2023年2月28日火曜日

『今際の国のアリス』麻生羽呂  感想・レビュー はあとのなな「かくれんぼ」が難しすぎる

 生き残るためにはゲームに勝つしかない

読んだきっかけは、「不思議の国のアリス」が好きだから。

不思議の国のアリスに登場するキャラの名前が使われているのが嬉しい。

ずっといると思っていたキャラが退場するなど、展開が読めず面白い。

参加するまでどんなゲームか分からず、頭脳戦、心理戦、体力戦、協力戦がトランプに準えてる設定がすごい。

誰にも感情移入しないけれど、自分だったらとか考えるの楽しい。

読み応えある漫画です。


あらすじ

高校生の有栖良平(ありすりょうへい)は、怠惰的な生活を送っていた。

ある日、いつものメンバー(カルベ、チョータ)で遊んでいたところ、巨大な花火を目撃する。

気付いた時は、周囲の人間は消えており、強制的に理不尽な「げえむ」に参加させられる。

ただし、「げえむ」に「くりあ」しないと待つのは死のみ。

ビザ切れはこんなイメージ

アリスの監察力と頭脳にいち早く気づいたカルベは、彼を生かすべく行動に出る。

果たして、この世界は何なのだろうか?

展開が読めないサバイバルデスゲーム


ネタバレ感想

一番印象に残ったのは、難易度7(はあとのなな)げえむ「かくれんぼ」

狼が負けると思うよね
参加人数無制限だけど、アリスたちは仲間4人で挑む。

るうるは、おおかみ1 VS ひつじ3 でかくれんぼをし、最後に狼だった人が勝つという最悪のゲーム。

アリスは全員生き残れる方法を考えますが、心が壊されるゲームだった。


他は、

♠5「おにごっこ」 

J「どくぼう」  が印象に残ってる。


キングクラスが出てきてさらに面白さは増し、キューマは普通に良い人だった。

この先にミラがいそう
ミラとの対決は少しだるく、ラストのページの割き方は微妙。

でも全体的には面白かった。

うさぎが強い女の子だったのに、うざキャラになってしまったのは残念。

私はずっと意志を持って強かったアンが好きだ。

ヤバとパンダ、チシヤのその後が見たい。

ツッコミどころはあるけれど、ネトフリも面白かった。

殆どのキャラがイメージ通りなので見応えある。

スピンオフ作品『今際の路のアリス』は、主人公は変わりますが世界観そのままなので良かったら。

大人になったアリスの話が読める『今際の国のアリスRETRY』もおすすめ。


『今際の国のアリス』私の評価は★4

ストーリー  ★★★★☆ 4
キャラの魅力 ★★★☆☆ 3 
衝撃度    ★★★★☆ 4
おすすめ   ★★★★★ 5


2023年2月26日日曜日

『禁じられた遊び』清水カルマ 感想・レビュー 映画化決定,分かりやすいホラー作品

 嫉妬心の最終形態

この小説で思い浮かべたのは、無垢で幼い少女と少年が次々とお墓を作る映画「禁じられた遊び」と、スティーヴンキング原作で自ら脚本を手掛けたとされるホラー映画「ペットセメタリー」(1989年版)。

清水カルマさんの『禁じられた遊び』は、2つの作品をうまく融合させて読みやすかった印象。


簡単なあらすじ

伊原直人(いはらなおと)は、美しい妻の美雪(みゆき)と可愛い一人息子の春翔(はると)のためにマイホームを購入し、幸せな日々を送っていた。

だが、妻の美雪が居眠り運転のトラックに轢かれて死亡し、絶望する。

現場に一緒にいた春翔の手には美雪の指が握られていた。

以前、直人は息子に、トカゲの尻尾を土中に埋めると生き返ると悪戯心で教えたため、春翔は母の指も同じように庭に埋めた。

それから春翔は一心不乱に土の前で呪文を唱え続ける。

そのころ、フリーのビデオカメラマンである倉沢比呂子(くろさわひろこ)の周りで、5年前と似たような奇怪な現象が起きていた。


ネタバレ感想

比呂子がビデオカメラマンという職に就いているため、行動力もあって強く逞しい。

直人を優先するところ以外は応援したくなる。

反対に直人にはずっといらいらさせられた。

ペットの犬への仕打ちはほんと許せない。

彼は結局、妻も春翔も比呂子のことも守れてない。

柏原(かしわばら)の方が断然頼もしいし、彼と付き合ってほしい。

それにしても心の浮気だけで、執拗に比呂子を襲う美雪が怖すぎた。

ストーリーはしつこいけど続きが気になったし、怖かった。

緑の液体、腐臭、虫とかの表現がぞわっとした。

比呂子はこの後、大丈夫なのかなって思った。

映画はラスト変えてほしいなあ。


『禁じられた遊び』私の評価は★2

ストーリー  ★★☆☆☆ 2  
キャラの魅力 ★☆☆☆☆ 1
衝撃度    ★★★☆☆ 3
おすすめ   ★★☆☆☆ 2








2023年2月25日土曜日

『吐息雪色』(といきゆきいろ)綾崎隼 感想・レビュー 姉妹愛が恋を結ぶミステリー

ただ彼の幸せを思う

「花鳥風月」シリーズ、今回は「雪」です。

ストーリーは独立しているので、単体で読んでも理解できます。

ですが、『初恋彗星』(星乃叶〈ほのか〉登場)はこの作品の前に読んで欲しい。

イラストは、ワカマツカオリさん。

ドーナツを咥える真奈のイラストが好き。

「花鳥風月」シリーズ、『蒼空時雨』(風夏<ふうか>登場)『旋律月下』も書いてますので興味があれば。


簡単なあらすじ

 結城佳帆(ゆうきかほ)は、ボロアパートで引きこもりの妹、真奈(まな)と住んでいる。

手がかかる妹だが、佳帆は真奈のことが大好きだ。

ある日、図書館で佳帆はある男性に目を奪わる。

図書館に似つかわしくない彼が、後に館長の舞原葵依(まいばらあおい)だと知る。

彼に恋をしていく佳帆だが、最愛の妻が失踪したというデリケートな事情を知り、心を痛める。

彼の再生だけを願おうと決めた佳帆だが、彼女にも哀しい秘密があった。


ネタバレ感想

館長は結婚していますよと忠告されたにも関わらず、彼を探しに図書館をうろつく佳帆の行動は理解できない。

さらに彼が利用すると思われるコンビニで何時間も待ち伏せしたり、家に押しかけたりとか。

奥さんが失踪中だからって、図々しいし通報案件すぎる。

その辺が読んでてすごく引っ掛かったけど、佳帆の事情を知るとなるほどと納得したし、泣けてきた。

二度読んでみたくなるストーリー。

『吐息雪色』私の評価は★3

ストーリー  ★★★☆☆ 3
キャラの魅力 ★★☆☆☆ 2
衝撃度    ★★★☆☆ 3
おすすめ   ★★★☆☆ 3




『旋律月下(せんりつげっか)』綾崎隼 感想・レビュー ifを考えずにはいられない

初恋を引きずる男性が主役

「花鳥風月シリーズ」のミステリーです。   

イラストは大好きなワカマツカオリさん。

シリーズは順番通りに読まなくても単体で完結しているので大丈夫。

ちなみに私はこの作品から読んで、舞原って何だ?と思ったけど理解できました。

同シリーズの『蒼空時雨』『吐息雪色』も、良かったら。


簡単なあらすじ

転校生の望月洋平(もちづきようへい)は、クラスメイトの舞原月乃(まいばらつきの)に恋をする。

放課後、図書室で静かに本を読んでいる月乃と、少しずつ親しくなっていく洋平。

教室での彼女はちょっと近寄りがたいけれど、図書室では違っていた。

彼女が難関レベルの美浜高校を受験すると聞いて、必死で勉強する洋平。

そんな時、月乃が双子だと知る。

受験前に父の転勤が決まり、彼女と離れ離れになってしまうが、きっと会えると信じていた。

果たして洋平の恋の行方は?


ネタバレ感想

だいぶ端折りますが、まとめるとこんな感じ。

if side.A …静岡の国立大学に通う洋平。

          月乃は大阪大学。

          洋平と同じ大学に今宵(こよい)がいた。

             今宵の家に遊びに来た月乃と連絡先交換し、やり取りが日常化する。

         大学4年、月乃に告白し交際スタート。

         新潟での遠征就活中、偶然月乃に遭遇し違和感を覚える。


if side.B …浪人を経て大阪大学に合格、会いたかった舞原月乃と再会。

          サークル活動で怪我をし、熊本で入院している彼女の元へ駆けつける。

          それから1年後に告白し、交際スタート。

          月乃との結婚は婿養子が条件。

          彼女の苗字が舞原(東日本の財界を牛耳る一族)だと両親に話す。


ifの使い方、そう来たかー、すっかり騙されました(笑)

洋平の今宵に対する態度やしつこさは好きになれない。

月乃と今宵、家族でも間違うほど見た目はそっくりなのに、性格は正反対。

洋平が本当に好きになった相手は今宵だと思うのに恋愛ってうまくいかない。

一途な人は素敵だと思うけど、この2人はしつこい(笑)

どのキャラも好きじゃなかったけどストーリー構成は好き。

『旋律月下』私の評価は★2

ストーリー  ★★★☆☆ 3
キャラの魅力 ★☆☆☆☆ 2
衝撃度    ★★★☆☆ 3
おすすめ   ★★☆☆☆ 2 


2023年2月24日金曜日

『いなくなれ、群青』河野裕 感想・レビュー 自身のレゾンデートル

階段島のイメージ

なぜこの不思議な島にやって来たのか?

タイトルが素敵すぎた。

哲学っぽい語り口が特徴かな。

およそ2000人が暮らしている階段島が舞台。

存在価値(レゾンデートル)を問うストーリー。

簡単なあらすじ

階段島で暮らす七草(ななくさ)は、島に来る前の記憶がない。

この島にいる住民はみんなそうだ。

店が少ないことは不満だけど、圧倒されるような星空を眺めることができるし、事件らしい事件も起きない。

島から出ることはできないけれど、それなりに平穏な日常を過ごしていた。

だが、七草は、こんな島で会うべきじゃない人物に再会してしまう。

真辺由宇(まなべゆう)、彼女に会ったせいで、七草の生活は変わっていく。

僕たちは階段島になぜいるのか?

真相を知るべく、七草たちは奔走する。

ネタバレ感想

真辺由宇みたいな女の子を好きになったら、男の子はみんな振り回されそう。

誰よりも真っすぐで、凛々しく、階段島に来るべきじゃない女の子。

❝この物語はどうしようもなく、彼女に出会った時から始まる❞

みないに、七草の言い回しがちょっと独特だし、共感しにくい所がある。

ピストルスター
全体的にふわっとしたストーリーで説明が難しい。

幻想的なミステリーとしては面白い。

しかもこの作品、映像化してます。

まとめるの難しそう。

でも、横浜流星さんと飯豊まりえさんが主演なので機会があれば、見てみたい。

『いなくなれ、群青』私の評価は★3

ストーリー  ★★★☆☆ 3
キャラの魅力 ★★☆☆☆ 
衝撃度    ★★☆☆☆ 
おすすめ   ★★☆☆☆ 






2023年2月23日木曜日

『暗闇の非行少年たち』松村涼哉 感想・レビュー 本音が言える,居心地の良い場所を探して

 誰かに必要とされたい

『15歳のテロリスト』著者さんの作品。

1人が怖い。

1人になるのを恐れて話を合わせて。

ある日、仮想空間への招待状を受け取った。

誰が何のために作った場所か分からない。

でもいつしかそこが心の拠り所となっていった。


簡単なあらすじ

18歳の水井ハノは、少年院から退院したばかりだ。

更生を誓うが、斡旋された就職先ではうまくいかず、再び昔の仲間が集う場所へと戻って行く。

そんな時、「ネバーランドへの招待状」と記された紙切れを受けとる。

訝しながらも指示通りにゲームをインストールする。

アバターを作ったハルは仮想世界へと飛んだ。

果たしてハルの行く末は?


ネタバレ感想

ハル視点だけではなく、ネバーランドへ招待されたメンバーの視点からも描かれるのが面白い。

そして、彼らの意外な共通点にも注目。

罪は重く、色々考えさせられる。

心を入れ替えて更生しようと頑張る人もいるが、根っからの悪人もいる。

難しいテーマだ。

登場するキャラに未成年が多いからわざとなんだろうけど、総じて考えが甘いし、人を信じすぎる。

家庭環境が悪い人間は、全て犯罪者にならない。

カノンちゃんが犯罪に至るまでの過程が一番重かった。

出会う人間で人は変わる。

本音を吐き出して救われるゲームは現代には必要かも。

❝俺たちは賢くない

賢くない人間のくせに「自分の幸せはこれしかない」とか勝手に決めつけるな❞

ショウのこのセリフが突き刺さりました。

櫂は良い人間に出会えたのに、彼は根っからの悪だった。

『15歳のテロリスト』の衝撃とまではいきませんが、未成年の犯罪について考えさせられる作品でした。

『暗闇の非行少年たち』私の評価は★3

ストーリー  ★★★☆☆ 3
キャラの魅力 ★★☆☆☆ 2
衝撃度    ★★★☆☆ 3
おすすめ   ★★★☆☆ 3





2023年2月22日水曜日

『アリス殺し』小林泰三 感想・レビュー メルヘンは本来残酷なのかもしれない

アリスの不条理な世界

2014年「啓文堂書店文芸書大賞受賞」作品

私は『不思議の国のアリス』が大好きだ。

出てくるキャラみんなおかしくて、予想も付かない展開。

その反面、果てしなく妄想が広がるし現実逃避もできる。

小林泰三さんの小説は玩具修理者』の描写がグロすぎて途中で読むのを止めてしまう程でした。

『アリス殺し』も残酷でグロいですが、アリス好きなのでなんとか許容範囲にしました(笑)

簡単なあらすじ

院生の栗栖川亜理(くりすがわあり)は、不思議の国の夢をよく見る。

ハンプティ・ダンプティが塀から落ちた夢を見た後、大学では玉子と呼ばれていた博士研究員が屋上から墜落死していた。


亜理が、生牡蠣を喉に詰まらせてグリフォンが窒息死する夢を見ると、牡蠣を食べた教授が急死する事件が現実に起きていた。

どうやら夢の世界と現実はリンクしているらしい。

不思議の国では、三月兎と頭のおかしい帽子屋がアリスを容疑者にする。

果たして事件の真相とは?

不思議な不思議なミステリー。


ネタバレ感想


ほんまややこしい(笑)

不思議の国のアリスの名物である堂々巡りの会話も好きだからこそ許せる。

現実世界(地球)と不思議の国の世界がリンクし、お馴染みのキャラが登場。

どのキャラが誰だろと当てはめながら読んでいきます。

事件の真相に驚いたけれど、それ以上に井森の退場に凹んだ。

現実の井森は、不思議の国と違いすぎる。

文体にすごく癖があるけど、ハマると面白い。

吐き気をもよおすほど気持ち悪い表現があるので、耐性ない人はお薦めしない。

この作品、メルヘン殺しシリーズとしてシリーズ化しています。

ただ、作者さんがお亡くなりになったので4作で完結のようです。

まだまだ読みたかったです。

『アリス殺し』私の評価は★4

ストーリー  ★★★★☆ 4
キャラの魅力 ★★★☆☆ 3
衝撃度    ★★★★☆ 4
おすすめ   ★★★☆☆ 3








『仮面』 伊岡瞬著 感想レビュー 仮面の下の秘密

  仮面 (角川文庫) ディレクシアを知る 初読みの作家さんでした。 ページ数は多いけどすぐに読み終えました。 グロ描写ありです。 あらすじ 読字障害というハンディキャップを抱えながらもアメリカ留学の後、情報番組を中心にメディアに露出する三条公彦(さんじょうきみひこ)。 知的で爽...