2023年2月15日水曜日

『ダークゾーン』(上下巻)貴志祐介 感想・レビュー 不条理な将棋デスゲーム

チェスや将棋の駒になった人間たちのバトル

簡単なあらすじ


プロ棋士の塚田が主人公。 

ある日、彼は異形の姿で目覚めるが、周囲にいた恋人や友人たちも異形と化していた。

赤の軍勢の将である塚田は、青の軍勢との戦いを余儀なくされる。

舞台は軍艦島。

軍艦島
そこで繰り広げられる異形バトル。

軍配はどちらに上がるのか?

まるでゲームのような世界観。


感想・レビュー


敵の将が現実世界での塚田のライバルという設定も面白く、将棋の駒同様、それぞれに火を噴くなど特性を持っている。

私は、貴志祐介さんの作品、『新世界より』
『クリムゾンの迷宮』『天使の囀り』『黒い家』『悪の教典』十三番目の人格 ISOLA』を読破しています。

これらに比べるとややオチと展開は弱く余韻を残さないですが、エンタメ小説としてはそれなりに楽しく読めました。

将棋をあまり知らなくても説明が丁寧なので、世界観にハマることができる。

アニメ化したら見応えあるかも。

主人公の性格はちょっと腹立つ。

軍艦島の描写説明は素晴らしく、まるでその地に行ったことあるような感覚に陥った。

『ダークゾーン』私の評価は★3


ストーリー  ★★★☆☆ 3
キャラの魅力 ★★☆☆☆ 2
衝撃度    ★★☆☆☆ 2
おすすめ   ★★★☆☆ 3 








2023年2月14日火曜日

『ノイズ【noise】』(全3巻)筒井哲也 感想・レビュー たった一人の悪が限界集落にやって来た為、ノイズが生じる

映画と漫画は別物

ネトフリで『ノイズ』を視聴した。

何これ、漫画と全然違う。

まず、設定が変わりすぎて人物に深みがなく中途半端。

刑事が抱える闇と今度こそ逃さない覚悟とか。

鈴木(小御坂こみさか)が平気で嘘がつき、犯罪を何とも思わないクソな奴だとか。

好きな俳優さんばかりだったのに、残念。

役者の無駄遣いが頭をよぎった。

私は原作コミックを読んでいて面白かったので、映画を視聴。

でも、映画→原作見てみようって人はいなさそう。

簡単なあらすじ

黒イチジクが注目され、猪狩町の救世主だと持てはやされた泉圭太(いずみけいた)の元に、怪しい男、鈴木が現れる。

彼を危険人物と判断した圭太と親友の純(じゅん)は、配属されたばかりの警官守屋(もりや)と共に、彼の元へと向かうが、思わぬアクシデントが起こってしまう。

果たして限界集落は元の平穏を取り戻せるのか?

田舎を舞台に、次から次へとトラブルが起きるノンストップサスペンス。

感想・レビュー


最初の選択さえ間違わなければというのは映画と一緒。

後にどんどん悪い方向へ。

漫画は3巻でまとまっているし、全体を通して緊張感があった。

絵のタッチは女性受けしないけれど。

娘の恵理奈との親子愛とか感動した。

純は悪い奴じゃない。

映画はもやっとしますが、コミックの方は納得いく終わり方なのでぜひ。

『ノイズ【noise】』私の評価は★4(映画は★1)


ストーリー  ★★★★☆  4
キャラの魅力 ★★★☆☆  3
衝撃度    ★★★☆☆  3
おすすめ   ★★★☆☆  3

2023年2月13日月曜日

『私が大好きな小説家を殺すまで』斜線堂有紀 感想・レビュー 共依存の悲しい恋愛の行く先

私の好きな本ベスト3

タイトルに惹かれて読んだ作品。

余韻を深く残し、梓は最後どうなったかと人によって捉え方が違うかもしれません。

簡単なあらすじ

ネグレストを受けていた梓(あずさ)が憧れていた売れっ子小説家、遥川悠真(はるかわゆうま)と出会い、救われる。

その一方、彼は才能を失いつつあった。

梓がどうして愛する彼を殺す決意をしたのか。

胸を打つ悲しいラブストーリー。


感想・レビュー

才能、嫉妬、裏切り、騙し合い、全て愛情から来る2人の行為。

どこからかすれ違い狂ってしまいます。

2人が幸せに生きていく方法はなかったのか。

もしかしたら、出会わなければ良かったのか。

映像化するならば、深夜枠で無名の俳優さんたちで、丁寧にドラマ化してほしいなと思いました。

同作家さんの『恋に至る病』の方が人気ですが、私はこの作品が大好きです。

この本を読むとき、いつもYOASOBIさんのハルジオン』が頭の中を駆け巡ります。


私が大好きな小説家を殺すまで』私の評価は★5

ストーリー  ★★★★★ 5
キャラの魅力 ★★★★☆ 4
衝撃度    ★★★★★ 5
おすすめ   ★★★★☆   4



『月の子 MOON CHILD』(文庫版全8巻)清水玲子 感想・レビュー 現代版人魚姫が壮大なスケールで描かれるSFファンタジー 

ただ好きになっただけなのに…


人間の王子に恋をした人魚姫は、魔女の力を借りて人間の姿になるが、代わりに美しい声を失ってしまう。

王子は隣国の姫と結婚し、恋に破れた人魚姫は水の泡となって消えてしまいました。

アンデルセン童話の「人魚姫」は、ざっくりと書けばこのようなあらすじ。

この童話をベースに描かれる『月の子 MOON CHILD』は、現代版おとぎ話のよう。

簡単なあらすじ


売れないダンサーのアートは、交通事故を起こす。

そのせいで記憶を失った少年ジミーを罪悪感から引き取り、奇妙な同居生活を送る。

ジミーの周りではゴーストが出現したり、壊れた時計が直ったりと奇妙な出来事が起こっていた。

ジミーの行動で地球の未来が変わってしまう?

人間と人魚たち、そして地球の運命が描かれるファンタジー。

↓ネタバレ感想↓


ベンジャミンが本当に美しく見惚れてしまいますが、人魚姫同様、好きな男性には振り向いてもらえず、切なくなります。

人魚姫(セイラ)の子供が3人という設定も面白く、関わる人間たちの関係性の変化が見応えありました。

アートに恋をしてしまったため、地球を破滅に導いてしまうベンジャミン。

セツの為に、地球を賭けて魔女と契約したティルト。

それぞれの思いが交差する切ないストーリーが、清水玲子さんの綺麗な絵によって描かれています。

  • ジミー×アート
記憶喪失のジミーと口は悪いけど世話焼きのアート、2人の日常がとても微笑ましくて好き。
  • ジミー×ショナ
ジミーの正体を知ったショナの溺愛ぶりが面白い

  • セツ×ショナ
この2人の関係が変わっていくのが良かった。恋の結末にすごく泣けた。

ヒール役であるティルトが、ベンジャミンの無邪気さに傷付いていたと知ると憎めくなる。

一番かわいそうなのはティルトに乗っ取られたギル・オウエンかも。

『月の子 MOON CHILD』私の評価は★5


ストーリー  ★★★★★ 5
キャラの魅力 ★★★★★ 5
衝撃度    ★★★★☆ 4
おすすめ   ★★★★☆ 4


『夜行』森見登美彦 感想・レビュー 一夜で読ませてしまう手腕はすごい

本屋大賞ノミネート作品

タイトルと表紙に目を奪われ、初版限定のポストカードをゲットしました。

続きが気になって気になって仕方なく、読書する時間を限りなく作って読みふけってしまった。

鞍馬の祭りの日に失踪した女性はどうなったか、早く答えを知りたくてうずうずした。

簡単なあらすじ

長谷川さんの失踪以来10年ぶりに再会した5人が、それぞれ経験した話を語る形で物語は進みます。

尾道、奥飛騨、津軽など情景描写が素晴らしく、自分もその場所に旅しているかのような錯覚に陥る。

一体長谷川さんはどこへ行ってしまったのか?

ホラー要素ありの不思議な世界観で綴られたストーリー。


感想・レビュー

初版のポストカード

いくつか話が分かれていますが、どれもえ?という感じで終わります。

結局長谷川さんはどうなったのか、はっきりした答えが分からず、もやもや感が残ります。

幻想的で不気味、ラストもすっきりしない。

途中までは本当に面白くて夢中になった。

語られる場所は本当に景色が綺麗なところなので、遊びに行ってみたい。


                 『夜行』私の評価は★2

奥飛騨

ストーリー  ★★★★☆ 4
キャラの魅力 ★★☆☆☆ 2
衝撃度    ★★★☆☆ 3
おすすめ   ★★★☆☆ 3


天竜峡

2023年2月12日日曜日

『超巨大密室殺人事件』二宮敦人 感想・レビュー リアルとゲームの境界線とは

ゲームの世界が現実を侵食していく

簡単なあらすじ

照(てる)は大学在学中に起業し、貯金30億以上を持ちイケメンだがゲーム廃人。

高層マンションのワンフロアを購入し、一人で住んでるほどの!

セキュリティは万全だけど、広すぎて寂しくないのかなと思いますがゲームの世界で生きている彼なので関係なし。

恋人が殺されたと言って発狂するがそれはゲーム内でのこと。

そんな彼に対して半ば呆れながらも付き合う友人仁菜(にな)。

現実で起きてる猟奇的な殺人事件。

そしてゲーム内の殺人とある共通点が浮かび上がる。

照はこのままゲーム廃人となってしまうのか?

ゲームが現実を侵食した世界観を描くミステリー。


感想・レビュー

ネトゲをしたことがあるならこのストーリーに出てくるワードもすんなり頭に入る。

ゲーム内で会話して仲良くなるのはリアルでもあるし、あり得ない話でもないでの無理なく楽しめた。

文章はライトな感じでホラー文庫と言いながら、怖さはありませんが読みやすかった。


『超巨大密室殺人事件』私の評価は★4


ストーリー  ★★★☆☆ 3
キャラの魅力 ★★☆☆☆ 2
衝撃度    ★★☆☆☆ 2 
おすすめ   ★★★☆☆ 3 

『恋に至る病』斜線堂有紀 感想・レビュー 誰もが魅入られる少女とは

共依存に仕立て上げられた男子高生の行く先は?

共依存をテーマにしたストーリーは、斜線堂有紀さんが一番すごいと思う。

簡単なあらすじ

人気者の女子高生の寄河景(よすがけい)。

主人公の僕、宮嶺望(みやみねのぞむ)が彼女と出会ったのは小学5年生の時。

そこから、彼は周りの人と同様、景の虜になっていきます。

時折、おかしいなと感じながらも。

この本は、いかにして景が直接手を下さずに150人以上の人生を狂わせていったかが描かれていきます。

宮嶺は景を止めることができるのか?

2人の関係は今後どうなっていくのだろうか?


↓ネタばれ感想↓

私は『恋に至る病』を初版で購入したので前知識なしに読み、すごく面白くて、ラストについてどう思ったか友人と話しました。

後に帯で『ラスト○○の衝撃』と書いてあって、ネタバレしてる、それまでの流れが面白いのにって残念に思いました。

景が怖いのは、罪悪感の欠片がないところ。

分かっていながらも、それでも景が好きという宮嶺の思いも切なかったです。

同じ共依存でも同作家さんの『私が大好きな小説家を殺すまで』は、また違った余韻を残します。

『恋に至る病』私の評価は★4

ストーリー  ★★★★★ 5
キャラの魅力 ★★★★☆ 4
衝撃度    ★★★★★ 5
おすすめ   ★★★★☆ 4


『仮面』 伊岡瞬著 感想レビュー 仮面の下の秘密

  仮面 (角川文庫) ディレクシアを知る 初読みの作家さんでした。 ページ数は多いけどすぐに読み終えました。 グロ描写ありです。 あらすじ 読字障害というハンディキャップを抱えながらもアメリカ留学の後、情報番組を中心にメディアに露出する三条公彦(さんじょうきみひこ)。 知的で爽...