2023年6月21日水曜日

『六人の嘘つきな大学生』浅倉秋成 感想・レビュー 綺麗な人間などいない

 就活最終選考!選ばれたエリート6人の嘘と真実


最高のチームだったはずの6人。

告発封筒をきっかけに、培った関係性が脆く崩れ落ちていく様を描いたミステリ。

面接官と就活生イメージ

誰にも咎めらない人生を歩んだ綺麗な人間などいない。

人は簡単に堕ち、自暴自棄になり、誰も信用できなくなる。

犯人は誰?そしてその意図とは?

何度も騙され裏切られる──。


あらすじ

成長著しいIT企業「スピラリンクス」の初の新卒採用。

狭き門を掻い潜り、最終選考に残った六人。

彼らに与えられた課題は、一カ月後までにチームを作り上げ、ディスカッションをするというものだった。

その結果、全員採用もあり得ると鼓舞され、一同は交流を深め、それぞれの得意分野を駆使し、最高のチームへと成長する。

だが、本番直前に課題の変更がメールされ、愕然とする。

企業イメージ

それは、「ディスカッションで一人の内定者を決める」という内容だった。

六人は、ひとつの席を奪い合うライバルになってしまう。

そして当日、最終議論が進む中、封筒が発見される。

そこには個人名と共に6通の告発文が入っていた。


ネタバレ感想

登場人物

波多野祥吾(はたのしょうご)── 立教大学経済学部。物事を俯瞰するのが得意。嶌に想いを寄せている。 

九賀蒼太(くがそうた)── 慶応大学総合政策学部。爽やかな好青年。容姿端麗。リーダーシップを早々に発揮。

袴田亮(はかまだりょう)── 明治大学国際日本学部。ガタイがいい。高校時代は野球部主将。場を和ます達人。

矢代つばさ(やしろつばさ)── お茶の水女子大学教育学部。国際文化を学び、知り合いが多い。語学力に自信あり。モデル風美人。

嶌伊(しまいおり)── 早稲田大学文学部。小柄で色白。清純系美人。

森久保公彦(もりくぼきみひこ)── 一橋大学社会学部。秀才。やや無口。眼鏡をかけている。

人事採用担当の裏の顔も見える。

相手の本質を見抜くのは100%無理。

落とした学生の中に優秀な奴は1万%いた。
月の裏側は汚い?


バイトリーダー、サークルリーダー、ボランティアリーダ

ーを務めてたと豪語するのは面接あるあるで、しっかり

バレているんだと思った。

大学生の時にこの本に出合いたかったなー。

何回も騙されて展開が読めなかった。

たくさんあっただろう伏線も全然気付かなかった。

再読してもっと深く読みたい。




↓↓ 本当にネタバレするので注意 ↓↓


私なりに疑問に思ったことを自己解決してみたが、違う意見もあるかも。

Q:波多野はなぜ封筒の処分をしなかった?

A:ゲームソフトを返し忘れるぐらいだから、単純に忘れてた…?



Q:嶌は波多野が好き?

A:波多野の腹黒さを知った為、妹に嘘をついた。

  嶌は、久賀に俺のことを見てたよね?と言われていた。
  
   波多野妹に、票は好きな人に入れると言われ嶌は、鋭いと思った。そのことから、
 ずっと久賀に投票していた嶌は彼が好きだったと分かる。


Q:波多野の罪は?

A:分からないまま。


Q:嶌は、波多野の前でなぜ泣いた?

A:ジャスミンティーを印象付けるためか、月の伏線を使いたかったからか??


Q:嶌は、なぜ就活生を◎に変更した?

A:疑うことを知らない彼女がどう変わっていくか見届けるため??



私の印象の変化


キャラの印象がころころ変わり、何度も騙される。

ある一面だけを見て、その人を良い人、悪い人と決めつけるのは良くない。

それを月の裏側に例えていたので分かりやすかった。

矢代と袴田が良い人に変わった。

久賀は、嶌目線なので何とも。犯人だしね。


『六人の嘘つきな大学生』私の評価は★5


ストーリー  ★★★★★ 5
キャラの魅力 ★★★★☆ 4
衝撃度    ★★★★★ 5
おすすめ   ★★★★★ 5


2023年6月15日木曜日

『僕が愛したすべての君へ 』乙野四方字 感想・レビュー 朝食におにぎりを選んだ現実とパンを選んだ世界

 並行世界

人間は日常的に無自覚に意識のみが並行世界に移動する。

その際、時間の移動はない。

この移動を『パラレル・シフト』と呼ぶ。

そして、僕が愛した相手はゼロ世界の彼女なのか…。


あらすじ

研究所イメージ

人間が少しだけ違う並行世界間を移動していると実証され

された世界。

両親が離婚し、母と暮らす高崎暦(たかさきこよみ)は、超進学校に入学し、友達を作ろうと励む。

その目論見は失敗し、彼は未だに友達を作れずぼっちのままだった。

そしてある日、新入生代表で挨拶をした瀧川和音(たきがわかずね)から、突然声をかけられ戸惑う。

彼女は85番目の世界から来たといい、そこで2人は恋人同士だと話し始める。


ネタバレ感想

本当に並行世界があるかのように描かれていて、尚且つストーリーは無理なく進む。

専門用語の羅列はあるが、数学や物理が苦手でも難なく読めた。

ここに置いていたはずの物がないとかいう現象は隣の世界に移動していたからだと説明があり、本当にこの設定あり得るんじゃ…と思ってしまった。

見ず知らずの人間が幸せと聞いて僕も嬉しい、そういう人生を歩めて良かったって言えるって本当素晴らしい。

ラノベっぽいけれど刺さる言葉があった。

愛した相手をサイコロにたとえ、何番目の彼女でも可能性のすべてを愛すって素敵。

待ち合わせ場所に現れた少女と老婦人の正体が謎のまま。

君を愛したひとりの僕へ』を読んだら分かるのかな。


『僕が愛したすべての君へ 』私の評価は★4


ストーリー  ★★★★☆ 4
キャラの魅力 ★★★☆☆ 3
衝撃度    ★★★★☆ 4
おすすめ   ★★★★☆ 4


2023年6月8日木曜日

『蒼き太陽の詩2 アルヤ王国宮廷物語』 日崎アユム 感想・レビュー ユングヴィに恋の予感?

裏切り者は誰だ──? 

表紙はユングヴィ。

2巻です。

今回は十神剣内の裏切り者とユングヴィの恋?にページを割いていた。



あらすじ


アルヤ王国は帝国に支配されながらも、住民たちは次期国王誕生に思いを馳せていた。

そんな中、国王候補であるフェイフューは剣術を磨き、兄のソウェイルは若干焦りを感じ始める。

そしてソウェイルの命が狙われる事件が発生。

帝国の総督であるウマルは、十神剣内に裏切り者がいると知る。



ネタバレ感想


ユングヴィの営み関係は読みたくなかったなー。

剣士として頑張る彼女を見たかったのに。

そして鈍感すぎるのも腹立つ(笑)

彼女はヒロイン扱いなのか。

フェイフューがどんどん変わっていった。

ソウェイルより自身が優れてると気付き始めたか。

それとも絶世の美少年の紫将軍と行動を共にしているから自信が付いたのか。

ソウェイルが語り手とならないから分からないな。

ソウェイルに主人公感はなく、彼は蚊帳の外でストーリーが進む。

そして、ウマルが意外に良い人だと分かった。

忠誠を誓ったと帯にあったが、十神剣のそこまでの忠誠心は描かれていない。

エルが一番かわいそうだった。

そして、ユングヴィの言動が受け付けない。

ナーヒドとテイルムは役立たずで、ラームが頭角を現していた。


『蒼き太陽の詩2 アルヤ王国宮廷物語』私の評価は★1


ストーリー  ★★☆☆☆   2
キャラの魅力 ★☆☆☆☆   1
衝撃度    ★★☆☆☆   2
おすすめ   ★★☆☆☆   2







2023年6月6日火曜日

『蒼き太陽の詩1 アルヤ王国宮廷物語』日崎アユム 感想・レビュー 選ばれた剣士たち

 双子の王子の争い

剣が使う人を選ぶというアーサー王伝説に絡め、仲の良い双子の兄弟の争いがどうなるか気になるところ。

1巻の表紙は燃え立つような蒼い髪の持ち主、ソウェイル。

カバー絵はとても魅力。


あらすじ

砂漠の楽園アルヤ王国が、サータム帝国の属国となって三年。

かの戦乱を生き延びたのは第二王子フェイフューだけと思われていた。

だが、密かに王妃から託された第一王子ソウェイルを赤将軍ユングヴィが匿っていた。

アルヤの民の心の拠り所である『蒼き太陽』の帰還に喜ぶ宮廷だったが、帝国の総督ウマルは、彼ら王子二人に残酷な条件を突きつけた。

果たして王に相応しいのはソウェイルかフェイフューか、波乱の物語が開幕。

女将軍イメージ


ネタバレ感想

戦いメインというよりは、人間関係を重視しているようで、1巻まるごとプロローグという感じ。

ストーリーはさほど進まず、人物紹介のような感じ。

視点がころころ変わるし、キャラが多いので少し混乱。

ユングヴィの性格が受け入れられるかどうかでストーリーにハマれるか決まりそう。

彼女の行動にいちいち苛ついてしまう。

さらに、十神剣の将軍たちの掛け合いが少し寒く、しつこい。

双子のどちらかが性格悪いのかなと思ったけど、どちらも良い子なのが意外。

頭が良く王子の器にぴったりなのが、フェイフュー。

見た目と剣の声を聞くという素質を持っているのがソウェイル。

長い間不在だった紫将軍の候補が現れた辺りから面白くなった。

王子どちらかの視点で読みたいな。

続きを読むかどうか迷うが、王子たちがどう争っていくのか気になるし、2巻購入済みなので読んでみる。

『蒼き太陽の詩1 アルヤ王国宮廷物語』私の評価は★2

ストーリー  ★★★☆☆  3
キャラの魅力 ★★★☆☆  3
衝撃度    ★★☆☆☆  2
おすすめ   ★★★☆☆  3

2023年6月4日日曜日

『薔薇のなかの蛇』恩田陸 感想・レビュー 少女期終了、舞台はイギリスへ

 ゴシックミステリ。「理瀬シリーズ」最新作。

今回は冒頭からトルソー事件が起き、きな臭い。   

挿絵が多いのは嬉しい。

雰囲気作りは最高で、このシリーズやっぱり大好きだと再確認。


あらすじ

アリスは、友人のリセ・ミズノを、イギリスの田舎にある「ブラックローズハウス」と呼ばれる館に招待する。

その館は、国家の経済や政治に太いパイプを持つ貴族・レミントン一家が所有していた。

アリスの兄であるアーサーやデイヴと交流を深め始めるリセだが、その周辺では、首と胴体が切断された遺体が見つかり、世間を騒がしていた。

屋敷の主のオズワルドが誕生日に一族に伝わる聖杯を披露するのでは、興味津々の招待客。

ところが、敷地内で第二の死体が発見される。


ネタバレ感想


登場人物

リセ ──── 図像学に興味がある東洋人。禍々しい美しさを放つ。

アーサー ── レミントン家長男。S研究所に内定。思慮深い。

デイヴ ─── レミントン家次男。金融業界志望。リセを気に入る。

アリス ─── 考古学を選考。リセをブラックローズハウス招待。

聖なる魚


オズワルド・レミントン 屋敷の当主。一族の中心人物。

エミリア ── アーサーたちの上の妹。母と仲が良い。

アマンダ ── エミリアが連れてきた友人。アーサーを気に入っている。

キース ─── アーサーたちの年の離れた従兄弟。スタジオミュージシャン。

アレン ─── アーサーたちの叔父。長身。歴史学者。

ヨハン ─── 音楽家。


探り合う人間関係。

起きる事件は禍々しく不気味。

からくり屋敷。

さらに脅迫の手紙、密室の出来事、犯人はこの中にいる?

とミステリ小説あるあるをこれでもかという具合に網羅。

理瀬が主役なんだけど、一番まとも??なアーサー主体で描かれているので、黒理瀬は不足かな。

ヨハンの目的は達成されたようだけど、その辺はよく分からなかった。

再読した方がいいかな。

事件の報告をわざわざヨハンにする男性の意図も謎。

そして、理瀬とアマンダはどうやって目的の物を手に入れたか気になる。

続編があるような終わり方だった。

理瀬とアーサーが敵対する未来を早く見たい。


『薔薇のなかの蛇』私の評価は★5


ストーリー  ★★★★☆  4
キャラの魅力 ★★★★☆  4
衝撃度    ★★★★☆  4
おすすめ   ★★★★☆  4


『仮面』 伊岡瞬著 感想レビュー 仮面の下の秘密

  仮面 (角川文庫) ディレクシアを知る 初読みの作家さんでした。 ページ数は多いけどすぐに読み終えました。 グロ描写ありです。 あらすじ 読字障害というハンディキャップを抱えながらもアメリカ留学の後、情報番組を中心にメディアに露出する三条公彦(さんじょうきみひこ)。 知的で爽...