2024年7月29日月曜日

『真夜中のマリオネット』知念実希人著 感想・レビュー 顔が良い容疑者

 『真夜中のマリオネット』集英社文庫

八雲??

表紙デザインが一瞬『心霊探偵八雲』の斉藤八雲(さいとうやくも)に見えた。 

八雲シリーズは鈴木康士(すずきやすし)さん。

こちらの作品は、遠田志帆(えんたしほ)さんでした。

遠田志帆さんは、『Another』(角川文庫)のイメージが強くて、女の子しか書かないと勝手に思ってましたが、

『新・心霊探偵八雲 赤眼の呪縛』(講談社)の装画も担当してました。

鈴木康士さんより遠田志帆さんのイラストの方が肉付きが良いイメージ。

2人とも妖絶で素敵なイラストで好きです。

❝ラスト1頁(ページ)、あなたは必ず絶叫する! 衝撃のクライムサスペンス❞ という謳い文句。

ハードル上げまくってます。


あらすじ

救急医の秋穂(あきほ)が救った少年は、天使か、悪魔か――。

一晩かけて遺体をバラバラにする殺人鬼――通称「真夜中の解体魔」の逮捕に向けて警察は躍起になっていた。

その解体魔に婚約者を殺された秋穂。

メンタルをやられ、ようやく職場に復帰をしたところに重症患者が運ばれる。

その患者は、美貌の少年・涼介(りょうすけ)。

無事、命を救うことができた秋穂だが、刑事は彼が『真夜中の解体魔』だと告げる。

涼介は涙を流しながら僕は罠にかけられたと秋穂に訴えた。

彼に翻弄されながら一緒に真犯人を探す秋穂。

涼介は真犯人に操られた人形なのか、それともマリオネット遣いなのか。


ネタバレ感想


初読みの作家さんです。

ストーリーの詰めが甘く、ラストは予想できた。

まず、主人公でヒロインである秋穂に全く共感できず、おいおいとツッコむ所多数でした。

涼介がもし美貌の少年じゃなかったら、秋穂はこんな行動するかなと疑問。

結局顔かよという描写がちらほら。

婚約者をを殺したかもしれない少年に寄り添ったり、言動もイライラする。

倉敷と雪絵さんはなぜわざわざ風俗店で会い、彼は出禁になったのか?

桐生さんと黒崎を殺害する動機が弱い。

遺体の一部で作ったとされるオブジェはどこ?

そして一晩かけてわざわざバラバラにする理由は?

秋穂の婚約者に犯人はどう接触したんだろう?

矢内と紅さんは良い人だった。

辻褄合わせが納得できない作品でした。

ただ、続きが気になってラストまでドキドキはさせてもらえた。

第一章 深夜の来訪者
第二章 シュレーディンガーの少年
第三章 人形たちの輪舞曲

『真夜中のマリオネット』私の評価は★2


ストーリー   ★★☆☆☆  2
キャラの魅力  ★★☆☆☆  2
衝撃度     ★★☆☆☆  2
おすすめ    ★★☆☆☆  2


2024年7月16日火曜日

『俺ではない炎上』浅倉秋成著 感想・レビュー 自分たちは悪くない

 『俺ではない炎上』双葉文庫

SNSの成りすまし

他人事とは思えない。

アカウントが乗っ取られるのをたまに聞くし。

犯人は誰?

そして、泰介(たいすけ)は無実を証明できるのか。

コンテナハウスイメージ

誰も冤罪を信じてくれない、逃げるしかない。

犯人は狡猾。

スピード展開の現代の逃亡劇。


あらすじ

ある日、たいすけというアカウントが殺害を仄めかす写真を投稿し炎上する。

大手ハウスメーカーの営業部長である山縣泰介(やまがた)は、特定犯によって実名と顔写真を晒され、「女子大生殺害犯」として大炎上。

かの泰介はネットに弱く、問題のアカウントを作ったことも投稿したことなど全くなかったが、会社の人間や家族、警察、誰一人として彼のことを信じてくれなかった。

逃げなければいけない。

泰介は必死の逃亡を続けながら、彼を陥れた犯人を探そうとする。


ネタバレ感想

騙された―。

こんなラスト絶対分からない(笑)

貫井徳郎さんの『慟哭』を思い出した。

後で、○○ターンだけ読み返した。

巧みすぎるわ(笑)

序盤は無実の罪で終われる泰介が不憫で読むのが苦しかったが、サクラ(んぼ)登場で一気に面白くなり、後半怒涛の展開。

誰もが自分が正義だと思っている。

自分たちは正しい。

間違っていない。

この本を読んで、自分自身を振り返ってみようと思った。

悪いと思ったら謝ろう、修正しよう。

山縣泰介はきっと変わる。

人に恨みなど買うわけがないと思っていた彼への評価がことごとく違っていたのも面白い。

イヤミスじゃなくて良かった。

シーケンの青江(あおえ)さん好きすぎる(笑)


『俺ではない炎上』私の評価は★5

ストーリー  ★★★★★  5

キャラの魅力 ★★★☆☆  3

衝撃度    ★★★★★  5

おすすめ   ★★★★★  5

2024年7月8日月曜日

『原因において自由な物語』五十嵐律人著 感想・レビュー 不気味な装画

 『原因において自由な物語』/講談社文庫

結果ではなく過程が重要

最初、五十嵐律人さんの本にしては面白くないなって思った。

廃病院

でもそう思ってしまってごめんなさい。

プロローグ、ストーリー構成お見事です!

junaida(じゅないだ)さんの装画素敵。

不気味なイラストだなって思いながらも惹かれる。

現実にある物をダークな産物にしたイメージ。


あらすじ


人気作家の二階堂紡季(にかいどうつむぎ)には、秘密があった。

それでもこの作品は書き続けなければいけない。

私立北川高等学校。

顔面偏差値アプリ(ルックスコア)のせいで学校内の立場が危うくなった佐渡琢也(さわたりたくや)、朝比奈憂(あさひなうれい)、永誓沙耶(ながちかさや)は写真部に所属していた。


ネタバレ感想

タイトルの意味が何度読んでも理解できず難しいです(笑)

琢也が主役かと思ったら紡季が綴る作中作だった。

だが、担当編集者に現実に起きた事件と酷似していると言われ、彼女にプロットを提供していた想護(そうご)の廃病院での事故。

それは琢也が転落した場所と同じだった。

紡季は何を書かされようとしていたのか。

そして想護は何を調べようとしていたのか。

『法廷遊戯』のキャラが2人再登場しているのと『六法推理』の事件が例えにあげられていたので、もう1度読みたくなった。

物語の終盤、散らばっていた伏線が綺麗に回収されていく。

❝「いじめ」はウィルス、宿主が強くなると他者に移る❞

着地点が予想できず面白かった。

ただ、沙耶が何を考えているのかはよく分からなかった。

琢也が救われず、紡季がいるとはいえ想護の未来についてもやもや感は残るものの、すごく考えさせられる作品だった。

スクールロイヤーの存在も初めて知った。


『原因において自由な物語』私の評価は★5


ストーリー  ★★★★☆ 4
キャラの魅力 ★★★★☆ 4
衝撃度    ★★★★★ 5
おすすめ   ★★★★★ 5

『仮面』 伊岡瞬著 感想レビュー 仮面の下の秘密

  仮面 (角川文庫) ディレクシアを知る 初読みの作家さんでした。 ページ数は多いけどすぐに読み終えました。 グロ描写ありです。 あらすじ 読字障害というハンディキャップを抱えながらもアメリカ留学の後、情報番組を中心にメディアに露出する三条公彦(さんじょうきみひこ)。 知的で爽...