2024年2月15日木曜日

『マッチング』内田英治著 感想・レビュー #アプリ婚 の愛が試される 天使か悪魔か


 仕掛けられた罠に気付くことができるのだろうか

2024年2月23日公開 映画「マッチング」原作小説

監督自ら書き下ろした小説なので、読みやすい。
流氷の天使「クリオネ」


配役も分かっているので想像しながら読めた。

吐夢(とむ)のキャラが強烈。

仕掛けられた罠に気付くことができるのだろうか。

映画も見たくなった。

あらすじ


ウェディングプランナーの輪花(りんか)は、幼いころ母が出て行ったため、恋愛に奥手。

心配する同僚の尚美から、マッチングアプリ『ウィルウィル』に登録するよう促される。

アプリでマッチングした男性と水族館で待ち合わせした輪花は、現れた男性の吐夢(とむ)を見て、異常者だと慄く。

その日以来吐夢にストーキングされる輪花は、アプリを開発した影山に相談する。

その頃、アプリ婚をした夫婦が、次々と惨殺される事件が世間を賑わしていた。

ネタバレ感想



吐夢(とむ)が分かりやすいほど怪しい

クリオネの捕食姿に興味を持ち、バッカルコーンを初めて知った。

一度動画で見るのおすすめです。

輪花のキャラには終始イライラ。

周りを信用しすぎるので疑えよと(笑)

せっかく美人なのに彼女の周りは変な男しかいない。

恩師の片岡や尚美は彼女と仲良かっただけなのに。

片岡に関してはちゃんと愛を持っていたのになぜ殺されたんだと思ったが、後に判明。

尚美は脇が甘すぎたなあ。

吐夢はストーカーはするが、輪花を傷つけませんと飄々と言ってのける様子は、なぜか憎めず微笑ましくすら感じてしまった。

その彼の描き方がすごくうまい。

輪花が、彼のことを憎めなくなってきているのが伝わる。

そして、明かされる全ての謎。

途中からこいつが怪しいんじゃないかと思って読んでいたけど、色々騙された。

もう心も囚われてしまって逃げられないね。

悪の根源は父なのか。

面白かった。



『マッチング』私の評価は★4


ストーリー  ★★★★☆  4
キャラの魅力 ★★★★☆  4
衝撃度    ★★★★☆  4 
おすすめ   ★★★★☆  4













2024年2月7日水曜日

『だってバズりたいじゃないですか』喜友名トト(きゆなとと)著 10秒MV@渋谷



エモいがよく出てくるSNS時代ならではのライトノベル

表紙絵がかわいくて購入。 

2人の美少女と芸術家崩れのやさぐれた主人公が出てくる。


恋愛がテーマではなく、成長物語だと思った。


あらすじ

芸大生の秋都(あきと)は、一生に一度の恋が「感動の実話」として映画化されたことにもやもやしていた。

同じ大学に通う後輩、胡桃沢千歳(くるみざわちとせ)に声をかけられ、バズるMVを取って欲しいと頼まれる。

彼女は音楽系インフルエンサーでちょっとした人気者だった。

最初は渋っていた秋都だが、徐々に制作にのめり込んでいき、AKIとして人気を得る。

過去の恋と現代の生活を交差させながら描かれる、青春ストーリー。


ネタバレ感想

私がエモいという言葉を知ったのは、菅田将暉さん主演のドラマ「3年A組 ―今から皆さんは、人質です―」からです。

そこから爆発的に広がったんじゃないかなあ。

ドラマ人気あったし。

女は才能に惚れると言われているけど、秋都はその通り2人の美少女に好かれます。

カメラマンとしての素質と才能を備えていた彼は言われるがままに動画を撮影し、のめり込んでいきます。

バズるだろう動画を配信しながらも心は闇で閉ざされたまま。

2/3くらいはあまり面白くない。

過去編はうーん。

現代編はiPhoneを駆使したり、秋都の撮影の描写が細かく、簡単に思い浮かべることができたので、作者さんの情景描写のセンスはすごいと思った。

承認欲求の強い千歳の闇の部分に焦点が合ってから、面白くなります。

秋都の撮影の描写が細かく、簡単に思い浮かべることができたので、作者さんの情景描写のセンスはすごいと思った。

芸能界は作り上げた虚像、そして賞の出来レース多いのかなと思わせるシーンも。

秋都も千歳もやりたいこと、やりたくないことをちょっとずつ修正しながら、前に進んでいく姿は良かった。

刺さる小説ではないけどiPhoneを片手に今しか読めないストーリーかも。


『だってバズりたいじゃないですか』私の評価は★2

ストーリー ★★★☆☆  3

キャラの魅力★★☆☆☆  2

衝撃度   ★☆☆☆☆  1

おすすめ  ★★☆☆☆  2

2024年2月1日木曜日

『花束は毒』織守きょうや著 感想・レビュー 過去を暴くのは要か否か

花束は毒

知りたくなかった

脅迫されているのになぜか犯人探しを躊躇する元家庭教師。

僕が知っている真壁はイケメンで明るく、常にみんなの中心にいるような人物だった。

結婚を控えた彼を助けてあげたかっただけなのに。

ミスリードを呼ぶミステリ。

有害植物

あらすじ

 脅迫され続ける真壁。

そんな彼を助けたいと思った検察官志望の木瀬は、探偵事務所のドアを叩く。

中学時代、木瀬は探偵見習と名乗る北見理花と出会っていた。

だが、真壁は探偵を雇うことに躊躇する。


ネタバレ感想

初読みの作家さんです。

主人公の木瀬が正義感たっぷりの真っ直ぐな青年。

彼のような人物は人を疑うことを知らない。

同じように家庭環境に恵まれ、頭も良く、容姿を整っていた真壁。

だが、彼はある事件をきっかけに人生が180度変わり、ひっそりと生きていく。

そんな彼と偶然出会い、昔の縁から助けようとする僕。

真壁がなぜ躊躇するのか。

彼は華やかな医大生時代、強姦事件を起こしていたのだ。

果たして彼は冤罪なのか。

事件を紐解いていくうちに行き当たる驚愕の真実。

木瀬が探偵を雇い、費用も負担するなんて良い子過ぎるし、美少女探偵の登場とか現実味ない設定だけど、ストーリーがしっかりしていてちゃんと読み応えがあった。

「知りたくなかった」と木瀬が北見先輩に言うプロローグ。

それがこんな形になって戻って来るなんて。

そしてタイトル回収。

背中がぞくっとしました。

そして私が木瀬の立場ならどうしたかと考えてしまった。

面白かった。


『花束は毒』私の評価は★5


ストーリー ★★★★☆ 4
キャラの魅力★★★★☆ 4
衝撃度   ★★★★★ 5
おすすめ  ★★★★★ 5

2023年11月26日日曜日

『隣人X』パリュスあや子著 感想・レビュー  惑星難民X

 隣人X

惑星難民Xは害となるのか?

ひとことで言えば、読みやすい。

惑星難民Xに侵略されるという話ではなく、3人の女性の人生が描かれる。

仕事、恋愛など。

時に交差したり。

上野樹里さん、林遣都さん主演で映画公開。

設定など変更されているようなので、そちらは期待。


あらすじ

20xx年、惑星難民xの受け入れがアメリカで宣言される。

どこか他人事だと思っていた日本国内においても「惑星難民受け入れ法案」が可決し、連日そのニュースで持ち切りだった。

「惑星生物x」は、対象物の見た目から考え方まで全てスキャンできる。

20代の平均的な男女をスキャンさせ、「惑星難民x」として、社会に溶け込ませることをついに発表。

新卒派遣として有名企業で働く、土留紗央。

早朝のコンビニと宝くじ売り場をかけもちする柏木良子。

そして、ベトナム人留学生のリエン。

環境や境遇が異なる女性3人が、そんな社会でどう生きているのかを描く。


ネタバレ感想

リエンが一番応援したいかな。

良子も紗央も好きになれない女性像だった。

彼女たちに関わる男性は暴力的で身勝手な人物が多いのだが、良子の父はカッコいいと思った。

惑星生物xが彼女たちにどのように影響するかと思いきや関係あるのは良子だけで、後の2人は特に絡まない。

知らず知らずに人間の中に混ざっているXだが、今まで悪影響もなくさらに自身がXだと気付かない人間もいる。

Xの設定いるんかなと思うくらい何が言いたいのかよく分からないストーリーだった。

スクラッチの答えは知りたかったな。


『隣人X』私の評価は★2

ストーリー  ★★☆☆☆  2

キャラの魅力 ★★☆☆☆  2

衝撃度    ★★☆☆☆  2

おすすめ   ★★☆☆☆  2




2023年11月15日水曜日

『愛に殺された僕たちは』野宮有著 感想・レビュー 共依存計画殺人

愛に殺された僕たちは

絵日記殺人──全ては毒親から逃れるための

願ったのはそう遠くない街へ2人で遊びに行くこと。

そんなことも許されない2人の哀しい殺人計画の顛末が描かれた衝撃の青春小説。


あらすじ


高校生の灰村瑞貴(はいむらみずき)は、義理の母と彼女の恋人から虐待されていた。

彼は父と同じ、多額の保険金を賭けられいる。

同じクラスの逢崎愛世(あいさきまなせ)は、女子からいじめの標的にされていた。

包帯で身を包む彼女は、父親の歪んだ愛情に苦しめられ、過度に束縛されていた。

夕刻の公園のブランコで、2人は言葉を交わす。

そして、廃ビルで見つけた絵日記を使い、殺人鬼に親たちを殺させる計画を立てた。

小さな町で次々と起こる不可解な事件。

身勝手な愛に苦しめられていた2人の行く末は?


ネタバレ感想


2人の家庭環境が劣悪すぎる。

愛世が異常な父親の愛に殺されるというのは分かったが、瑞貴がやたら愛に殺されるっていう文面が出てきてその辺よく分からなかった。

側で守ってくれるはずの親が異常なので、他人に助けを求めることができなかったのが悲しい。

2人とも親から離れて暮らす選択もできたはずだったのに。

夕焼けやブランコなど幻想的な雰囲気と真逆な会話内容の対比が特徴的。

事細かに情景描写が描かれているが、2人の容姿の特徴はなかった。

恐らく2人とも、どこにでもいるごく普通の高校生なんだろう。

絵日記の設定がジョジョのオインゴボインゴを彷彿させたのは私だけではないはず。

絵日記殺人の描写からストーリーが格段に面白くなった。

ラストは余韻を残す形で終わる。

逢崎の選んだ道は、瑞貴と共になんだろうな。

巻き込まれた他の人がかわいそう。

読後すっきりしたい方にはお薦めできないなあ。

タイトルがちょっと重いかな。

2人は出会って良かったのかな。

『愛に殺された僕たちは』私の評価は★3


ストーリー  ★★★☆☆ 3
キャラの魅力 ★★☆☆☆ 2
衝撃度    ★★★★☆ 4
おすすめ   ★★☆☆☆ 3




2023年11月7日火曜日

『不可逆少年』五十嵐律人著 感想・レビュー 手を差し伸べてくれる大人を見極めろ 

不可逆少年

生配信の殺人

 「スタートラインの後ろから走り始めたほうが、視野は広くなる。」❞

印象的だったセリフ。

殺害された大人3人は全員クソ。

少年刑務所(14歳~)

だけど。

狐のお面が印象的な少年犯罪。

そして、闇を抱えた少年たちに真摯に向き合おうとする大人が描かれた法廷ミステリ。


あらすじ

殺人犯は、13歳。
法は彼女を裁けない――。

14歳になると罰せられるから今しかない。
人の痛みが分からないAIのような少女


みんなが恋人を作ってドキドキするように、人を殺してドキドキしたい。

家庭裁判所調査官・瀬良真昼(せらまひる)は、フォックス事件を扱う裁判所に異動となる。

彼は、どんな少年も見捨てないと信念を持つ。

だが、狐面の少女が犯した殺人事件の被害者遺族、加害者家族は全員同じ高校だった。

事件の真相に迫りながら、自身の信念が大きく揺らいでいく。


ネタバレ感想


法廷遊戯より読みやすいが、読後はすっきりしない。

綺麗事で終わり過ぎてファンタジー化。

治療しても無理。

外に出したらいけない人物がいる。

少年だからって許されるのは間違いだと言ってほしかったな。

だから、主任の早霧(さぎり)の考えに共感。

ある意味妹より恐ろしい姉が逮捕されず、普通に生活しているのは恐ろしい。

その間、誰かを不幸にしているかもしれない。

漠(ばく)や茉莉(まり)はやり直せると思うが、フォックス姉妹は世の中に出してはダメだ。

姉妹の家庭環境、真昼の少年時代をもっと詳しく描いてほしかった。

周りにまともな大人がいてもフォックス姉妹は無理だと思う。

何も響いていない。

「やり直せるから少年だよ」は綺麗な言葉だけど、もやもやする。

犯罪を犯した人物より、劣悪な家庭環境で過ごしている少年少女たちを先に救ってほしいと思う。


『不可逆少年』私の評価は★3


ストーリー  ★★★★☆ 4
キャラの魅力 ★★★☆☆ 3
衝撃度    ★★★★☆ 4
おすすめ   ★★★☆☆ 3


2023年10月31日火曜日

『迷宮山荘は甘く香る』 田畑農耕地著 感想・レビュー 山荘の陰謀を解き明かせ

迷宮山荘は甘く香る

改題前のタイトルの方が素敵 

山荘のイメージ
『壮途の青年と翼賛の少女』を改題。

"ミステリ" "閉ざされた山荘" "青春" "仲間" "作戦" "脱出" と興味をそそられるワードがたくさん。

信じられる友人って良いなと思える作品。


あらすじ


ぼっちの高校生、街端路人(まちばたみちひと)は文芸部の合宿で山荘に来ていた。

そこは、全体的に甘い香りに包まれ、部屋の窓には鉄格子がはまり、正面玄


関から外に出るとそびえ立つコンクリに阻まれて脱出不可能という異様な施設だった。

他の部員達は、施設の異常さに気づいておらず、全く似ていない中年男性を顧問の教師だと思いこんでいた。

街端は、自分と同じ正気のメンバー4人と共に施設内を調べ、脱出計画を立てる。



登場人物

【文芸部】

街端路人        ………二年B組。陰キャ。

冷海瑞(ひやうみみず) ……………一年B組。華奢な日本人形のような容姿。無表情。

三木ちなみ(みきちなみ) …………二年C組。背が高い。元気。護身術に長けている。

丸平揚(まるだいらよう) …………二年D組。坊主頭。工作が得意。

橋立悠一(はしだてゆういち)………二年A組 イケメン。頭が良い。

御山(みやま)    …………………国語教師。文芸部顧問。オッサン先生と呼ばれ、慕われている。


ネタバレ感想

初読み作家さんです。

「たばたのうこうち」と読むそうです。

何でタイトルを変えたんだろう?

甘く香るってストーリーそのままじゃないか。

高校生ぼくない端さんの態度や言動がずっと謎。

街端のもう一人の声みたいな文面があり、時折、彼が饒舌に語ったりとかよく分からなかった。

街端と瑞さんの登下校回想シーンの入り方も??

三木さんに少し護身術を習っただけなのに、そこまで習得できる?と思った。

運動センスが抜群に良いとしても。

ラストは無理矢理納得できるように終わったけども、瑞さんがなぜ街端を気に入ってるのかよく分からなかった。

現実と妄想の境界線がうーんって感じ。

世の中を震撼させる大事件を阻止したストーリーだけど、上手く描き切れてない感じでした。

でも途中までは面白かった。

『迷宮山荘は甘く香る』私の評価は★3


ストーリー   ★★☆☆☆  2
キャラの魅力  ★★☆☆☆  2
衝撃度     ★★★☆☆  3
おすすめ    ★★★☆☆  3

『仮面』 伊岡瞬著 感想レビュー 仮面の下の秘密

  仮面 (角川文庫) ディレクシアを知る 初読みの作家さんでした。 ページ数は多いけどすぐに読み終えました。 グロ描写ありです。 あらすじ 読字障害というハンディキャップを抱えながらもアメリカ留学の後、情報番組を中心にメディアに露出する三条公彦(さんじょうきみひこ)。 知的で爽...