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2023年5月23日火曜日

『この恋が壊れるまで夏が終わらない』杉井光 感想・レビュー バッドエンドは変えられない

終わらない夏を繰り返す


大好きな先輩を助けるために何度もタイムループする主人公。

恋が実らないと分かっていても…。



あらすじ


12時間きっかり、時を遡る力を僕は持っていた。

能力を活用せずに平凡と過ごす僕は、高校で初恋を経験する。

相手は3年生の久米沢純香。

放課後は図書室に入り浸り、彼女が薦める本を読み、気の遠くなるようなルーティン作業を手伝っていた。

そして、彼女に薦められるまま、美術部にも入部する。

だが、夏休み最後の日、先輩は死体となって発見された。


ネタバレ感想


登場人物

柚木啓太(ゆずきけいた)高校一年生

久米沢純香(くめざわすみか)高校三年生。図書委員長。

幾原典明(いくはらのりあき)40代半ば。美術部顧問。

道永(みちなが)高校二年生。美術部幽霊部員。油絵が得意。

燈子(とうこ)啓太の幼馴染。水泳部。


杉井さんの作品は、表現が独特。

綺麗なんだけど想像しにくい。

私の想像力が単純に追い付かなかった。

↓たとえば、こちら電車に乗っているシーン。

❝××の肩口あたりにできた影の向こうで、小さな夜のかたまりを線路沿いの街灯の光が一定のリズムで引っ搔いていた。❞

??

私電車は通勤で毎日利用しますが、どういう状況か分からなかったです。

──心ここにあらずみたいな感じなんかなあ。

でも人物像を本に例えてるのは好き。

❝表紙を見て気に入っただけで、まだ開いてもいないんじゃないのだろうか。❞

──その人の表面だけを気に入っていて中身を全く知らない。


純香先輩は、後半にさしかかるにつれ嫌悪感でいっぱいになる。

主人公がタイムループ(巻き戻し)するたびに、体が悲鳴をあげていく。

どう動いたって先輩が殺されるのを止めることができない。

でも、そこまでして彼女を助ける意味があるのかなと思ってしまった。

ただ、燈子と道永先輩は好感が持てるキャラなので、彼女らと関わる時の主人公は好きだ。

ラストどうなったか、はっきりとは描かれていないため、想像しなくちゃならないんだけど、純香先輩は読めない。

でも、主人公の側にはずっと燈子がいてくれるんだろうな。


『この恋が壊れるまで夏が終わらない』私の評価は★3


ストーリー  ★★★★☆  4
キャラの魅力 ★★☆☆☆  2
衝撃度    ★★★★☆  4
おすすめ   ★★★★☆  4







2023年5月1日月曜日

『世界でいちばん透きとおった物語』杉井光 感想・レビュー 紙の本の魅力

電子書籍不可。タイトルとデザインが美しい

完全に第三者的な立場から読んだ。

透きとおるイメージ

主人公に感情移入はできず、誰に対しても共感できないけれど、読んでよかったと思える透きとおる作品。
あらすじ 

藤阪燈真(ふじさかとうま)は、フリーランスの校正者である母と二人暮らし。

父は、大御所のミステリ作家の宮内彰吾(みやうちしょうご)。

だが、父とは一度も会ったことはない。

なぜなら、父は妻帯者でありながら母と交際していたからだ。

母を亡くし1人で生きていた燈真は、父の訃報を知る。

そして、ある日、宮内の長男から連絡が入る。

その内容は、親父が死ぬ間際に書いていた遺作を探してほしいという依頼だった。


ネタバレ感想


女癖は悪いけれど、ミステリ作家としての父親は超一流。

複雑な思いに駆られながら、燈真は父と関係の深かった3人の女性に会いに行く。

父の大ファンであり、母とも親しくしていた文芸編集者の霧子(きりこ)さんが怪しいなと思いながら読みました。

でも、父がどこかで書いていただろう『世界でいちばん透きとおった物語』という小説の内容を、燈真同様知りたくてうずうずします。

三分咲き
彼は贖罪のつもりで書いたのか、ミステリの最高傑作なのか、それとも書ききれなかった作品なのかが気になるところ。

燈真は、なぜバイトしかしてないんだろう、霧子さんが好きとか無理やんと思いながら読み進めていきます。

燈真の邪魔をする存在が現れた辺りから、ミステリっぽくなって面白くなります。

そして真実にたどり着いたとき、感動の波が押し寄せた。

必ずラストまで読んでほしいし、気付いて欲しい。

タイトルの意味も。

京極夏彦さんの作品も読みたくなった。

電子書籍での出版の予定はないそうです。

『世界でいちばん透きとおった物語』私の評価は★3


ストーリー  ★★★☆☆  3
キャラの魅力 ★★☆☆☆  2
衝撃度    ★★★★★  5 
おすすめ   ★★★★☆  4



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