震える天秤(角川文庫)
己の正義に従うか、良心か
フリーライターの俊藤律(しゅんどうりつ)が主役。
『海神』(わだつみ)では、脇キャラとして登場。
村落のイメージ |
あらすじ
ある日、高齢男性の運転する軽トラックがコンビニに突っ込み、店員を轢き殺す大事故が発生。
事故前後の記憶が定かではない加害者の老人、落井正三(おちいしょうぞう)は、年金暮らしで認知症だと思われた。
事故を取材するライターの俊藤律は、落井が住んでいた埜ヶ谷村(のがだにむら)を訪ねる。
取材に対応してくれた人物たちは、口をそろえて加害者が認知症だと話す。
律は、この村はどこかおかしいと感じるがいまいち決め手に欠けていた。
内方七海(うちかたななみ)の姿を見るまでは。
事故の唯一の目撃者である七海と加害者が同じ埜ヶ谷村出身。
これは偶然なのか。
やがて律はこの事故の真相に辿り着く。
ネタバレ感想
良心の天秤がどちらに触れるか。
私だったら律と同じ選択をしたと思う。
死んでいい人間などいないというのは建前で、反省もしない本当にどうしようもない悪人はいる。
『震える天秤』に登場する石橋昇流(いしばしのぼる)がそんな人物だ。
最初は七海の行動に理解できなかったが、彼を知るにつれて彼女がなぜ律に冷たい態度を取るのか分かった。
七海は噂を鵜呑みにせず、自身で石橋昇流の人となりを判断するなど非常に聡明な少女だった。
昇流の父である宏(ひろし)がはっきりどうなったか描かれてないけど、彼はおそらく。
ずっと善人で生きてきた人が悪人のせいで人生が変わってしまうなんて許せない。
たた、関(せき)がもっとしっかりしていたらなあと思わずにはいられない。
一見関係がない出来事がどんどん繋がっていくのが面白かったし、衝撃だった。
律のキャラを見て、マスコミの取材ってしつこくてこんな感じなんだなあと思った。
律は優しい人物だったんだけどね。
相変わらず人間描写、風景描写、心理描写がうまいと思った染井作品でした。
タイトルが秀逸。
『震える天秤』私の評価は★4
ストーリー ★★★★☆ 4衝撃度 ★★★★☆ 4
キャラの魅力 ★★★☆☆ 3
おすすめ ★★★★☆ 4