2023年7月26日水曜日

『アリスとテレスのまぼろし工場』岡田麿里著 感想・レビュー 変化することが許されない世界

アリスとテレスのまぼろし工場

変化は悪。工場に幽閉されたのは狼少女!? 


劇場アニメの原作。

あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の脚本家によるオリジナル作品。

彼女が関わった『凪のあすから』は好きだった。

幻想的なストーリーが好きな人ならハマりそうな世界観。

夜の製鉄所


あらすじ


見伏(みふせ)で暮らす人々は、製鉄所の恩恵を受けて暮らしている。


その町で暮らす中学3年生の菊入正宗(きくいりまさむね)の父も祖父も叔父も製鉄所で働いている。

自分も将来製鉄所で働くだろうと思いながら、正宗は友人たちと受験勉強をしていた。

そんな時、爆音が響き製鉄所が赤く燃え上がる。

変化を禁じられ日々を窮屈に過ごす正宗は、大人びた同級生の佐川睦実(さがわむつみ)に製鉄所の第五高炉にいる野生動物のような少女の世話を頼まれる。

その日から、正宗の心が少しずつ変化し始める。

それは同時に、この世界の均衡が破れる序章だった。  
廃電車






ネタバレ感想



登場人物

菊入正宗        主人公。絵を描くのが好き。中世的な容姿。
時宗(ときむね)    正宗の叔父。正宗の家に入り浸る。
昭宗(あきむね)    正宗の父。見伏の人間にしては珍しい地方私大出。
美里(みさと)     正宗の母。
宗司(そうじ)     正宗の祖父。

佐上衞         見伏神社の跡取り息子。
佐上睦実        目立たないが謎めいた少女。

園部裕子(そのべゆうこ)ショートヘアで体格が良い。睦実に嫉妬している。
           学級委員長。
安見(やすみ)     小柄で甘ったるい声の持ち主。

笹倉(ささくら)    正宗の友人。小太りでお調子者。睦実を気に入っている。
仙波(せんば)     正宗の友人。華奢。
新田(にった)     正宗の友人。大人びている。

五実(いつみ)     第五高炉にいる獣のような臭いを放つ少女。睦実に少し似ている。



アニメで見た方が分かりやすいかなと思える作品だった。

なぜなら、登場人物が多い割にキャラが立っておらず人物関係の把握に時間がかかった。

この人誰だっけと思いながらページを戻ったり。

見伏が閉じ込められた理由と、五実の正体が分かった時は面白くなったけれど、展開が雑。

ラストに向けて感動するでしょ泣けるでしょっていうのが伝わって無理だった。


主役の2人には魅力を感じない。

狼に呑まれることを望んだ仙波が印象的。

それに昭宗、時宗の方が魅力ある描き方だった。

五実を閉じ込めてた理由や、彼女に冷たく接していた睦実の理由もよく分からない。

正宗が結局言語を教えっちゃってるし。

なぜ言葉が話せないのか、行方不明になった年齢の時、話せてたのに?

原作を読まずに劇場版を見た方が良いかも。

色々消化不良。



『アリスとテレスのまぼろし工場』私の評価は★1


ストーリー   ★★☆☆☆ 2
キャラの魅力  ★☆☆☆☆ 1
衝撃度     ★★☆☆☆ 2
おすすめ    ★☆☆☆☆ 1




2023年7月16日日曜日

『完璧な小説ができるまで』川崎七音(かわさきなお) 感想・レビュー 創作の獣とは?誰かの人生を決定的に変える小説を作るために

人気作家監禁事件! 犯人の動機は?


「映画でも漫画でもなく、なぜ小説なのか」

小説に魅了された3人の男女が描かれる。

映画や漫画はイメージが先にできている。

小説だけは読み手のペースでページをめくり、想像することができるとある人物が言う。

自称本好きの私は、なるほどと思った。

なぜ、壮一(そういち)たちは完璧な小説を書くことにこだわったのか?


あらすじ


人気小説家・相崎一歌(あいざきいっか)の監禁事件で逮捕された月村荘一(つきむら)は、暴走したファンではなく高校時代の友人だった。

取調室で根気よく尋問する刑事に、月村は重い口を開く。

すべてを語り終えた先に突きつけられた驚くべき真相とは?


ネタバレ感想


いやー面白かった!!

後半の怒涛の展開に目が離せなかった。

❝二転三転の衝撃!❞

という帯の謳い文句は間違いなかった。

あのキラキラした青春は何だったのか。

突きつけられた真実に絶望し、救いようがなく後を引く。

文芸研究会同好会メンバー

月村荘一 友達がいない。同好会でやっと自分の居場所を見つける。

柊木逸歌(ひいらぎいつか)長い手足に整った容姿を持つ男子。一見陽キャで友人が多い。

相崎姫野(あいざきひめの)話し出すと止まらないムードメーカー



驚くほどこの小説は登場人物が少ない。

もしかしてこの小説もプロットの一部なのでは?と思ってしまった。

創作欲に憑りつかれてしまった3人。

みんなが踊らされていた。

サイコパスの人間と出会ってしまったために人生が台無し。

ラストのページまで飽きることなく読める。

もっと注目されても良い作品。

血を吐くような努力をして本は生みだされていくんだ、作家さんてすごい。



『完璧な小説ができるまで』私の評価は★5


ストーリー   ★★★★★  5
キャラの魅力  ★★★★☆  4
衝撃度     ★★★★☆  4
おすすめ    ★★★★★  5

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