2023年2月11日土曜日

『鬼恋綺譚 流浪の鬼と宿命の姫』沙川りさ 感想・レビュー アニメ化したら綺麗かも

もし、生まれる場所が違っていたら結ばれた2人

鬼恋綺譚(おにこいきたん) は、表紙のキャラクターの絵と帯で和製ロミオとジュリエットと絶賛されているので惹かれて読みました。

時系列が少しややこしいのと、キャラの関係がいまいち分からず混乱しますが、ラストに向けてすっきりとまとまっているお話でした。

簡単なあらすじ

文悟に危ないところを助られた小寺の若き当主の菊は、民のために強くなろうと彼に剣術を習う。

2人は惹かれ合うが、それは許される恋ではなかった。


↓ネタバレ感想↓

2人は結ばれないと分かっていたものの、菊の退場はそこまで余韻を残しませんでした。

少しグロ描写もありますが、折角なので元信と菊のイチャイチャをもっと見たかったなあ。

青山領と小寺の因果関係が約30年たっても続いてるのが何とも。

主役の2人より主水の方が魅力的に思えました。

『鬼恋綺譚 流浪の鬼と宿命の姫』私の評価は★1

ストーリー ★★★☆☆ 3
キャラの魅力★★☆☆☆ 2
衝撃度   ★★☆☆☆ 2
おすすめ  ★★☆☆☆ 2


2023年2月9日木曜日

『天使の囀り』貴志祐介 感想・レビュー 綺麗なタイトルに騙される!

トラウマレベルの小説

こんなにもタイトルのイメージと中身が異なるストーリーは初めて。

綺麗なタイトルに惹かれて読み、間違いだったと気付いた時には遅い。 


想像力が豊かな人ほど引きずり込まれ、気持ちが悪くなる作品です。 

でも、学術的な説明はあるものの、ストーリーは文句なしに面白く、惹き付けられます。

簡単なあらすじ

ホスピス病棟で働く北島早苗は、アマゾンから帰国した恋人高梨が変貌していく姿を目の当たりにします。

精神崩壊に陥った彼は、「天使の囀りが聞こえる」と言い出します。

そして高梨は変死し、早苗は真相を知るため奔走し、原因を突き止めるのでした。

高梨の死の原因とは?


↓ネタバレ感想↓


死恐怖症(タナトフォビア)

蜘蛛恐怖症 (アラクノフォビア)

醜形恐怖症

動物恐怖症

など、たくさんの恐怖症が出てきます。

一番恐怖だと思っていることに快感を覚え、死んでしまう。

ありえない現場。

私は集合体恐怖症で潔癖症なので…と考えたら震える。
ウアカリ


潔癖症と醜形恐怖症の2人の死に方が私は衝撃的だった。

なるほど、プロローグのアマゾンの調査からちゃんと繋がっていて、中盤以降怒涛の伏線回収。

貴志祐介さんの小説の描写は、リアルに想像できるし大好きです。

でもこの本は投げてしまうくらいグロく気持ち悪かった。

映像化は絶対してほしくないストーリー。

特に大浴場のシーンなんか無理。

依田の変貌を見た早苗が不憫すぎる。

トラウマレベルの小説です。

『天使の囀り』私の評価は★4

ストーリー  ★★★★★ 5
キャラの魅力 ★★★☆☆ 3
衝撃度    ★★★★★ 5
おすすめ   ★★★★☆ 4

『麦の海に沈む果実』恩田陸 感想・レビュー 学園が舞台の幻想的なミステリー

麦の海に沈む果実

全寮制の学園に隠された秘密とは

この本を読んだ後、理瀬(りせ)シリーズの1冊だと知りました。

その後、全部の作品を読破したけれど、私は『麦の海に沈む果実』の理瀬が好きです。

記憶が混濁している理瀬は、大人しい真面目な女の子。

閉ざされた全寮制の学校が舞台です。

こちらは白理瀬(純粋)と言われてます。

『黄昏の百合の骨』の彼女は、黒理瀬(腹黒い)です。

おとぎ話のような不思議な世界観を綺麗な表現で綴られているため、現実逃避させられた作品でした。

北見隆さんのイラストも素敵です。


簡単なあらすじ

理瀬が転入してきたのは2月、3月以外の転入生は学園を破滅に導くという噂があり、実際彼女が来てから、不可解な出来事が多く起きます。

不可解な出来事は、理瀬のせいなのか?

理瀬が失っていた記憶とは?


↓ネタバレ感想↓

黎二(れいじ)と理瀬のワルツのシーンがとても印象的でした。

2人の最も幸せな時を刻んだワルツ。

❝頂点に立った時に感じる滅びの予感

最も美しい時間を経験した後は滅びていく。❞


この文が忘れられず、自身の恋愛に変換し、あの時が頂点だったなと思ってしまったり。 

黎二というキャラクターは一見ぶっきらぼうだけど、実は優しく、身を挺して守ってくれるナイトのような存在で、女性なら誰でも彼に惚れると思う。

黎二の存在を忘却する決意をした理瀬。

作中に出てくる詩がストーリーの終盤で意味を成し、余韻を残したまま、忘れられない1冊となりました。

もし、映像化するなら丁寧にアニメ化してほしいです。


『麦の海に沈む果実』私の評価は★5

ストーリー  ★★★★☆ 4
キャラの魅力 ★★★★☆ 4
衝撃度    ★★★☆☆ 3
おすすめ   ★★★★☆ 4

2023年2月8日水曜日

『15歳のテロリスト』松村涼哉著 感想・レビュー 少年の本当の願いとは

15歳のテロリスト

低年齢化する犯罪に対して法の改正を願ったストーリー

主人公の15歳の少年の動機が分かった時、彼の決意に涙なしでは読めなかった。

テーマは重いけれど、読みやすい文章で綴られている為一気読みできた。

スノードロップ
加害者家族と被害者家族の立場両方が理解できる作品。

10代のうちに読んで欲しい作品だと思った。

スノードロップはこの小説で知って、実際見てみたいと思った。


簡単なあらすじ


新宿駅爆破事件の犯人は15歳の少年、渡辺篤人。

その事件は世間を大きく揺るがした。

だが彼は、少年犯罪の被害者家族だった。

彼がなぜ凶行に走ったのか?

篤人を知っていた記者の安藤は、彼の行方を追う。

↓ネタバレ感想↓

被害者遺族の篤人と加害者家族のアズサ、2人を結び付けた背景が辛い。

アズサに近付いた篤人は、彼女たち加害者家族も苦しんでいると知って慟哭します。

復讐を誓った篤人ですが非情に成りきれず歯痒い思いをします。

アズサも彼女の母も優しい良い人だったため、余計苦しみます。
 

一方、アズサは兄のせいで酷いいじめを受け落ち込んでいたところ、優しく接してくれた篤人に恋心を抱きます。

好きになった相手が違う目的で近づいたと知ったアズサの心情を思うと切ない。


『15歳のテロリスト』私の評価は★5

ストーリー  ★★★★☆ 4
キャラの魅力 ★★★☆☆ 3
衝撃度    ★★★★☆ 4
おすすめ   ★★★★★ 5

2023年2月6日月曜日

『VANILLA FICTION(ヴァニラ フィクション)』(全8巻)大須賀めぐみ 感想・レビュー 壮大なスケールで描く双六ゲーム

VANILLA FICTION

 血縁関係がなくても絆は生まれる

スピーディーな展開で出てくるキャラも個性的、何でこのコミックがそんなに有名じゃないんだろうと不思議でなりません。

アニメになっても見応えありそう。

主人公の佐藤は、陰キャ設定だけど、ストーリーが進むにつれて頼もしくなっていきます。

絵も綺麗で読みやすいです。

双六ゲームに強制的に参加することになった2人の対決が描かれますが、展開が読めずに面白い。

キーパーソンである不思議な少女エリがどっちの味方になるかによって、運命が大きく変わります。

佐藤の邪魔をする悪徳警官が腹立ちますが、彼の息子が可愛くて憎み切れない。


ゴールはエリと佐藤がクッキーを食べること。

カオス理論の連鎖で世界を救うというコンセプトも好き。

全8巻なのですぐに読み終わります。

簡単なあらすじ

佐藤忍(さとうしのぶ)はバッドエンドしか書けない気鋭の小説家。

廃ビルで薄汚れた少女エリをめぐって、争う人間を目撃した彼は、双六ゲームという非日常に巻き込まれる。

チャラ男の太宰を案内役に逃避行が始まる。

果たして佐藤とエリは無事にゴールにたどり着けるのか?

↓ネタバレ注意↓

佐藤とエリには血縁関係はありませんが、絆が芽生えてくる過程に泣かされます。

敵役の雪彦(ゆきひこ)は元妻より駑螺滋恵(ドラジェ)というキラキラネームの息子を急に押し付けられます。

複数の男と関係を持っている元妻なので、雪彦の本当の息子かどうか怪しいですが、悪事を働く警官である彼が、息子に対する愛情が芽生えていく過程が微笑ましい。

不条理なゲームに巻き込まれたとんでもないストーリーだけど、それぞれの心情がしっかりと描かれている印象。

また案内役の太宰治と佐藤に芽生えた絆も良かった。 


この太宰が不死身で趣味と特技はセックス遊びというとんでもないキャラだけど、佐藤の影響で変わっていく過程も面白い。


『VANILLA FICTION』私の評価は★5

ストーリー  ★★★★☆ 4
キャラの魅力 ★★★★☆ 4
衝撃度    ★★★★☆ 4
おすすめ   ★★★★☆ 4



『マリオネット』(文庫版全4巻)愛田真夕美 感想・レビュー 残酷で美しいストーリー

マリオネット

誰もが魅了される少年ダニエル。彼は悪魔なのか天使なのか

 1980年代に連載されたコミックですが、ストーリーがしっかりしていて面白い。

ジャンルで言うとホラーかな。


簡単なあらすじ

主人公のダニエルの美貌と伯爵の地位に魅せられた人たちが破滅の道へ辿っていくストーリー。

そのため、彼はいつしか悪魔とまで呼ばれるようになります。

少年のダニエルは悪戯心でつい人を唆したりもしますが、傷ついたりもします。

幼少期、彼は義母に翻弄され、大好きだった姉にも裏切られ、周りの人間を誰も信用できなくなっています。

またサブタイトルが良く、「鳶色の童話」から私はハマりました。

「ガラス細工の森」は本当に悲しいストーリーでした。

欲望渦巻く世界で、ダニエルは人を信用できるのか?


↓ネタバレ感想↓

近づく者には冷たい視線を向け、わがままでやりたい放題のダニエルですが、アンティエーヌという少女に出会い、彼は少し変わります。

性格も可愛らしく天使のような彼女は、ある殺害シーンを目撃してしまったため、悲劇の道へと歩みます。

だけど最後まで自分の運命を呪わず、綺麗な心のままダニエルの腕の中で亡くなるという衝撃的な結末を迎えます。

この2人の微笑ましいシーンをもっと見たかった。

『マリオネット』私の評価は★5

ストーリー  ★★★★☆ 4
キャラの魅力 ★★★★☆ 4
衝撃度    ★★★☆☆ 3
おすすめ   ★★★★☆ 4



2023年2月5日日曜日

『新世界より』貴志祐介著 感想・レビュー 人間と化け物の境界線

新世界より


私の好きな小説、トップ3

大長編(上・中・下)の作品ですが、上巻から即引き込まれてすぐに読み終えました。

大人が隠し事をしながら閉ざされた世界で育つ子供たち。

弱い子供、そして人に災いをもたらしそうな子供は早々に排除されていく世界。

その中で早季(さき)たちのグループは、好奇心旺盛で有望だったゆえに、混乱を来たす元凶になっていく。

簡単なあらすじ


町で生まれた仲良し5人組。

決して町の外には出てはいけないという制約を受けながら日々を過ごす子供たち。

記憶を操作されながら、いなくなった友人を忘れて日常生活に戻っていく。

夏季キャンプをきっかけに、早季たちは町の様相を疑い始めた。

真相を知った早季たちは?

安全だった町は襲撃され、思わぬ展開になっていく。

人外との戦い、そして、人間の浅はかさを唄う作品。
神栖66町の民家のイメージ

伏線も凄く、何度でも読み返したくなるストーリー。


↓ネタバレ注意↓


私は将来有望とされていた瞬(しゅん)の退場が悲しすぎてめっちゃ泣きました。

彼をどうやったら助けることができただろうとそればっかりを考えます。

夏季キャンプでのナイトカヌーの描写が美しく印象的でした。



早季と瞬の恋がすごく切ない。

2人の別れのシーンは胸が痛いです。


アニメ化は、世界観を壊さず上手く作っていたなと思いました。

『新世界より』私の評価は★5

ストーリー  ★★★★★ 5 
キャラの魅力 ★★★★★ 5
衝撃度    ★★★★★ 5
おすすめ   ★★★★★ 5


『仮面』 伊岡瞬著 感想レビュー 仮面の下の秘密

  仮面 (角川文庫) ディレクシアを知る 初読みの作家さんでした。 ページ数は多いけどすぐに読み終えました。 グロ描写ありです。 あらすじ 読字障害というハンディキャップを抱えながらもアメリカ留学の後、情報番組を中心にメディアに露出する三条公彦(さんじょうきみひこ)。 知的で爽...