2023年2月21日火曜日

『今際の路のアリス』(全8巻)原作:麻生羽呂、作画:黒田高祥 感想・レビュー ❝人生は80年、強制参加のクソゲー❞

 今回はトランプを所持して目覚める

今際の国のアリス』の続編にあたる作品。

スピンオフ的なストーリーで、麻生羽呂さんは今回は作画を別の方に託しています。

『今際の国のアリス』同様、世界観は変わらず面白いし、読んで損はない。

常に心理戦が伴っているような展開でした。

清水寺

ポジティブな女子高生が主役です。


簡単なあらすじ

荒れ果てた京都で目覚めたキーナは、トランプを握りしめていた。

周囲を彷徨っていると、清水寺で小島亜里朱(こじまありす)と出会う。

花火が打ちあがり、その場所まで駆け付けた2人は、同じように記憶を失った男女9人がその場所に集まっていた。

話し合いの結果、東京を目指そうと決めたが、1人殺されてしまう。

疑心暗鬼の中、一部を除いたメンバーで東京へ向かう。

果たして無事に東京にたどり着けるのか、そして元の世界に戻れるのか?


感想・レビュー

前作より目を背けたくなるシーンが多め。

少ない人数なのにくせ者が多い上に殺人犯が紛れ込んでいるし、敢えて狂わされた人物もいます。

反面、精神的に成長した人物もいます。

ネガティブ思考のキーナとポジティブなアリスが対照的に描かれている。

集められた男女の選出は、偶然なのか必然か。

今回のトランプの意味は?

絶対R指定だけどこの作品もネトフリで映像化してほしい。


『今際の路のアリス』私の評価は★4

ストーリー  ★★★★☆ 4
キャラの魅力 ★★★☆☆ 3
衝撃度    ★★★★☆ 4
おすすめ   ★★★★☆ 4



『僕が電話をかけていた場所』(下)三秋縋 感想・レビュー たった一人の女の子を救いたい

僕は人魚姫と同じ運命をたどるのだろうか 

この作品は上巻である『君が電話をかけていた場所』の続巻です。

伏線は次々と回収していきます。   

水の泡イメージ

   

切なさを伴いながら。


簡単なあらすじ

陽介は、初鹿野を喜ばそうと、悪友檜原(ひのはら)から天体望遠鏡を借りるが、貸してもらう条件は彼の同行だった。

女子が1人だと怖がると思った陽介は、千草も誘い、4人で天体観測の日常が始まった。

喜ぶ初鹿野を見て満足する陽介だが、彼女が檜原に惹かれていくのを目の当たりにし、心を痛める。

こんな状態で、陽介は初鹿野と両想いになれるだろうか?

初鹿野の空白の4日間とは?


ネタバレ感想              
               

 陽 介 → 初鹿野                       

  ↑     ↓

 千 草 ← 檜 原   

天体観測は、片思いの一方通行。          

陽介は、命を懸けてまで自分を好きでいてくれた千草に対して負い目を感じず、初鹿野に夢中。

反対に檜原は、初鹿野のお見舞いにも行かなかった。

好きな人以外はどうでも良いという心情が見事。

現実ではあり得ないストーリーだけど、不思議とリアリティある世界観が描かれてる。

初鹿野が回りくどかったので、素直に思ったことを伝えた方がいいと勉強になった。

彼女の痣はどうなったのかな。

千草が救われたら良いなと思う。


『僕が電話をかけていた場所』私の評価は★3

ストーリー  ★★★★☆ 5
キャラの魅力 ★★★☆☆ 3
衝撃度    ★★★☆☆ 3
おすすめ   ★★★☆☆ 3




2023年2月19日日曜日

『いつもの朝に』(上下巻)今邑彩 感想・レビュー 家族愛を謳った作品

 完璧な兄に対し劣等感を抱く弟、カインとアベルに準えた現代のミステリー

30年前に起きた凄惨な事件。

出生の秘密が書いてあった隠された手紙。

優秀な兄と全く似ていない弟。

全てが線で繋がるとき、慟哭する。

装画は北見隆さんです。


簡単なあらすじ


聖人君主である父と、画家の母を両親に持つ兄弟、桐人と優太。

彼らは仲の良い兄弟だった。

だが、小さいころからある熊のぬいぐるみの中から、本当の父だと名乗る手紙を発見し、兄弟はすれ違っていく。

犯罪者の血は遺伝するのか?

家族は再生できるのか?

涙なくてしては読めない家族愛がテーマのミステリー小説。

ネタバレ感想


ストーリーは単純ではなく二転三転します。

上巻と下巻でガラリと変化します。

兄の桐人の選択にも涙し、弟優太の行動にも泣けます。

事実に怯え、兄弟に亀裂が生じ始める。

だが、忘れてならないのは逃げ出した優太を止めたのは兄であり、兄を救おうとしたのは優太だった。

2人を深い愛で包む母親、沙羅も素晴らしい人だった。

人に勧めたくなる本です。

ドラマ化したら見ごたえありそうだなと思う。

桐人役は高橋文哉さんに演じてもらいたいなあ。

『いつもの朝に』私の評価は★5

ストーリー   ★★★★★ 5
キャラの魅力  ★★★☆☆ 3 
衝撃度     ★★★★★ 5
おすすめ    ★★★★★ 5

『リライト』法条遥 感想・レビュー バッドエンドタイムループ

 圧倒的に無慈悲なタイムループ

タイムループのイメージ
10年前の私が現れたら完璧だった。

だが、私は現れない。

彼は助けられない。

過去が最悪の形で次々と改変されていく。

「re~」シリーズ、1作目。

あらすじ

中学2年の夏、美雪(みゆき)は300年後の未来からやってきたという転校生の保彦(やすひこ)と出会う。

だが、2人は旧校舎崩落事故に巻き込まれてしまう。

保彦の持っていた薬を使って未来へ跳んだ美雪は、彼を助ける方法を探る。
旧校舎イメージ


そして10年後、作家となった美雪は跳んでくるはずの自分を待つが来なかった。

やがて、自身が持つ記憶と現実の相違を次々に発見し、美雪は驚愕する。

保彦は果たしてどうなったのか?

なぜ過去が変わっていったのか、最も救われないSFパラドックス開幕。

ネタバレ感想

美雪が保彦と1ヶ月ほど過ごした夏の思い出が綴られます。

でも、美雪の話だと思っていたのが、実は違うクラスメイトの話だったりと混乱していきます。

さらに保彦と関わっていたクラスメイトが現実で何人か殺されており、犯人が捕まっていないという。

現代に保彦と思える痕跡が残っていたり。

読み手はかなり混乱させられるので、ややこしい。

ラストに向けて謎が解けますが、何とも言えない不快感と余韻が残る。

美雪も保彦も救われない。

帯にあった無慈悲な収束、その通りでした。

法条遥さんの小説は、バッドエンドが多い印象ですが、この作品もその通り。

好きか嫌いかと問われれば、好きな作品です。

タイムループものは、当人だけがハッピーエンドだったら良いのか?と思える作品が多いので、『リライト』は現実的かも。

『リライト』私の評価は★4

ストーリー  ★★★☆☆ 3
キャラの魅力 ★★★☆☆ 3
衝撃度    ★★★★☆ 4
おすすめ   ★★★☆☆ 3






2023年2月18日土曜日

『恋と心臓』(全10巻)海道ちとせ(かいどうちとせ)感想・レビュー 彼女しか見ていない究極の愛を描くラブサスペンス

イケメンのヤンデレ男子に愛される女子大生

子供の頃の記憶が曖昧な主人公。

主人公を洗脳し、2人だけの世界を作ろうとする交換留学生。

ヤンデレ男子が恋の相手というの設定は面白い。


簡単なあらすじ

幼馴染だと名乗る広瀬春馬(ひろせはるま)と同居することになった大学生の八木沢羊(やぎさわよう)。

彼は昔、羊の隣に住んでいたと話すが、一向に思い出せない。

空き家イメージ
(春馬が住んでいた?)

羊が誰かに狙われているような事件が度々起きる。

心配する友人たちをよそに、助けてくれた春馬に羊は次第に惹かれていく。

春馬の目的とは?

羊の幼少期の記憶とは?

春馬の黒い部分を知ったとき、背筋がぞくりとするラブサスペンス。


ネタバレ感想

春馬の胡散臭さに気付きながらも羊が彼を好きになる理由が理解できない。

羊のためを思い、彼女が子供の頃の記憶を取り戻すのを阻止していたとしても、春馬が周りにしてきた仕打ちはどうなんだろう。

イケメンだから許されるっていう展開?

性格も含めて冬弥(とうや)の方がイケメンに見える。

冬弥や早和子(さわこ)の制止を聞かず、サバサバ系女子だった羊が春馬春馬となったのは引いた。

3巻くらいまではサイコサスペンスっぽくて面白かったけれど、どんどん2人だけの世界になった後は惰性で読み続けた。

友人たちは好感が持てる。 

絵は横顔が雑な印象で、キャラの区別が付きにくい。


『恋と心臓』私の評価は★1

ストーリー  ★★☆☆☆ 2
キャラの魅力 ★☆☆☆☆ 1
衝撃度    ★★☆☆☆ 2
おすすめ   ★★☆☆☆ 2



『ROUTE END』(全8巻)中川海二 感想・レビュー 予測不能なサイコサスペンス漫画,特殊清掃員という職業

ラストの好みは分かれるかもしれない

一見何の感情もなさそうな人物がカラー表紙を飾っていますが、彼らの背景はとても切ない。

漫画にはそんな奴ばっかりいないよとばかり、イケメンと美女が多く出てきますが、『ROUTE END』は出て来ません。

何となく町ですれ違ってそうと思える平凡な容姿の人たちがばかりです。

そのため、ストーリーにのめり込みやすく、リアリティもすごくありました。

「特殊清掃員」という聞きなれない職を理解することができます。


あらすじ

特殊清掃員として働いている春野太慈(はるのたじ)の町では、凄惨なEND事件」が起きていた。

この事件は、未だに容疑者さえ絞れておらず、遺体をバラバラにしてENDの文字を作っていた。

ある日、春野は社長の橘の指示で、END事件の現場の清掃へ向かう。

腐敗した体液が染みついた床を張り替えようとした彼は、白骨化した遺体を発見する。

そして、橘とは連絡が付かなくなってしまう。

果たしてEND事件の犯人は?

橘はどこに消えたのか?

謎が謎を呼ぶサイコサスペンス。


ネタバレ感想

春野たちがなぜ特殊清掃員として働いているか、その背景を知ると胸が苦しくなる。

そして彼が出会う女刑事の五十嵐秋奈(いがらしあきな)。

彼女も春野と意外な接点が見つかりますが、彼女もまた辛い過去を背負っていました。

まず、社長の橘が謎。

カウンセラーも絡んできて、どんどんストーリーは混乱し、次から次へと衝撃を受けます。

春野と五十嵐刑事との絡みだけ、和む感じでした。

絵のタッチは女性受けしませんが、すごく面白い作品。

ただ、スピリチュアル的な解決は好みじゃなく、分からない所も多かった。

好きな人は好きかもしれないです。


『ROUTE END』私の評価は★4


ストーリー  ★★★★☆ 4
キャラの魅力 ★★★★☆ 4
衝撃度    ★★★★★ 5
おすすめ   ★★★★☆ 4

2023年2月17日金曜日

『君が電話をかけていた場所』(上)三秋縋 感想・レビュー コンプレックスを排除すれば恋は成就するのか?

現実に電話がかかってきたらこわいと思う

 夏の不可解な賭けとは?

三秋縋(みあきすがる)さんの作品は、この本が初めてです。

出てくるキャラは美少女が多いけれど、嫌みはないです。

 簡単なあらすじ

顔の右側を覆うような痣を持つ主人公、深町陽介。

彼が好きになった初鹿野唯は、完璧な容姿を持つ少女だった。

彼女は、陽介の痣を素敵だと言ってくれた。

こんな自分を好きになってもらえるわけがないと、思いを伝えないまま小学校を卒業。

中学は別々でそのまま2人は疎遠になる。

高校生になった陽介は、謎の女性と電話で賭けをすることとなった。

以後、初鹿野と陽介は思わぬ形で再会する。

再び出会った2人は元の仲良い友人に戻れるのだろうか。

それとも?

『君が電話をかけていた場所』は、前後編で、『僕が電話をかけていた場所』へと続きます。

この1冊だけでは伏線回収してないし、話がよく分からないままなので、続きを読むのお勧めします。


ネタバレ感想


陽介のコンプレックスがなくなると初鹿野との間に溝ができてしまった。

クラスメイトの千草は、陽介のコンプレックスを知らないまま彼に好意を持つ。

初鹿野の空白の4日間。
廃墟となった鱒川旅館のイメージ

彼女に痣ができてしまった理由。

泡となった人物は誰なのか。           

人魚伝説が今後どう絡んでいくかとか。

続きを読まないと何とも評価しにくいですが、青春時代を思い出し、感傷に浸れる作品です。好きな子とのやり取りで共感したり、ちょっと羽目を外したこととか。

私も星を見るのが好きですが、怖くて夜中に廃墟を訪れる勇気はないので、初鹿野さんの行動力はすごいと思った。

陽介も千草も、メンタルが強く、見習いたいところがたくさんあった。

そして度々、出てくる比喩表現におおっとなります。

❝牡丹、松葉、柳、散菊の段階を経て…❞

線香花火の説明が特に素敵だった。    


『君が電話をかけていた場所』私の評価は★3

ストーリー  ★★★☆☆ 3
キャラの魅力 ★★☆☆☆ 2
衝撃度    ★★☆☆☆ 2
おすすめ   ★★★☆☆ 3

次巻も興味があれば。『僕が電話をかけていた場所』



『仮面』 伊岡瞬著 感想レビュー 仮面の下の秘密

  仮面 (角川文庫) ディレクシアを知る 初読みの作家さんでした。 ページ数は多いけどすぐに読み終えました。 グロ描写ありです。 あらすじ 読字障害というハンディキャップを抱えながらもアメリカ留学の後、情報番組を中心にメディアに露出する三条公彦(さんじょうきみひこ)。 知的で爽...