海神
インゴットは作り上げたファンタジーなのか
「NPO法人大雪りばぁねっと事件」がモデルになったっぽい。
岩手県にある有人島、天ノ島が舞台。(架空の島)
人の心の弱みに付け込む大悪党遠田(えんだ)が、どのように島に潜り込み、荒らし、彼に制裁を加えることができたのか、島は再生できたかまでを描く。
あらすじ
東日本大震災により甚大な被害を受けた小さな天ノ島。
ボランティア不足の中、現れた迷彩服を着た巨漢の男性。
彼は、テキパキと島民に指示を出す。
やがて、島民ほぼ全員から信頼された遠田は、復興支援金を私利私欲で使い込んでいく。
登場人物
千田来未(せんだくるみ) 震災の日に生まれた子。金塊インゴットを海中から拾う。
遠田政吉(せいきち) NPO法人ウォーターヒューマン代表。
小宮山洋人(こみやまひろと)遠田側近。リース会社ブルーブリッジ代表。
江村汰一(えむらたいち) 遠田の右腕。彼同様迷彩服に身を包む。華奢な少年。
菊池一朗(きくちいちろう) 今日新聞東北総局宮古通信部。天ノ島出身のエリート。
俊藤律(しゅんどうりつ) 東京のフリージャーナリスト。一朗と親しい。
三浦治(みうらおさむ) 消防団リーダー。妻は陽子。
椎名姫乃(しいなひめの) 20歳大学生。東京からのボランティア。遠田のお気に入り。
堤佳代(つつみかよ) ナナイロハウス臨時職員。元助産師。
中村昭久(なかむらあきひさ)ナナイロハウス職員。佳代とは幼馴染。元漁師。
ネタバレ感想
時系列がややこしいけど、その手腕がストーリーを面白くしている。
キャラの描き方が圧倒的に素晴らしく、その人となりが容易に想像できて読みやすい。
震災の描写はとても辛く、悲惨だった。
震災直後、復興が進み出す2年後、そして10年後が3人の視点で描かれていく。
誰も助けてくれない絶望の中、現れた遠田。
彼は復興支援金の1/3である4億2千万を使い込む。
何人かは彼に違和感を覚えたが、考える気力さえも失われていた島民たちは彼の言葉に飲まれていってしまう。
天ノ島と一切関係ない人物になぜ巨額のお金の運用を任せたのか理解に苦しむとはいえない状況がそこで起きていて悲しすぎる。
詐欺の片棒を担ぐ羽目になった姫乃が辛い。
千草がクビになったり、隠し部屋を発見した時点で気付けば良かったのだが、マインドコントロールされていたんだなあ。
そして江村がもっと早く救われて欲しかった。
アレキシサイミアという症状を海神で初めて知った。
少し感情を持ち始めた江村の姿をまだまだ見たかった。
もう姫乃と会うことないのかなあ。
読んで良かったと思える作品。
『海神』私の評価は★4
キャラの魅力 ★★★★☆ 4
衝撃度 ★★★★★ 5
おすすめ ★★★★☆ 4