2024年6月24日月曜日

『ティンカー・ベル殺し』小林泰三著 感想・レビュー 本当は残虐なピーターパン

ティンカー・ベル殺し/創元推理文庫 

ピーターパンのイメージが崩れる

でも原作はこっちが本来の姿。

ピーターパンのヒーローイメージはディズニーさんマジックでした。

グロ描写ありのため、耐性ない人にはおすすめしません(笑)

そして『不思議の国のアリス』の帽子屋たちの永遠のお茶会の会話劇が苦手な方もだめです。

メルヘン殺しシリーズ第4弾。

頭がおかしくなる独特な世界観を持つ。


あらすじ

妖精なんて、虫と同じと考えるピーター・パン。

井森建(いもりけん)は今度はネヴァーランドの世界へ迷い込む。

小学校の同窓会に参加するため帰省した井森たちは、大雪のため旅館に足止めを食らってしまう。

夢の中で井森は〈蜥蜴のビル〉となって、ピーター・パンと妖精ティンカー・ベル、ウェンディと子供たちに出会う。

ピーターは無邪気さゆえに殺人を犯すサイコパスだった。

そして、同窓会のメンバーたちも井森と同じネヴァーランドの住民がいた。


ネタバレ感想


現実世界では旅館を舞台にしたクローズドサークル。

だけど常識が全く通用しないから予測不可能。

このシリーズでは、現実世界と夢の世界のキャラクター同士がリンクし、精神的に影響し合い情報を共有します。

だけど、行動は止めることができず、夢の世界(アーヴァタール)の影響力が強い。

アーヴァタールが生きている限り現実世界で何度死んでも生きているんだから。

逆にアーヴァタールが死んじゃったら現実も=となってしまう。

割と早くピーター・パンが誰のアーヴァタールかは分かります。

だからって彼の悪行を現実世界で止めることができないのが歯がゆい。

ピーター・パンは、無邪気な子供で罪悪感の欠片を全く持ち合わせていない

おまけに短絡的ですぐ人を殺します。

ティンカー・ベルの殺され方が残酷だった。

犯人は分かり切っているのになぜピーター・パンが犯人探しをするの?と疑問のままストーリーは進む。

人魚の仲間殺しとかえぐい。(人魚姫では仲間思いだったはず)

そして、言葉のマジックや思い込みも手伝って見事に騙された。

無限ループに陥った○○は気の毒すぎる。

だけどネヴァーランドの○○のアーヴァタールは幸せだからいいのか。



『ドロシィ殺し』

そして、この『ティンカー・ベル殺し』

その後、『かぐや殺し』が続く予定でした。

順番通り読む方が分かりやすいかも。

続き読みたかったなあ。

小林泰三さんのご冥福をお祈り申し上げます。

『ティンカー・ベル殺し』私の評価は★3

ストーリー ★★★☆☆ 3
キャラの魅力★★★☆☆ 3
衝撃度   ★★★★☆ 4
おすすめ  ★★★☆☆ 3







2024年6月18日火曜日

『鎮魂』染井為人著 感想・レビュー 復讐は幸せにならない、だけど。

鎮魂/双葉文庫

復讐は正義なのか

染井さんは徹底的に取材をして執筆しているという印象。


弟思いの兄の孤独な戦いを描く作品。


あらすじ

世間を騒がせている半グレ集団「凶徒聯合(きょうれん)」のメンバー坂崎(さかざき)が殺された。

坂崎が殺害される前、とあるバーで一般客男性ともめていたと知った警察は、話を聞きに彼の元へ訪れる。

暴力団や半グレ同士の抗争と見て捜査をはじめるが、捜査の網をかいくぐりメンバーが次々と殺害されていった。

いつしかSNSの住民たちは、犯人を崇めだす。

犯人の目的とは?

社会派サスペンス。


登場人物

英介(えいすけ)───────大企業勤め。母や弟思い。

陽介(ようすけ)───────英介の弟。渋谷クラブ襲撃事件の被害者。

深町京子(ふかまちきょうこ)─英介の元恋人。中尾聡之(なかおさとし)正義感が強い元会社員。

中尾聡之(なかおさとし)───正義感が強い元会社員。SNSでバズる。

天野(あまの)────────双伸社(そうしんしゃ)の記者。

古賀光敏(こがみつとし)───警視庁組織犯罪対策部特別捜査隊。凶徒聯合の主要メンバーと顔見知り。

窪塚(くぼづか)───────古賀とタッグを組む若手。肉体改造を行う。正義感が強い。

藤間(ふじま)兄弟───────兄・孔一(こういち)弟・孔二(こうじ)凶徒聯合の宿敵。敗者の肉体の一部に『孔』という文字を刃物で刻む。 

~凶徒聯合構成員~

石神丈一郎(いしがみじょういちろう)──リーダー。指名手配犯。海外に逃亡中。IQ150

坂崎大毅(さかざきだいき)───────不動産会社社長。

小田島大地(おだじまだいち)──────土木会社の代表。

田中博美(たなかひろみ)────────ヒロポンという名で活躍するユーチューバー。

滝瀬仁(たきせじん)──────────芸能プロダクション経営。

水賀谷一歩(みずがやいっぽ)──────渋谷クラブ襲撃事件の主犯として服役中。

阿久津宏信(あくつひろのぶ)

日南康介(ひなみこうすけ)───────AV制作会社経営。

蔵前崇(くらまえたかし)


ネタバレ感想


伏線が散りばめられているのに全然気付かなかった、やられた。

ふと英介って仕事どうしたんだっけとは思っていた。

そこからもしかしたらと思い、いやあり得ないとなって、まじかこれってなった。

そして京子。

彼女も何か悩みを抱えてる描写があってそれが全然分からなかった。

窪塚の態度もしかり。

関わってはいけない人間はいると思った。

それは身近であればあるほど苦痛。

もし石神に出会わなければ、悪ガキのままですんだメンバーもいただろう。

警察が無力すぎてどうしようもなかった。

情報を漏洩させていた人物も驚いた。

そして意外だったのは水賀谷。

TSUTAYA限定特典では水賀谷のその後が描かれていたので、ぜひ読んでほしい。

英介の復讐の正義が聡之にはちゃんと伝わっていないのが苦しい。

正義の定義は人によって違うんだな。

めっちゃ泣けました。

忘れた頃にもう1回読む。

『鎮魂』私の評価は★5

ストーリー  ★★★★☆  4

キャラの魅力 ★★★★★  5

衝撃度    ★★★★★  5

おすすめ   ★★★★☆  4



2024年6月10日月曜日

『六法推理』五十嵐律人著 感想・レビュー ドラマ化しそうなリーガルミステリー

 六法推理(角川文庫)

大学生による無法律運営

はい、作家買いです。

専門用語が欄列されているが身近で起こりそうな案件を取り扱ってるため、勉強になる。

主人公が大学生なので会話劇も楽しく読みやすい短編集。


法律の鬼である行成(ゆきなり)と貧乏学生の戸田(とだ)のコンビ。


あらすじ


霞山(かざん)大学法学部四年・古城行成(こじょう)がゼミ室で運営する「無料法律相談所」(通称「無法律」)に、経済学部三年の戸賀夏倫(かりん)がドアを叩く。

彼女が住む事故物件のアパートは、過去に女子大生が首つり自殺を図っていた。

そのことは承知で住む彼女だが、深夜に赤ん坊の泣き声が聞こえ、真っ赤な手形が窓につくなど、奇妙な現象を解決してほしいと古城に依頼する。

「法律マシーン」と影で呼ばれている古城と、「自称助手」だと首を突っ込む戸賀の凸凹コンビが大学で起きた事件に挑んでいく。

  1. 六法推理 事故物件の悪意の正体を暴け
  2. 情報刺青 リベンジポルノを流出させた犯人は?
  3. 安楽椅子弁護 学際間近に起きた倉庫の火災の原因とは
  4. 親子不知 毒親と縁を切りたい女子大生
  5. 卒業事変 夏倫のカンニング疑惑

登場人物

・古城行成  ───  法曹一家に育ち、家族にも恵まれている。世間知らず。

            法律マシーンと呼ばれるくらい頭が堅い。

・戸田夏倫  ───  バイトに明け暮れる苦労人。フリマファッション。

・小暮葉菜(こぐれはな)夏倫と同じ経済学部。同学部のメンバーと共に"エコノミスト”と    

            いうグループ名で活躍するユーチューバー。人目を惹く容姿。

・三船昇(みふねのぼる)霞山大学理学部数学科四年。行成と同じ高校出身。

・古城錬(れん)─── 行成の兄。検察官。


ネタバレ感想

探偵役の行成が華麗に事件の謎を解くと思っていたら、堅物すぎて最終的に推理を外してしまうのが新しいスタイルで面白い。

親子不知のアパートイメージ

どの短編も続きどうなったのかなというところで終わってしまうのがちょっともやもや。

特に「親子不知」は可哀そうすぎて報われない。

「安楽椅子弁護」の真相や「卒業事変」の教授の処罰はどうなったのかとか。

それでも面白いんですよ五十嵐律人さんの本はやっぱり。

続編も出ているから絶対読む。

ドラマ化したら夏倫のファッションが特に楽しみかも。

行成は水上恒司(みずかみこうし)さんが良さそう。


夏倫は武田玲奈(たけだれな)さんが合いそうって妄想してみました。


『六法推理』私の評価は★4

ストーリー  ★★★★☆   4

キャラの魅力 ★★★★☆  4

衝撃度    ★★★☆☆  3

おすすめ   ★★★★☆  4










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