に見えてしまうぐらい精神を病んでしまったんだろうな。

ただ、そんな偶然ある?っていう狭い世界だった。

誰か一人くらいハッピーエンドにしてあげて。

オタクはみんなブスではないと思うし、性格悪いという設定はどうだろう。

蛍の勝手な復讐心で、歯車が狂っていくし歪みすぎ。

復讐する相手は違うのにね。

そして母親の愛情の注ぎ方で子供は変わってしまうだなと。

桜と栞の母親は酷かったし、父親も尻に敷かれすぎて頼りない。

唯一綺麗な心の持ち主だった栞は、母の世話なんかしなくて良いのにと思った。

彼女は蛍の我がままも受け入れたし。

兄弟間で容姿レベルが違いすぎるのが3組もあるなどツッコミどころもあるが、ドロドロとしていて面白かった。

読後感は良くないけど深夜枠で実写化しそう。


『みんな蛍を殺したかった』私の評価は★2

ストーリー  ★★★☆☆ 3

キャラの魅力 ★★☆☆☆ 2

衝撃度    ★★★☆☆ 3

おすすめ   ★★★☆☆ 3


2024年7月8日月曜日

『原因において自由な物語』五十嵐律人著 感想・レビュー 不気味な装画

 『原因において自由な物語』/講談社文庫

結果ではなく過程が重要

最初、五十嵐律人さんの本にしては面白くないなって思った。

廃病院

でもそう思ってしまってごめんなさい。

プロローグ、ストーリー構成お見事です!

junaida(じゅないだ)さんの装画素敵。

不気味なイラストだなって思いながらも惹かれる。

現実にある物をダークな産物にしたイメージ。


あらすじ


人気作家の二階堂紡季(にかいどうつむぎ)には、秘密があった。

それでもこの作品は書き続けなければいけない。

私立北川高等学校。

顔面偏差値アプリ(ルックスコア)のせいで学校内の立場が危うくなった佐渡琢也(さわたりたくや)、朝比奈憂(あさひなうれい)、永誓沙耶(ながちかさや)は写真部に所属していた。


ネタバレ感想

タイトルの意味が何度読んでも理解できず難しいです(笑)

琢也が主役かと思ったら紡季が綴る作中作だった。

だが、担当編集者に現実に起きた事件と酷似していると言われ、彼女にプロットを提供していた想護(そうご)の廃病院での事故。

それは琢也が転落した場所と同じだった。

紡季は何を書かされようとしていたのか。

そして想護は何を調べようとしていたのか。

『法廷遊戯』のキャラが2人再登場しているのと『六法推理』の事件が例えにあげられていたので、もう1度読みたくなった。

物語の終盤、散らばっていた伏線が綺麗に回収されていく。

❝「いじめ」はウィルス、宿主が強くなると他者に移る❞

着地点が予想できず面白かった。

ただ、沙耶が何を考えているのかはよく分からなかった。

琢也が救われず、紡季がいるとはいえ想護の未来についてもやもや感は残るものの、すごく考えさせられる作品だった。

スクールロイヤーの存在も初めて知った。


『原因において自由な物語』私の評価は★5


ストーリー  ★★★★☆ 4
キャラの魅力 ★★★★☆ 4
衝撃度    ★★★★★ 5
おすすめ   ★★★★★ 5

2024年6月10日月曜日

『六法推理』五十嵐律人著 感想・レビュー ドラマ化しそうなリーガルミステリー

 六法推理(角川文庫)

大学生による無法律運営

はい、作家買いです。

専門用語が欄列されているが身近で起こりそうな案件を取り扱ってるため、勉強になる。

主人公が大学生なので会話劇も楽しく読みやすい短編集。


法律の鬼である行成(ゆきなり)と貧乏学生の戸田(とだ)のコンビ。


あらすじ


霞山(かざん)大学法学部四年・古城行成(こじょう)がゼミ室で運営する「無料法律相談所」(通称「無法律」)に、経済学部三年の戸賀夏倫(かりん)がドアを叩く。

彼女が住む事故物件のアパートは、過去に女子大生が首つり自殺を図っていた。

そのことは承知で住む彼女だが、深夜に赤ん坊の泣き声が聞こえ、真っ赤な手形が窓につくなど、奇妙な現象を解決してほしいと古城に依頼する。

「法律マシーン」と影で呼ばれている古城と、「自称助手」だと首を突っ込む戸賀の凸凹コンビが大学で起きた事件に挑んでいく。

  1. 六法推理 事故物件の悪意の正体を暴け
  2. 情報刺青 リベンジポルノを流出させた犯人は?
  3. 安楽椅子弁護 学際間近に起きた倉庫の火災の原因とは
  4. 親子不知 毒親と縁を切りたい女子大生
  5. 卒業事変 夏倫のカンニング疑惑

登場人物

・古城行成  ───  法曹一家に育ち、家族にも恵まれている。世間知らず。

            法律マシーンと呼ばれるくらい頭が堅い。

・戸田夏倫  ───  バイトに明け暮れる苦労人。フリマファッション。

・小暮葉菜(こぐれはな)夏倫と同じ経済学部。同学部のメンバーと共に"エコノミスト”と    

            いうグループ名で活躍するユーチューバー。人目を惹く容姿。

・三船昇(みふねのぼる)霞山大学理学部数学科四年。行成と同じ高校出身。

・古城錬(れん)─── 行成の兄。検察官。


ネタバレ感想

探偵役の行成が華麗に事件の謎を解くと思っていたら、堅物すぎて最終的に推理を外してしまうのが新しいスタイルで面白い。

親子不知のアパートイメージ

どの短編も続きどうなったのかなというところで終わってしまうのがちょっともやもや。

特に「親子不知」は可哀そうすぎて報われない。

「安楽椅子弁護」の真相や「卒業事変」の教授の処罰はどうなったのかとか。

それでも面白いんですよ五十嵐律人さんの本はやっぱり。

続編も出ているから絶対読む。

ドラマ化したら夏倫のファッションが特に楽しみかも。

行成は水上恒司(みずかみこうし)さんが良さそう。


夏倫は武田玲奈(たけだれな)さんが合いそうって妄想してみました。


『六法推理』私の評価は★4

ストーリー  ★★★★☆   4

キャラの魅力 ★★★★☆  4

衝撃度    ★★★☆☆  3

おすすめ   ★★★★☆  4










2024年5月26日日曜日

『ゴールデンタイムの消費期限』斜線堂有紀著 感想・レビュー 才能の枯渇

                      ゴールデンタイムの消費期限(角川文庫)


若き天才のリサイクル計画

これまで斜線堂有紀さんの作品は、『私が大好きな小説家を殺すまで』 『恋に至る病』などの共依存系しか読んだことなかった。(ちなみにどちらの作品も大好きです)

だから何か起きそうって思ったし、クローズドサークルのミステリ作品かなと先入観を持ったけど違ってた。

恋愛要素ほぼなし。

世間から見放されつつある元天才たちが、それぞれ自身を見つめ、必死に努力するキャラたちの交差を描いている瑞々しい作品。

読後感も良い近未来青春ストーリー。


あらすじ


小学生で小説家デビューし、もてはやされた綴喜文彰(つづきふみあき)は、4年も新作を発表出来ていない。

焦燥感に駆られ、将来を悲観し始めた高校三年生の春、綴喜は編集者から『レミントン・プロジェクト』への参加を打診される。

綴喜が連れていかれた山奥の巨大な施設は、国が出資し、若き天才たちを集め交流を図る11日間のプロジェクト。

そこに料理人、ヴァイオリニスト、映画監督、日本画家、棋士の、若き五人の天才たちがいた。

全員、一度は天才だともてはやされたものの、徐々に前線から脱落していった者たちだった。

そして、このプロジェクトとは、人工知能「レミントン」とのセッションを通じた自分たちの「リサイクル計画」だった。


登場人物


綴喜文彰 天才小説家。

真取智之(まとりともゆき)天才料理人。綴喜と同じ「ギフテッドチルドレン」出演者。

秋笠奏子(あきがさかなこ)国内の賞総なめのヴァイオリン奏者。

秒島宗哉(びょうしまそうや)帝都藝大三年。専攻日本画。

御堂将道(みどうまさみち)デビュー戦から二十七戦無敗の最年少棋士。

凪寺エミ(なぎでらえみ) 18歳。映画監督。「世界のナギデラ」の一人娘。



ネタバレ感想


全員、元天才。

飽きられたら終わり。

プレッシャー。

私は凡人なので天才側の気持ちは今まで知る由もなかったけれど、一度結果を出した人間はこんな悩みがあるのかと分かった。

そこで、各分野の元天才を集めたレミントン計画。

❝レミントンは四十六万冊の小説を学習し、ベストセラーになる小説の展開を把握❞

1日1冊小説を読んでいる綴喜にも驚きだが、レミントンはおよそ人間が人生何周したって追いつかないくらいの気が遠くなるような数字の本を簡単に読破してしまう。

レミントンの言うとおりに書けばベストセラー間違いなし。

もう、これは現実に起きているかもしれない。

AIのイラストが普通に出回っているし。

レミントンに反発する人物、すんなり受け入れる人物、悩む人物、それぞれ意見をぶつけながら、11日間で人生を見つめ直していく。

殺人事件が起きたり、好きになり過ぎて苦しいとかそんな展開はないけれど、ラストまで面白く読めた。

それぞれの活躍がもっと見たいし交流も見たい。

私は秒島さんが良かった。

意外だったのが綴喜の従兄弟と秋笠。

凪ちゃんの父親と秋笠の母親には腹が立った。

後者は、私が今まで読んだ斜線堂さんの作品に出て来そうな母親像。



『ゴールデンタイムの消費期限』私の評価は★3


ストーリー   ★★★☆☆  3
キャラの魅力  ★★★★☆  4
衝撃度     ★★★☆☆  3
おすすめ    ★★★☆☆  3








2024年5月6日月曜日

『イデアの再臨』五条紀夫著 感想・レビュー ギミック小説

イデアの再臨(新潮文庫)

かなり戸惑うメタミステリ

カバーデザインは『クローズドサスペンスヘブン』と同じ、川谷康久(かわたにやすひさ)さんで素敵。

前作が面白かったので、今回も期待。

なんだこりゃ小説でした。

新しいことにチャレンジした小説って感じ。

こちらも『世界でいちばん透きとおった物語』同様、映像化不可能。

ただし、二番煎じとかじゃないです断じて。


あらすじ

朝起きたら、壁に四角い穴が空いていた。

あるべきものがない?

母は何事もなかったかのように過ごしている。

学校に行っても、そこかしこ穴があるのにみんな通常通りだ。


世界から■■が消えているのに誰も異変に気がつかない。

頭を抱える僕をじっと見つめる金髪の同級生。

「ここは小説の中の世界。俺たちは登場人物だ」

次々と消える言葉や物、世界がどんどんおかしな方向へ進む中、僕たちは犯人の正体を推理する。

映像化不可能作品、メタ学園ミステリー。


ネタバレ感想

どんどん空白になっていく単語と共に、小説の世界でもそのものが消えていく。

さっきまであったものが消えておかしいと気付いた人物は、ページを戻れたりとかなどのスキルを持つ。

10ページくらい読んだときに、うーん私はこの独特なノリのストーリーにハマれないかもと思った。

会話劇は少し面白いと思う。

けど、なんとか頑張ってラストまで読まないととなぞの使命感で読む作品だった。

犯人は何の目的でこんなことを、そしてどう終わらすんだろうという二つの答えを知る為だけに読んだ。

まあ一応ハッピーエンドなので後味は悪くない。


『イデアの再臨』私の評価は★1

ストーリー  ★★☆☆☆  2
キャラの魅力 ★☆☆☆☆  1
衝撃度    ★★★☆☆  3
おすすめ   ★☆☆☆☆  1

2024年4月29日月曜日

『九度目の十八歳を迎えた君と』浅倉秋成著 感想・レビュー どうでもいいことに一生懸命になれる高校時代


不器用な青春時代

みんな夢を諦めたわけじゃない、今できる最良の跳躍をするんだ。

社会人になった今なら分かることだけど、あの頃気の利いた言葉が全く出てこなかった。

これは、タイムループ作品ではないしファンタジーでもない。


浅倉さんの伏線が光る青春ミステリ作品。


あらすじ

そこそこの印刷会社で営業マンとしてのノルマを熟す間瀬(ませ)は、通勤途中のホームで、同級生の姿を目撃する。

彼女は、僕が高校時代に恋をした二和美咲(にわみさき)だった。

だが、二和は制服に身を包み、見た目もあの頃のまま、未だ十八歳として高校に通っていた。

僕と二和は同い年。

本来ならば30歳目前であるはずだった。

なぜか周囲の人たちは彼女のその姿を違和感なく受け入れる。

僕は、現在の彼女の同級生と協力し、 原因を探っていく。


ネタバレ感想

設定に無理があるし、ん?となる箇所もあるけれど、その辺はさすが浅倉秋成さん、ラストまで読ませる筆力がありました。

間瀬の原因とか、二和さんの返事とかうやむやで終わってしまったが、全体を通して自身の青春時代とリンクさせたりして面白かった。

間瀬が彩雲に入れた夢、一番知りたかったな。

戻って来た彩雲を手に取るシーン、ちょっと泣きそうになった。

彩雲

同級生たちがそれぞれ大人になっていてみんないいやつ。

二和が一番掴みどころない感じ。

『教室が、ひとりになるまで』と違って、キャラが魅力的なのが良い。

真鍋と教頭先生が好き。

『サニー』と呼ぶのが笑っちゃうけど、ほうじ茶と和菓子を持って新聞部に居座る教頭先生がかわいい。

“青春の空回り"うまいこと言うなあと感心。


『九度目の十八歳を迎えた君と』私の評価は★3

ストーリー  ★★★☆☆  3
キャラの魅力 ★★★★☆  4
衝撃度    ★★★☆☆  3
おすすめ   ★★★☆☆  3

2024年4月4日木曜日

『教室が、ひとりになるまで 』浅倉秋成著 感想・レビュー 最高のクラス、もう二度と会いたくない友達

教室が、ひとりになるまで 

スクールカースト、ヒエラルキー

学生時代、自身の立ち位置がどの層だったかによって、この本の内容の受け止め方が変わると思う。

4人の受取人という非現実的なストーリーの特殊ミステリ。


だけど読み応えあるし、綺麗に終わります。


あらすじ


さようなら。もう二度と会いたくない、××の友達たち。


私立北楓高校のクラスで起きた連続自殺事件。

そのクラスは合同でレク企画を立ち上げる最高のクラスだと思われていた。

「私は教室で大きな声を出しすぎました。調律される必要があります」

彼らは何故、同じ文面の遺書をしたためて自殺をしたのだろうか。

幼馴染の白瀬美月は、怯えながら垣内友弘に話す。

みんな死神に殺された。

次はこずえの番だと。

そんな中、垣内に不思議な手紙が届き、嘘を見破れるという能力を授かる。

3人の死の真相を追いながら、たどり着いた真相とは。


ネタバレ感想

もし、この本を中学生高校生時代に読んでいたらとても苦しくなったかもしれない。

友達と仲の良いフリをするのは疲れる。

強制参加のレク企画。

楽しいのは一部だけ。

俺らは頑張って最高のクラスにしようとしてたんだよという思いは人によっては迷惑なだけ。

偽物の友達ごっこ。

わりと犯人(死神)は早く分かる。

後は、犯人の能力や目的は何なのかに焦点を当て、垣内は一軍の生徒と一緒に動き回る。

読み進めていくうちに、タイトルの「ひとりになるまで」の意味合いが変わって来る。

動機は分かったけれど、犯人はそれだけで3人の生徒を自殺させるのはひどい。

お咎めもないんだよね。

そして八重樫の暴力はちょっと無理。

主人公の垣内が何考えてるのかよく分からないのは、ちゃんと意味があった。

伏線回収はさすが。

美月が綺麗な心の持ち主なのが救われた。

『教室が、ひとりになるまで 』私の評価は★4


ストーリー  ★★★★  4
キャラの魅力 ★★★   3
衝撃度    ★★★   3
おすすめ   ★★★   3




2024年2月7日水曜日

『だってバズりたいじゃないですか』喜友名トト(きゆなとと)著 10秒MV@渋谷



エモいがよく出てくるSNS時代ならではのライトノベル

表紙絵がかわいくて購入。 

2人の美少女と芸術家崩れのやさぐれた主人公が出てくる。


恋愛がテーマではなく、成長物語だと思った。


あらすじ

芸大生の秋都(あきと)は、一生に一度の恋が「感動の実話」として映画化されたことにもやもやしていた。

同じ大学に通う後輩、胡桃沢千歳(くるみざわちとせ)に声をかけられ、バズるMVを取って欲しいと頼まれる。

彼女は音楽系インフルエンサーでちょっとした人気者だった。

最初は渋っていた秋都だが、徐々に制作にのめり込んでいき、AKIとして人気を得る。

過去の恋と現代の生活を交差させながら描かれる、青春ストーリー。


ネタバレ感想

私がエモいという言葉を知ったのは、菅田将暉さん主演のドラマ「3年A組 ―今から皆さんは、人質です―」からです。

そこから爆発的に広がったんじゃないかなあ。

ドラマ人気あったし。

女は才能に惚れると言われているけど、秋都はその通り2人の美少女に好かれます。

カメラマンとしての素質と才能を備えていた彼は言われるがままに動画を撮影し、のめり込んでいきます。

バズるだろう動画を配信しながらも心は闇で閉ざされたまま。

2/3くらいはあまり面白くない。

過去編はうーん。

現代編はiPhoneを駆使したり、秋都の撮影の描写が細かく、簡単に思い浮かべることができたので、作者さんの情景描写のセンスはすごいと思った。

承認欲求の強い千歳の闇の部分に焦点が合ってから、面白くなります。

秋都の撮影の描写が細かく、簡単に思い浮かべることができたので、作者さんの情景描写のセンスはすごいと思った。

芸能界は作り上げた虚像、そして賞の出来レース多いのかなと思わせるシーンも。

秋都も千歳もやりたいこと、やりたくないことをちょっとずつ修正しながら、前に進んでいく姿は良かった。

刺さる小説ではないけどiPhoneを片手に今しか読めないストーリーかも。


『だってバズりたいじゃないですか』私の評価は★2

ストーリー ★★★☆☆  3

キャラの魅力★★☆☆☆  2

衝撃度   ★☆☆☆☆  1

おすすめ  ★★☆☆☆  2

2023年10月31日火曜日

『迷宮山荘は甘く香る』 田畑農耕地著 感想・レビュー 山荘の陰謀を解き明かせ

迷宮山荘は甘く香る

改題前のタイトルの方が素敵 

山荘のイメージ
『壮途の青年と翼賛の少女』を改題。

"ミステリ" "閉ざされた山荘" "青春" "仲間" "作戦" "脱出" と興味をそそられるワードがたくさん。

信じられる友人って良いなと思える作品。


あらすじ


ぼっちの高校生、街端路人(まちばたみちひと)は文芸部の合宿で山荘に来ていた。

そこは、全体的に甘い香りに包まれ、部屋の窓には鉄格子がはまり、正面玄


関から外に出るとそびえ立つコンクリに阻まれて脱出不可能という異様な施設だった。

他の部員達は、施設の異常さに気づいておらず、全く似ていない中年男性を顧問の教師だと思いこんでいた。

街端は、自分と同じ正気のメンバー4人と共に施設内を調べ、脱出計画を立てる。



登場人物

【文芸部】

街端路人        ………二年B組。陰キャ。

冷海瑞(ひやうみみず) ……………一年B組。華奢な日本人形のような容姿。無表情。

三木ちなみ(みきちなみ) …………二年C組。背が高い。元気。護身術に長けている。

丸平揚(まるだいらよう) …………二年D組。坊主頭。工作が得意。

橋立悠一(はしだてゆういち)………二年A組 イケメン。頭が良い。

御山(みやま)    …………………国語教師。文芸部顧問。オッサン先生と呼ばれ、慕われている。


ネタバレ感想

初読み作家さんです。

「たばたのうこうち」と読むそうです。

何でタイトルを変えたんだろう?

甘く香るってストーリーそのままじゃないか。

高校生ぼくない端さんの態度や言動がずっと謎。

街端のもう一人の声みたいな文面があり、時折、彼が饒舌に語ったりとかよく分からなかった。

街端と瑞さんの登下校回想シーンの入り方も??

三木さんに少し護身術を習っただけなのに、そこまで習得できる?と思った。

運動センスが抜群に良いとしても。

ラストは無理矢理納得できるように終わったけども、瑞さんがなぜ街端を気に入ってるのかよく分からなかった。

現実と妄想の境界線がうーんって感じ。

世の中を震撼させる大事件を阻止したストーリーだけど、上手く描き切れてない感じでした。

でも途中までは面白かった。

『迷宮山荘は甘く香る』私の評価は★3


ストーリー   ★★☆☆☆  2
キャラの魅力  ★★☆☆☆  2
衝撃度     ★★★☆☆  3
おすすめ    ★★★☆☆  3

2023年10月17日火曜日

『昨日星を探した言い訳』河野裕著 感想・レビュー 君の嫌いな所、100個

 みんな平等の理想郷を求めて


緑の瞳と黒い瞳を持つ人間が存在する国で、総理大臣になりたい少女と気難しい少年2人の純愛もの。

ちょっとしたことで意地になったり、青春の甘酸っぱさを経験し、遠回りした恋愛を描く。


あらすじ


自分の声質が気に入らず、寡黙を選んだ坂口孝文(さかぐちたかふみ)は、全寮制の名門進学校、中高一貫校・制道院学園に入学。

そこでは寮が紫雲・青月・白雨(しうん・せいげつ・はくう)紅玉・黄苑・黒花(こうぎょく・おうえん・こっか)と6つに別れていた。

中等部2年、緑色の目を持ち、世界的に有名な映画監督、清寺時生(せいじときお)を養父にもつ茅森良子(かやもりりょうこ)が転入。

そんな彼女の夢は総理大臣になること。

幼少時代、少しだけ目に触れた清寺の幻の脚本「イルカの唄」に感化され、真の平等な社会を創ることを目標にしている。

まずは、制道院で生徒会長になることを目指す茅森だが、紅玉寮に入ったことで学校中から嫌われる。

そんな彼女と同じ図書委員になった坂口は、いつしか協力関係を結んでいく。



ネタバレ感想


河野裕さんの作品は階段島シリーズのみ読破。

❝「独りきりなら、歌うしかない」❞

文章表現がとても綺麗で、その言葉を使いたい為にストーリーを作ってるようなスタイルは変わってない。

意味は何となくニュアンスで理解しています。

倫理観にも触れていますが、深く考えたらよく分からない(笑)

タイトルは素敵です。

河野さんは、優等生タイプで意志が強く、ちょっとみんなから一目置かれてる女性が好みなのかな。

2人のメイン主人公が交互に語る形で描かれて、どっちの心情も深く描かれている。

好きだけど嫌いだという茅森と彼女に強く惹かれている坂口との意地の張り合いが見もの。

橋本先生と坂口の口論が印象的。

そこからの制道院学園の伝統行事、拝望会は感動的だった。

歩く距離や長い階段を想像したら参加したくないと思うが、しんどいだけでなく参加したからこそ分かる爽やかな感動が胸を打つ。

好きな人も苦手な人も同じ笑顔を向ける茅森は素晴らしい人物だと思うし、決して前に出ずに清掃員という組織を作り、徐々に人数を増やしていった坂口の手腕も凄いと思う。

でも、私はこの2人が現実にいたら苦手だろうなって気がした(笑)

八重樫、桜井、中川先生とは仲良くなれそう。

茅森を思ってしたことだけど、「イルカの唄」を隠した坂口は自分勝手だと思う。

作中にも触れているけど茅森の貴重な青春の思い出を灰色にしやがってと思った。

イルカに準えて周波数って言葉がやたら出てくるけど素敵だった。


登場人物

坂口孝文 …白雨寮。厳しい祖母に苦手意識を持つ。妹が2人いる。

茅森良子 …児童養護施設で育つ。緑の目を持つ。両親を知らない。

綿貫条吾(わたぬきじょうご) …坂口と同室。車いす。

八重樫明美(やえがしともみ) …緑の目を持つ。綿貫と仲が良い。

桜井真琴(さくらいまこと)  紅玉寮。坂口と小学校から同じ。坂口が昔好きだった相手。茅森を嫌う。

橋本先生 …歴史担当。制道院で人気のある教師。

中川先生 …司書教諭。坂口を気にかけてくれる。

原田祥子 …前副会長。紅玉寮に影響力を持つ。

月島渚  …茅森の実母。清寺映画に4本出演。

清寺時生 …制道院学園出身。映画監督。茅森の養父。



『昨日星を探した言い訳』私の評価は★3


ストーリー   ★★★☆☆  3
キャラの魅力  ★★☆☆☆  2
衝撃度     ★★☆☆☆  2
おすすめ    ★★★☆☆  3



『仮面』 伊岡瞬著 感想レビュー 仮面の下の秘密

  仮面 (角川文庫) ディレクシアを知る 初読みの作家さんでした。 ページ数は多いけどすぐに読み終えました。 グロ描写ありです。 あらすじ 読字障害というハンディキャップを抱えながらもアメリカ留学の後、情報番組を中心にメディアに露出する三条公彦(さんじょうきみひこ)。 知的で爽...